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08-04 策謀

実家に戻ってきたケンジーは、嫁たちを引き連れて島へと飛んだ。

アキを交えてギルドで受けた依頼を説明する。



「とうとうギルドもケンジーを認めたんだね~」


「お兄ちゃんだもん、当然だよね」


「凄いです、ケンジーさま。 そこまでギルドに信頼されているのですね」


「私たちも同行できるのですか?」


「興味深いわね」


『…………』



一人芳しくない反応を返すアキ。



「どうした? アキ」


『いえ。 この惑星の文明レベルでそのような高度な技術を獲得出来るとは思えなかったものですから。 魔術や魔法と言ったモノとも違うようですし』


「それは俺も感じたが、まだ俺には公開されていない情報だからな。 判断は先送りにした」


『分かりました。 そう言うものとして受け取っておきます』


「そうしてくれ」



アキの疑問は正しい。

この世界にそこまでの技術は存在しない。

しない、筈であった。

過去に偉人と謳われる人物さえ生まれなければ。


その人物の存在によって、ギルドは繁栄し、またそれ故にその人物は、この世界から姿を消した。

想像を形にするとまで言われたクリエイター。

そこには、当時の代行者が関わっていたのだが、ケンジーがそれを知るのはもっと後になってからの事だ。



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



とある宿屋の一室で、一人の男がベッドに腰掛け物思いに耽っている。

緩みきった顔で、妄想しているかのようにだらしない。



男の目的は英雄になる事だ。

初めは自分を理解しない周囲に対し、自分を認めさせたいが故だった。

だが認めさせるどころか、父親には離縁された。

理由は判っている。

義母が自分を嫌っているからだ。


嫌われた理由も解っている。

なぜなら自分は庶子だからだ。

初めから生まれてはいけない子だったのだ。

何の援助も無く放り出されたのが、その証拠だ。

義弟が付いて来てくれなかったら自分は野垂れ死んだ事だろう。


義弟は言った。

「僕も同じだよ。 家に居場所は無いんだ」

だから冒険者になるつもりで鍛えていたのだと。

だが魔術に没頭していた自分では冒険者にはなれない。

そう言うと義弟は「じゃあ僕が迷宮でスクロールを手に入れて来るよ。 そうすれば兄さんも冒険者になれるね」と言って、本当にスクロールを手に入れてきた。


義弟が冒険者になって一年近く経っていたが、充分に早いと言えるだろう。

あの英雄候補が異常なのだ。

むしろアイツのせいで義弟はスクロールを手に入れるのが遅れたに決まっている。

アイツは踏破し易い迷宮ばかりを選んで、財宝を掠め取っていったに違いないのだから。

それで“覇者”を名乗るなど烏滸がましいにもほどがある。


その点、義弟は出来がいい。

スクロールを手に入れたと言っては自分に貢いでくる。

まあ、義弟には魔術を使えないのだから宝の持ち腐れだ。

義弟もそれを理解しているのだろう。

有効に使える自分にこそ相応しい。


話が逸れた。

義弟は出来がいいと言う話だ。

義弟は、この兄のために優秀なパーティーを見つけてきた。

Cランクの冒険者パーティーだ。

Cランクと言えば誰もが一流と認めるほどの実力者だ。

そのパーティーが自分に仲間になって欲しいと頭を下げた。


そして転機が訪れた。

冒険者パーティーが迷宮で偶然手に入れたと言う魔導書と思しき書物。

どうやっても開かなかったその“書”が開いた。

その“書”にはあらゆる魔術が記載されていた。

それどころか、目障りなアイツを排除する方法まで載っていたのだ。

今は、その方法に沿って行動しているところだ。

まさしく自分のためにある物であった。


もうすぐだ。

もうすぐ目障りなアイツを排除出来る。

そして、自分こそが英雄に相応しいと誰もが気付くに違いない。


もうすぐだ。

もうすぐアイツはあの迷宮の最深部に赴く事になる。

そこで殺害すれば迷宮に喰われて証拠も残らない。

最近パーティーを組んだと言う話だが、それに対処する方法もこの“書”には記載されている。

対策は簡単だった。

こちらもパーティーで待ち構えればいいだけの事だった。


仲間を唆し、最深部に誘導するだけでいい。

迷宮の最深部と聞けば仲間は腰が引けるかもしれないが、何も心配はいらない。

この“書”さえあれば自分一人でも迷宮を討滅出来るほどなのだ。

それでも不安を訴えるようなら、気配を消して奴らの後を付いていけばいい。

それなら仲間たちも納得するだろう。

何の問題も無い。



(もうすぐだ。 もうすぐ私が英雄になれる……)



そんな妄想で、だらしない顔を曝しているのはイライアス。

Cランク冒険者パーティー“ハウエル”の魔術師であり――



――領主エドモンド・エアルドレッドの庶子として生まれた男だった。



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



討滅許可の下りた迷宮を進むケンジーたち。

逸る気持ちを抑え、エステルとジョエル、二人との連携を確認しながら迷宮を攻略していった。



「自分たちの実力が上がったからこそ分かる。 ケンジーさまの実力は桁が違うわ」


「本当に、惚れ惚れとしてしまいます」



休憩中に二人がケンジーを褒めそやす。



「これでも二年やってるんだ。 そんな簡単に追いつかれたら立つ瀬が無いだろう」



他の探索者が聞いたら「どの面下げて言ってるんだ!」と突っ込まずにはいられないセリフを吐くケンジー。



その後方では“ハウエル”のメンバーが戦慄を覚えていた。



「何だあれは? 化け物か? 英雄候補とは、ここまでのものなのか?」



とパーティーリーダーのデイミアンが口に出せば



「迷宮ってこんな簡単に攻略出来るものだったっけか……」



迷宮攻略の要となる斥候のクエンティンが呆然として感想を述べる。



「英雄だけじゃない。 あのエルフ二人の連携は初心者とは思えない」



と治癒師らしい視野の広さでエステルとジョエルを褒めるフランシス。

そんな仲間たちに半ば呆れながらイライアスは解説した。



「そこまで驚く事では無いですよ。 我々は冒険者で彼らは探索者です。 元々畑が違うのですから、探索者が専門の迷宮で活躍するなど当たり前でしょう?」



そう言われて多少は落ち着いたのか、デイミアンから力みが抜けた。



「そ、そうか、そうだな」


「そうそう、オレも久しぶりの迷宮でちょっと勘違いしちまったよ」


「なるほど、そう言うものか」



同様にクエンティンとフランシスからも硬さが抜けたのを感じる。



(まったく、この程度で動揺するとは、Cランクが聞いて呆れるわ!)



自分が今言ったセリフも忘れて内心で愚痴を吐くイライアス。

フィールドが専門の彼らにそこまで求めるのは酷と言う物だ。



そうしているうちにケンジーたちは休憩を終え、先へと進み始めた。





 

長くなったので分けました。

そしたら短くなった(


と言う訳ですみませんが戦闘は次回に。

”戦闘はあっさり”とタグを付けているのに、戦闘回はアクセス数の伸びがいい。

解せぬ……

 

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