06-01 色々な日常
後輩育成と言う指名依頼を無事に終えたケンジーは、少し長めの休みを取っていた。
体を休めることに専念するためだ。
アンジェラとリリアーナを構いながら、と言う但し書きが付くが。
休みとなればアンジェラはケンジーの傍から離れず、リリアーナは家へとやってくる。
それが最近の日常であった。
「あー、ようやく戻ってきたかな……」
「なにが~?」
「指導者として、ちょっと偉そうにしてたからさ、肩が凝っちゃってなあ。 慣れないことはするもんじゃないな」
「なんか肩肘張ってると思ったら……普通にしてればいいのに~」
「舐められたらいけないと思ってさ、最初が肝心と偉そうにしたら戻すに戻せなくなった」
「かっこわるい~」
「本当だなぁ」
のんびりと力の抜けた会話を続けるケンジーとプラム。
そこにアンジェラが口を挟む。
「お兄ちゃんはかっこいいです。 かっこ悪くなんかないです」
「アンジーだけだよ、そう言ってくれるのは」
――よしよし、と頭を撫でると嬉しそうに目を閉じて受け入れるアンジェラ。
基本、この妹は兄を全肯定する、怒るのは放って置かれた時だけだ。
「そんなことはありません。 私だってケンジーさまはかっこいいと思っています」
「へ?……あ、ああ、ありがとうリリィ」
対抗するようにリリアーナもケンジーを擁護する。
最近のリリアーナとアンジェラはお互いをライバル視している節がある。
「ケンジーさまはかっこいいです。 疑う余地などありません」
同じ言葉を繰り返すリリアーナ。
その眼差しは期待に満ちている。
「……よしよし」
黙ってリリアーナの頭も撫でるケンジーであった。
そこへクレイグが顔を出す。
「お、いたか」
「父さん、どうしました?」
対面のソファーに腰を下ろした父に――長い話かな、と予想する。
「この間の件な、盗賊団討伐隊の隊長だった男に処罰が下された」
「……そうですか、思ったより早かったですね」
「すぐに裏が取れたしな。 ――で、お前ドラゴン倒したんだって?」
「あれ、言ってませんでしたか?」
「全くこれっぽっちも聞いてねーよ! 領主様から聞かされて驚いたわ!」
このセリフにびっくりしたのがアンジェラとリリアーナだった。
それぞれが感動と興奮に頬を赤く染めてケンジーに問う。
「お、お兄ちゃん、ドラゴンを倒したんですか!?」
「ケンジーさま! それは本当ですか!?」
「ああ、うん、まだ若い個体でね。 策を練って取り組んだら倒せたんだ」
「うわぁ~お兄ちゃん、お話聞かせて下さい!」
「是非、是非! 聞かせて下さいませ!」
こうなるともう話さないと言う選択肢は無い。
素直に語って聞かせることにする。
「ああ、いいよ。 えーと、まずギルドで――」
「まてまて、母さんを呼んでくる。 話はそれからだ」
クレイグがパーシアを呼びに行っている間に、使用人たちはお茶とお茶菓子を用意する。
ケンジーが家にいる時は、こうしてアンジェラが冒険の話を聞きたがるようになった。
以前リリアーナに、ケンジーが冒険譚を語ってくれたと嬉しげに聞かされて妬いたのだ。
それ以来、ケンジーは家でも冒険の話をするようになった。
当然のように両親も一緒になって耳を傾ける。
そこにこうしてリリアーナが加わっていても、違和感を感じることが無くなってきた。
ここ数か月ほどで定着した、ドレイパー家の穏やかな日常だった。
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そんな穏やかな日常を満喫したケンジーは、もう一つの日常へと移行する。
即ち、冒険者であり、代行者へと。
「でもなー、迷宮に潜るのはいいんだけど、それだけじゃだめだよな」
「そうだね~、あれは迷宮産じゃないよね~」
「“枝”だもんな、手掛かりがないのが問題だよな」
そう、“書”に関しては偶然にも誕生の瞬間に立ち会ってしまったので対処出来ている。
万全とは言えない、とりあえずな方法ではあるが。
しかし、“杖”に関しては全く手掛かりがないのが問題だった。
「ケンジーさま、そのことなんですけれど――」
あの件以来、リリアーナには協力者として相談に乗って貰っている。
彼女なりに意見を言ったり、知恵を出してくれることもあった。
「なんだい、リリィ?」
「ヴェルニース家では、あの“枝”は家宝として扱われていました」
「うん」
「なら、同じように家宝として持っている家もあるのではないでしょうか」
「……なるほど」
リリアーナの言っていることは的を射ているように思える。
とは言え、
「家宝を見せて下さいと聞いて回る訳にもいかないのがなぁ……」
困難であると言う点では変わりが無いのである。
「いえ、ですからそれを踏まえて、古くからの歴史を持つ貴族家代々の経歴を調べてみては如何でしょうか」
「――そうか!」
杖は理や記録を書き換える――それは言い換えれば願望を叶えると言うことだ。
そんな家宝があるのなら、長い歴史の中でガーラルのように家のためにそれを使ったことがある者がいるのではないか?
つまりリリアーナは歴史の中に似たような事例がなかったかを調べるべきと言っているのだ。
もちろん、この方法にも困難な部分はあるし、必ずしも結果が付いてくると決まった訳ではない。
それでも――
「やってみる価値はあるな。 それに闇雲に探すより目的がハッキリしている分、気分的にも楽だ」
「お役に立ちましたか?」
「ああ、とてもね。 ありがとう、リリィ」
なんの躊躇も無くケンジーはリリアーナの頭を撫でた。
頬を染めて受け入れるリリアーナ。
最近は二人のこんなやりとりも日常の一部となって来ていた。
「ぶー!」
それを見てブー垂れるプラムもまた日常の一部である。
私事ですみませんが、職場で異動がありました。
通勤時間も増えてしまいましたし、執筆時間が削られています。
職種自体も変わったので、慣れるまで更新頻度を下げます。
出来れば2~3日に1回は更新したいと思っていますが、
どうなることやら、です。
更新を待ってくれている方(いれば)には申し訳ありませんが、
仕事に慣れてきたら頻度を上げていきたいと思っています。
よろしくお願いします。
夏に向けてホラーな読み切りを一つ書きたいなぁ(ぉぃ




