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05-03 指導者として

ケンジーの指導は思いのほか順調だった。


彼らから反抗は無く、ケンジーのアドバイスは素直に受け入れていた。

少し不思議に思いながらも、素直に聞いて貰えているならいいかと深く考えずにいた。

その答えは意外?な人物から聞かされることとなった。


ある時ケンジーは休憩中に珍しくファングから声を掛けられた。



「あんたは何も言わないんだな」


「ん? 何をだ?」


「俺は冒険者の指導を受けるのは初めてじゃない。 そいつらに散々言われてきたよ。 戦士ならパーティーの盾となれ。 重装備に身を固めて前に立てとな。 酷い奴になるとなぜ盾を持たないとか言い出すのもいたな」


「まぁ、それも間違いじゃないな」


「でも、あんたは言わなかった。 なぜだ?」


「お前のスタイルも間違いじゃないからさ。 攻撃を躱して手数で勝負する。 そのために軽い皮装備を身に纏う。 理に適っているだろう?」


「そんなことを言われたのは初めてだ。 変なやつだな、あんたは」



ファングの話はこうだった。

彼の先祖――十代くらい遡る――は、戦いで利き手、右手を失った。

以後、左手で戦えるようになるまで相当な年月が掛かったと言う。

それを教訓に、彼の一族は両手を鍛えるようになったそうだ。

それ故の二刀流だと。



「さらに言えば、俺の一族は才能と言う物を持っていない。 代々そうだ。 俺がこの年齢で見習い冒険者なのは、成人しても一人前と認めて貰えなかったからだ。 だが、別に文句はない。 我が一族は経験を武器とする。 成長に時間が掛かるのは道理だ」


「経験が武器か、それもまた強みだな。 それに何も言わなかったが、お前は元々フィールド、それも森林を戦場とする戦士だろう?」


「!! …分かるのか」



そもそも顔一面に入れ墨を施す氏族だ。

人里離れた森の奥が棲家であろうことは容易に推測できた。

だからケンジーは、この三人ならフィールドの任務を専門にする冒険者としてなら斥候を入れる必要はないと踏んでいた。

ファングがそれを兼務できるだろうと思ったからだ。

もっとも、それもリッケンバッカーがそれなりに呪文を揃えている前提での話だ。

結局は迷宮なりに行き、まずスクロールを手に入れる必要があった。



「人なら得手不得手はどうしたって出てくるさ。 万能にするより得意な面を伸ばした方が大成するものだそうだ」


「だから本人の好きにさせると? ククク、面白いやつだな、あんたは」


「嫌なこと、苦手なことをやらされるより、好きなこと、得意なことを任された方がやり甲斐があるだろう」


「ああ、あんたの言うことなら素直に聞ける訳がようやく分かった。 押しつけがましくないんだな、あんたは」


「必ずしもそうじゃないけどな。 やらなきゃならないことは嫌でもさせる」


「それはいいんだ。 必要なことだってのは俺たちも分かっている」


「ならいい」


「ああ、俺たちはあんたに付いていくよ」



ケンジーとしては頭ごなしに決めつけるのが嫌だったので、彼らのスタイルを尊重しつつも足りない部分を補助するよう指導していただけだ。

どうやらそれが功を奏したらしい。

まぁ周りから見ればケンジーも充分に特異なスタイルな訳で、他人にとやかく言えた義理ではないことを自覚していたこともある。

それで信頼を得ることができたのなら、結果オーライと言うことでいいだろう。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



彼ら、特にザカライアは明確に自らの理想をイメージしているようだった。



「ケンジー先輩のようなオールラウンダーとまではいかなくても、冒険者だけ、探索者だけと決め付けず、どちらも出来るようになりたいのです」


「そうか、なら探索の合間にフィールドの依頼も受けて冒険者のランクも上げて行こう」


「ありがとうございます!」



依頼のタイミングにもよるが、1~2日あれば冒険者ランクはGからFに上がる。

後は3~4日に一度フィールドの依頼を受けるようにすれば、そのうちどちらも上がって行くだろう。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



一番厄介な問題を抱えているのは、やはりリッケンバッカーだろう。

何と言っても呪文スクロールを手に入れないことには出来ることに限りがあるのだ。



「罠の位置と種類を覚えることと予測すること。 あとは戦闘中に周囲を注意して他からの不意打ちに備えること、あとは……」



本人のやる気が焦りをごまかしているが、やっていることは劣化版の斥候だ。

今後、本職が仲間に加わったら潜在していた焦りと不満が爆発する可能性がある。

しかし、スクロールを手に入れないことには先に進めない。

これが魔術師のやっかいなところだ。


仮に今後スクロールを手に入れたとしても、その内容によっては現状が継続するのだ。

駆け出しの魔術師を仲間に入れると言うことは、自分たちも長期に渡って我慢を強いられると言うことに他ならない。

だが、スクロールの内容次第では大きく化ける。

それもまた事実であった。


幸いなことに、彼の仲間たちは我慢を苦にしなかった。

リッケンバッカーは間違いなく仲間に恵まれていた。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



ケンジーの教え子たちは確実に力を付けていった。

ゆっくりと、だが着実に迷宮を進んでいた。

一月もする頃には表層を越えようとしていたのだ。



(そろそろ他の迷宮に場所を移してもいいかもな)



さっそくギディオンに手頃な討滅可能な迷宮がないか打診することにした。



「そんな都合よく、ある訳無いだろうが」


「ち、役に立たないおっさんだな」


「コノヤロウ……段々歯に衣を着せなくなりやがって」


「まぁ、必要なのは呪文スクロールでダンジョンコアじゃない。 若い迷宮の踏破だけで済ませるか」


「充分偉業なんだがな、それ。 お前が言うと簡単に聞こえるから不思議だ」


「若い迷宮なら大したこっちゃないだろ。 あいつらならそれで付け上がることもないだろうし」


「ほー。 文句言ってた割に入れ込んでるじゃないか」


「まぁね。 ああいう実直な連中は嫌いじゃない」


「そうか。 ……なら、良いことを教えてやろう」


「何だ? 何かあるのか?」


「ああ。 依頼を真面目に熟してるようだからボーナスだ」


「早く言え」


「こいつは……ごほん! 今朝入ってきた情報だ」







「――――ドラゴンの巣が見つかった」




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