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08-09 ララァシュタイン

ケンジーは妻たちを部屋に集めるとブライの事を話した。

数名、部屋に来るように伝えると、もじもじ、そわそわしていたのだが、話を聞くと、白地(あからさま )に落胆した顔をした。

でも、それはきっと黙っていた方がいい事に違いない。



(真面目な話なんだがなぁ)



特にアンジェラとリリアーナには重要な話だ。



「――それと共にみんな、特にリリアーナには“認識装置”の早期完成を目指して協力して貰いたい」


「は、はいっ! 頑張ります!」



リリアーナが元気よく、意気込んだ返事をした。

続けてアンジェラが意見を述べる。



「なら、私もリリィと一緒だよね。 お兄ちゃんはどうするの?」


「暫くは家に、と言うか島にいる」


「ほんと!?」



一緒にいる時間が増えると喜ぶアンジェラ。

対してケンジーの言葉は現実的だった。



「ああ、異星人の文明やら知識やらを学ぶためにな」



学ぶと言っても基本は睡眠学習だ。

一緒にいられる時間は増えるのだから問題は無い。


生体端末(アキホ )を造る過程で、この惑星の人間の構造知識を得たアキは、船の各種装置をケンジーに合せる事も可能としたのだ。

そこでケンジーは異星人の知識を取り込む事を要望した。


なぜなら、代行者の能力とは本人のイメージに依存する部分が非常に大きいからだ。

同じように書き換えても、なんとなく知っている程度の場合と詳しく知っている場合とでは、結果に雲泥の差が起こる。

現代日本の教育を受けていたケンジーは、なおさらその傾向が大きかった。

知っている事と知らない事の差が激しいのだ。



(過去の代行者は、この力を持て余していなかったのかね)



ケンジーはこの能力をより有効に使うために異星人の知識を求めた。

外宇宙航行船すら造り上げる科学技術を持っているのだ。

アキとアキホを見ていれば地球より遥かに高みにいると解る。

上手く行けば数段パワーアップするだろう事は明白だった。



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



自分のパワーアップも大事だが、嫁のパワーアップも大事だ。

ブライが、いつ動くともしれないとなれば尚更である。

いつ戦闘になってもいいように、エステルとジョエルの強化を急がなければならない。


ケンジーはギルド幹部となった事で迷宮の仕事が頻繁に回ってくるようになっていた。

何者かが勝手に迷宮を討滅して回った事で、ギルドは結構追い詰められているようである。

街に近く、管理しやすい迷宮を確実に管理下に置くため、ケンジーにイミテーションコアの設置を依頼してくる事が増えたのだ。

早く確実に結果を出すケンジーは、ギルド内部でも好評なようであった。


他に、管理下に置く事を諦めた迷宮の討滅も依頼された。

ダンジョンコアを確実に回収するためだと言う。


そんな事を続けていたら、あっと言う間にブライと約束した三か月が過ぎようとしていた。

迷宮の深層を攻略していた休憩中にジョエルが呟く。



「あいつ、襲ってこなかったわね」



そう、予想ではもっと早く襲撃されると思っていたのだ。



「まあ、襲われるよりはいいだろ」



未だ“認識装置”は完成していなかった。

異星人の科学を持ってしても解明されていない並行世界。

それをこの短期間で解明し、あまつさえ利用しようと言うのは考えが甘かったか。

正直に言ってしまえば、襲われなくてよかったとケンジーは思っているのだ。



休憩を終え、先へ進む一行。

ほどなくして最深部に到着した。



「さて、守護者とご対面だ」


「いけいけ~」


「いつでも行けます!」


「じゃあ、開けるわね」



“ごごごごご…………”



守護者の間の扉が開く。

中にいたのは、ローブを纏った骸骨だった。


――なんかしょぼい


そんな感想を持ちそうになった。



(守護者の間にいるんだ、ただの骸骨であるはずがない)



