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執行者 ~チート嫌いなチート使い~  作者: みやすのりか
第三章 オールラウンダー
32/77

03-08 育ち過ぎた迷宮

いきなり攻略の難易度が跳ね上がった。


理由は分かっている。

迷宮がそれだけ育っているからだ。

今までの迷宮は冒険者ギルドが管理して、いざという時に確実に討滅することが可能な範囲に収まっていたのだ。


育ち過ぎた迷宮。

それは即ち、ギルドの手に負えなくなった迷宮のことだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



あの後ギルドマスター ――ギディオン――から説明を受けた。

育ち過ぎた迷宮の説明だ。

何故育ち過ぎたかを。



「――――領主が欲を出しやがってな」



よほど憤っているのか、容赦なくぶっちゃけた。

口調まで砕けた上にオッサンくさい。

せっかくのバリトンが台無しだ。


つまり、より質のいい迷宮産の物資を欲したあまり、ギルドからの勧告を無視してしまったと言うことらしかった。



「説得は続けていたんだが、意固地になったみたいでなぁ。それならギルドには世話にならない、自分の兵団で対処するって言ってな」


「はぁ」


「お前なら分かってると思うが、対人戦闘、ぶっちゃけ戦争しかノウハウのない兵団じゃ単に無駄死にしに行くだけなんだよな」


「……そうですね」


「大量に死人が出た結果、迷宮が一気に育っちまった」


「……うわぁ……」


「これ以上育てるわけにはいかないんだよ」



ギルドは国に圧力をかけ、その問題領主を更迭した。

だが育ってしまった迷宮は元には戻らない。

討滅し、破棄する必要がある。



「破棄なんですか?」


「ああ、物資は魅力だが、Dランクの探索者でも浅瀬で死んじまう。維持するにはリスクが高すぎる。それにこれは、バカ領主――――延いては領主の監督を怠った国に対する制裁でもある。そして、お前には――――この依頼を成功させたら、冒険者と探索者、両方のランクを一つずつ上げると約束しよう」


「――――いいんですか?」


「ああ、それだけの実力を証明する訳だしな。――――ただし競争だ」


「他にもいるので?」


「無論だ。一大事だからな。周辺ギルドも挙って腕利きを用意している。もっとも、私としてはそれだけでは不安でね。なんとかして君を送り込みたかったんだ。それでその迷宮の場所だが、隣の領だ。準備も必要だろうし一週間後にそこのギルドで顔合わせした後、任務に就いてもらう」


「そんなに時間を開けて大丈夫なんですか?」


「現地は封鎖してある。見張りも付けた。準備不足でダメでしたってよりはいいだろうさ」


「了解しました。では一週間後に現地で」



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



一週間後、問題の領地へ行くと、街は騒然としていた。

ここまで問題が大きくなると、さすがに隠し切れるものではなく、安全のためにも情報は公開されていた。

迷宮は封鎖されていたし、ギルドの精鋭が呼ばれて対処することも知られていた。

ただし、対処する全ての探索者がSランカーだということだけは秘されていた。


ギルドに入ると大勢の冒険者・探索者から期待の籠った眼で見られた。

地元ではないが、ケンジーのことは知られているようだ。

声援を送る者までいた。

何のことは無い。

誰が討滅するか、賭けが行われていたのだ。

声援をくれた人は、きっとケンジーに賭けたのだろう。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



そして、いざ顔合わせとなった。

そこには六組ほどの探索者パーティーが揃っていたのだが……



(既存の迷宮でも最深部は無理なんじゃないかって連中ばっかり……やる気あんのかな)



表情に出したつもりはないが、ギディオン ――この場には近隣の支部から各々のギルドマスターが集っていたので名前で呼び合っていた―― が、こっそり耳打ちした。



「近隣の街から腕利き ――各ギルドの精鋭―― を集めるって話だったんだけどね。……どこも人材不足のようだなぁ」


「やる気以前に人がいないってことですか。領主の罪が重いのは確かですけど、人材育成にも力を入れるべきじゃないのですか?」


「ケンジー君、後輩を育ててみないかね?」


「面白そうですけど、引退するまでは嫌です」


「――――みんなそう言うんだよねぇ」



ギディオンは、そう言って溜息を吐いていた。



結局、討滅できそうなのは一組 ――オールラウンダーを含めたCランクパーティー―― だけであった。



(こんな連中とチンタラやってられるか)



一通りの説明が終わった後、ケンジーが宣言するように言った。



「俺は誰かと手を組むつもりはない。元々知らない奴と連携なんて取れないしな。というわけで一人でやらせてもらう」


「勝手なことを言うな、この一大事に!」



どこかのギルドマスターが顔を真っ赤にして怒鳴った。



「それが俺とギルドで結んだ条件だった。文句など聞かない」



ケンジーがそう言うと一斉に周りの眼 ――特に各地のギルドマスター―― がギディオンに向くが、彼は迷惑そうな顔をしただけで、特に何も言うことは無かった。



「俺も賛成だぜ。個人主義の探索者が集まったところで、連携なんて取れない寄せ集めだ。獲物は早い者勝ちでいいだろう?」


(誰だっけ? あーもう、その他Aでいいだろう。一番弱い奴が自信たっぷりとか笑えるが、この流れに乗ろうじゃないか)

「そういうわけだ。じゃあな」



そう告げてとっとと出て行くことにするケンジー。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



(その足で迷宮に来てみたわけだが……確かに一般のDランクじゃ表層でも手に余る。下手なCランクじゃ深層まで行けそうにもない。早い者勝ちとか言ってたやつがいたが、そんな生易しい迷宮(モノ)じゃなかったな。――――さて、何人生き残れるか)



ケンジーの予想では、生き残ると思われるのはオールラウンダーのパーティーくらいだ。

さすがに彼らの実力は頭一つどころか二つくらいは抜き出ていた。



(その他Aなら三つ分はあったな)



そんな失礼なことを思いながら迷宮の奥へと進んで行くのだった。







オールラウンダーのパーティをBからCに修正。

本人はBですが、パーティーはCランクです。

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