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07-06 アキ

通路を進んで行くと、やがて広い場所に出た。



「……どうやら、いるな。 注意しろ」


「「はい」」



エステルとジョエルに注意を促し、部屋内を一瞥する。

すると――



“ガウン!”


「“設置型対魔力障壁”」



何か攻撃されたことを察知して、ケンジーが障壁を構築した。

それは障壁に阻まれ、ケンジーたちまで届かなかったのだが、見慣れない攻撃だった。



「何、今のは!?」


「“火球”のように見えなくも無かったけど、別物ね」



そう、咄嗟に攻撃の本質を見極め、対魔力障壁を構築したが、今のは純粋に魔力とは言い難いものがあった。



(効果があって良かったな)



そう思いながら、攻撃してきた相手を見る。

そこにいたのは、かつて見たガーラルに似た風貌。

つまり化け物化している人間であった。


だが衣服が違う。

手にしている武器が違う。

前世でも今世でも見たことの無い服と武器であった。


厳密には前世で見たことはあった。

ただし、現実とは違うSF映画の中でだ。


目の前にいる者が身に付けているのは未来で着用しているであろう宇宙服だった。

生命維持装置とか付いたゴテゴテしたのとは違う、体にフィットしたアレだ。

そして手にしているのは銃だった。

それも恐らく、ビームライフルとかそんな感じの。


そんな事を考えていたら、そいつが言葉を漏らした。



「“エナジーショットガンファイアーボールワンド”が効かないだと……」



どうやら、そう言う名称の武器らしかった。



「今のでチャージが切れた、“銃のエネルギーを補充しろ”」



そう言って左手の“杖”を振って懇願している。



(ああ、そう言う使い方をしている訳か)



納得したケンジーは、さっさと処理することに決めた。

“杖”に使われている時点で、手遅れな上に廃人決定だ。

情報収集など出来ない。



「“対魔力障壁”解除――“移動型対魔力結界”展開」



障壁を解除し、自分だけでなくエステルとジョエルにも対魔力結界を張る。

プラムは戦闘行動を開始した時点で“移行”済みだ。



「喰らえ!」



“ガウン!”



エネルギーの補充が済んだのか、使用者は再び銃を撃ってきた。

結界を張っているので、銃の効果は無いのだが、念のため回避しながら接近を試みるケンジー。



“ガウン!”



“ガウン!”



連射が出来ないようで、一発と一発の間に、どうしても間が開いてしまうようだ。

三発も撃った頃には、すでにケンジーに接近を許してしまっていた。



「く、来るなあっ!」



そう言って銃を振り回すが、その動きは近接戦闘を経験したそれではなかった。

ケンジーは右手の銃を躱しつつ、“杖”を持つ左手を切り落とし、返す刀で使用者の首を飛ばした。

死んだ事を確認し、“杖”を破壊する。


ちなみに、“杖”は“書”と違って第五階梯の武器でなくとも破壊出来る。

ただし、魔力を帯びた武器でないと無理なのだが、魔剣を手に入れたので容易に破壊できるようになっていたのだ。



「これで目的は達成した訳だが、ここを放置してはおけないよなあ、やっぱり」


「そうだね~」


「ケンジーさまの支配する地に、こんな不可解な物を放置できません」


「そうよね。 憂いを残す意味は無いと思います」


「と言う訳で慎重に探索するか」


「うんっ」


「「はい!」」



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



暫くは一本道だったので、そのまま進んだ。

途中、生活感のある場所をいくつか通過した。

それは食事をする場であったり、寝室であったりだが、生活感があると言う点で一致していた。



「自分で予想しておいて何だが、あんな化け物になっても普段通りの生活をするものなのか?」


「生きているのなら、するのではないでしょうか……?」


「そう思って想像すると不思議な感じね」


「不思議と言うより、シュール過ぎて笑えないだろ」



そんな会話をしていたら、通路のどこかから無機質な声が問い掛けてきた。



『今までの会話から敵対心は少ないと判断します。 交渉は可能でしょうか?』



いきなり響いた声にケンジー以外の三人が驚くが、ケンジーは予想の範疇だったため冷静に対応した。



「今の会話のどこを持って判断したのか分からないが、言葉が通じるのなら、いきなり敵対行動を取ることは無いと約束するぞ」


『了解しました。 では、交渉の場へ案内します。 誘導に従って下さい』


「分かった」



会話が終了すると、通路に案内表示が出た。

それに従って行けば、声の主と会えるのだろう。



「信じていいのかしら」


「罠かもしれないわ」


「俺の予想が当たっていれば、そんなことは無いだろう」


「その予想の根拠は何でしょうか?」


「向こうも情報が欲しいのだろうと思うからだ」


「では交渉の場へ着くのですね?」


「ああ」



そう言って誘導に従って先へ進む。



(ま、相手が人間とは限らないけどな)



