01-06 剣術修行
結局、宝物庫では他に目星い物は見つからなかった。
できたことと言えば、父のコネで冒険者ギルドに無期限で“呪文スクロール求む!”の依頼をかけて貰ったくらいだった。
一緒に迷宮に潜ってくれる冒険者パーティーを探そうにも、成人していないケンジーは、冒険者登録すらできないのだった。
暇を持て余すことが増えた。
妹は、構ってもらえる時間が増えたと喜んでいたが、無為に時間が過ぎていくことに焦りを感じていた。
そんなケンジーに父は剣術修行を勧めた。
(まだ諦めてなかったのか…)
そう思いつつも、それもいいかと思い直す。
(魔法戦士ってのも異世界ものの定番だしな)
(それに剣で戦えればソロで迷宮に挑戦できるかもしれない)
そして戦士としての修業が始まる。
まず、5年も魔術師の修業を続けたケンジーには、戦士としての体を作ることから必要だった。
ある程度、体が出来てくると本格的な修練が始まった。
朝早く起き、まず走る。
戻ってきて剣の素振り。
朝食を取ったら型を擦り。
昼食を取ったら、また走り。
父が戻ったら型を見て貰い、修正し。
父と打ち合い、型を実践し戦闘に耐えるように昇華させる。
呪文が増えることはなく、戦士としての実力だけが上がっていった。
ちなみに妹は、兄と遊ぶ時間が減った ―というか無くなった― と不機嫌だった。
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数年後。
成人の儀を半年後に控えたケンジーは、自宅の図書室にいた。
剣の修業も一段落し、一般教養のおさらいとして図書室の本を読み直していたのだ。
もちろん妹も隣で読書だ。ご機嫌なようで鼻歌混じりである。
そんな妹に苦笑しつつ、次の本を取りに本棚へ行くと、あの本が目に付いた。
「そういや、ここに仕舞ったっけなぁ、これ」
何気なく手に取ると…あっけなく開いた。
「…は!?」
あまりにも予想外だったので、呆けてしまった。
「どういうことだ」
気を取り直し、本を覗き込む。
そこには、
様々な呪文が書き綴られていた。