冷静に考えを改める。

その思考を読んでいた訳でもないのだろうが、ローブの奥で骸骨の眼孔が赤く光った。

すると守護者の間の広大な空間を埋め尽くすような数のモンスターが現れた。



「け、ケンジーさま!」


「なによ、これ!」


「落ち着け。 まずは数を減らす、二人はそこを動くな」



慌てる二人に指示を出し、積層結界で二人を守る。

そしてケンジー本人はと言うと、



「“飛天菩薩”」



自らの奥義とも言うべき技を、惜しげも無く繰り出した。

“飛天菩薩”は、元々ソロで活動していたケンジーが、多対一を想定して作り上げた技だ。

本来、こういうシチュエーションでこそ真価を発揮する。



「凄い……」


「やっぱりケンジーさまは格が違うわ」



深層を彩る強敵たちを物ともせず屠っていくケンジーに、二人は危機感も忘れて見惚れている。

二人は、この戦闘もすぐに終わると考えていた。

だが、現実は違う。

どれだけケンジーが敵を倒そうとも、一向に数が減った様子が無い。

ケンジーはすでに、その絡繰りに気付いていた。



(アレだ。 奴の眼窩が赤く光る度にモンスターが増えていく)



初めは召喚かと思った。

だが違う、魔力の揺らぎが見えない。



(時間を掛けない方がよさそうだな。 一気に片を付ける!)



元々流れるような“飛天菩薩”の動きに、更に淀みを無くす。

そして僅かに骸骨への射線が開いた瞬間、大火力の魔術を放った。



「“力場(フォースフィールド )”――“改変(アレンジ )”――“重力子(グラビトン )”!」



異星人の科学を学んだ成果がそこにあった。

突如発生した異常な重力場に、対応できた魔物はいない。

魔物たちは例外なく“重力子”に吸い寄せられ、近付くにつれて潰れていく。

その中心にいた骸骨は、真っ先に潰れていた。


数秒後、守護者の間に立っているのは、ケンジーたちだけであった。

魔物たちは潰れた後、溶けるように消えている。



「ああ、素材が……」



エステルがそう言って残念がる。

なんだか、すっかり所帯じみて見えるのは気のせいか。

もっともケンジーの魔術で潰れていたので、どの道素材は取れなかっただろう。



「なんだこれ?」



潰れた魔物達の中心、即ち“重力子”の中心だった所に赤く光る石のような物があった。

“重力子”の中心にあって潰れていないとは、相当硬い物質のようだ。



(分子間はおろか、原子間の密度が高いのか)



もっとも“重力子”などと大それた名前を付けてはいるが、あくまでケンジーのイメージで作り上げたものだ。

現実の物とは規模も威力も違うだろう事は明白だった。


その赤い宝石のような石を手に取って眺めていると、ジョエルが近寄ってきた。



「ケンジーさま、それは?」


「恐らく、守護者の骸骨の眼窩に嵌っていた物だ。 こいつが魔物を生み出していたんだと思う」



そこに“移行”から戻ったプラムが口を挟む。



「……それ、なんか変~」



プラムには珍しく、歯に物が挟まった物言いだった。



「どう言う事だ?」


「うん、あのね、記録に在ったり無かったりするの~」


「と言う事は……“乱れ”の原因の一つか?」


「う~ん、過去の代行者が関わっていそうなんだけど……わかんない~」


「ま、そう言う訳の解らない物は壊しとけばいいだろ」


「「待って下さい!」」



赤い石を壊すとケンジーが言うと、エステルとジョエルの二人から待ったが掛かった。



「どうした?」


「世界樹が、それを壊してはいけないと言っています」


「それは過去の代行者が未来のためにと造り上げた品だそうです」


「世界樹がそう言っているのか?」


「はい」


「どうやら、その一件に世界樹も関わっていたみたいです」


「なるほど」



そう言う話なら無理に壊す事も無いだろう。

世界に害を齎す物で無いなら、破壊に拘る必要も無いのだ。



「その石の名称は、古の偉人の名から取って、“ララァシュタイン”と言うそうです」


「無機物、有機物問わず、何でも創り出したと言うドワーフの名ね。 その赤い石が同様の力を持っていると言う事らしいわ」


「その力で魔物を造ったって事か」


「恐らくね」



どうやら、意外な所で意外な物を見つけたようだ。



(もしかして、これ使えるんじゃないか?)



行き詰まっている研究に光が射したのかもしれない。





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