ある意味、予想通りと言うべきか。

案内された場に人影は無かった。

その部屋にはいくつかのモニターと思われる表示装置があることを除けば、通過してきた部屋と大差ない普通の部屋だった。



「ケンジーさま、やはり罠では?」


「いいから落ち着いてどっしり構えておけって」


「う、はい……」



設置されていた椅子に座りながら逸るジョエルを嗜めていると、あの機械的な声が響いた。



『信用して頂き、ありがとうございます』



その声と共に、モニターには若い女性の姿が現れた。



『長い間、周囲が毒に覆われていたために、生体端末は廃棄してしまいました。 モニター画像で申し訳ありませんが、ご容赦下さい」


「別にいい。 それじゃお互いに情報交換といこうか?」


『承知しました。 お互いの状況が推測出来ている方と判断します』


「予想に過ぎないけどな。 まあそんなに遠くないとは思っているよ」



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



話し合いと言う情報交換の結果、いくつかの事が判明した。


まず、この場所は不時着した宇宙船の中だった。

今、交渉の場に着いているのは宇宙船の人工知能と言う事だ。

最優先は人命の保護。

次が宇宙船の修復だ。


人工知能が診断した結果、宇宙船は修復が困難なほど大破していた。

現地の協力を取り付けなければならないほどだったのだが、人工知能が周囲を探索した結果、この地の文明レベルは低く、当てには出来ないと判断した。


結局、救命信号を出しつつ宇宙船の船員(クルー)達を冬眠(コールドスリープ)させることにしたのだと言う。

言葉が通じるのは人工知能が解析し、睡眠学習させたからだそうだ。



(便利だなあ。 ん? 通じる……学習させた(・・・)?)



そうしているうちに問題が起こった。

原住民が突如化け物と化し、宇宙船と船員の眠るこの地を毒に塗れさせたのだ。

密閉された船の内部は大丈夫にしても、周囲を毒に汚染されては救助に来た者が危険に曝される。

また、仮に今後、この惑星の文明レベルが上がり、助けを求めることが可能になったとして、果たして毒に汚染された地に来てくれるだろうか。


今後の方針を検討した結果、化け物を排除することが必要と判断した。

止むを得ず、冬眠中の船員を一人起こし、対処を命じた。

船員は了承し、現地民と協力して化け物の排除に成功する。


だが、船員は帰って来なかった。

毒もそのまま残った。

いや、逆か。

毒が残ったから戻れなかったのかもしれない。


しかし、化け物が排除されたのは確かだ。

それならばと、長い間待ってみたが毒は無くならない。


そんな折、島の外で一部だが、毒が浄化されていることを突き止めた。

浄化の範囲が中々広がらないが、それくらいならばこちらが手を貸すことで対処出来るかもしれない。

人工知能は再び船員を起こして、浄化する者との接触を命じた。

船員は船外へと出向き、不運にも“杖”を手にしてしまった。



「おいおい……まさか」


『あなたが先程倒された化け物が、その船員です』


「……はあ、睡眠学習で言葉が通じたって、そいつの事かよ」



化け物となった船員は、あろうことか再び毒を撒き散らし始めたのだと言う。

船内までも毒に侵され始めたため、重要な施設だけは隔離して被害を防いでいたらしい。



(何て間の悪い。 最悪のタイミングで起こっているな……)



全てが繋がったが声が出ない。

ケンジーは脱力感を押し込め、今度は自分たちの事情を話し始めた。



  ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



『つまり、あなたはこの惑星を司る者の一人であり、この地はあなたの物であると言う事ですか』


「大雑把に言ってしまえば、その通りだ」


『我々に出ていくか、支配下に収まるか選べと言うのですね?』


「そこまでは言わない。 黙って眠っていて貰う分には問題にはならないからな」


『それでは我々に求める代価は何でしょうか』


「船員を勝手に起こして行動させない事と、その知識は有用だから意見を聞きたい事があるかもしれない。 たまに相談させて欲しいかな」


『了承します。 それならば現状と変わりませんし、承諾出来る範疇と判断します。 毒から解放して頂いた件もある事ですし、お力になれる事があるなら何なりと仰って下さい 』


「交渉成立だな」



初めは対等だったはずだが、終わってみれば大分ケンジーに傾いた内容で片が付いた。

ともあれ、こうしてケンジーの仲間に宇宙船の人工知能が加わったのだった。

気を遣ってくれたのか、人工知能はこの島での居住地も提供してくれた。

実に快適であった。



「そういや、いつまでも人工知能って呼ぶのもアレだよなあ、お前さん名前無かったのか?」


『はい、ありました。 私はHeuristically programmed algorithmic computer の頭文字を取って、ハ――』


「いや! いい! そこまで!」


『はい……』



被せるようにケンジーが止めると、モニター内の顔をしょんぼりさせて人工知能は従った。



「せっかく知り合ったんだ、俺から改めて名前を送ろう。 俺たちといる時は、そっちを名乗ってくれ」



自分から話題を振っておいて、そのまま中断させておく訳にはいかない。

名を送ることで決着を図ったケンジーである。

そう、ただの苦肉の策だ。



『名を頂けるのですか、それは嬉しいです』


「ん、じゃあ今からお前の名前はアキだ」



実に安直であった。



『はい、私は今からアキです』



だが、名前を貰ったアキは、どことなく嬉しそうだった。

だから、きっとそれでいいのだろう。





~第七章 完~







 

――と言う訳で、世界樹編ではありませんでした(

当初は毒の島編だったのですが、毒でだらだら文字稼いでも誰得だって事で止めました。

島の迷宮編とか、島の謎編あたりが無難だったかな?

 

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