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執行者 ~チート嫌いなチート使い~  作者: みやすのりか
第三章 オールラウンダー
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03-07 ランク S

ギディオン・ベロー ――ギルドマスター ―― と挨拶を交わした。

お茶を二つ用意して受付嬢は部屋を辞した。


二人きり ――厳密にはプラムもいるので三人だ―― になり、ギルドマスターはケンジーのこれまでの活躍や逸話などを交えて話し始めた。

要は世間話だ。


一通り話し込み、ケンジーの緊張が解れて来た頃合いで、漸くギディオンは本命の話を切り出した。



「ケンジー殿、君を呼び出したのは他でもない。――――Sランクになる気はないかね」


「――――は?」



その問いは、ケンジーの予想の遥か斜め上を超えていった。音速で。



(Sランクってなんぞ? 聞いたことねぇよ!)



その顔が余りにも呆けていたのだろう。

ギディオンはゆっくり話を続けた。



「まず、Sランクとは何か、そこから説明させて欲しい」



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



Sランクとは ―――― ランク外ランクのことである。

隠しランクと言い換えてもいい。

(おもて)のA~G、7ランクの外に存在し、その意味は“ギルドの専属”であり、各々が何某かの高位専門技術者であると言う。

彼らには表のランクも存在し、通常ギルドカードには、その表のランクが記載されている。

だが、ギルド内の専用機器 ――魔道機―― で確認すると、その後ろに“S”の文字が浮かび上がる。

例えば表のDランクを持つSランカーは“DS”と表示されるのだ。

そしてSランクの役割とは ―――― ギルドから、表に出さない極秘依頼を処理することである。

普段は普通の冒険者・探索者だが、ギルドから極秘依頼が出たなら、それを最優先で処理する各方面の専門家。

”シークレット&スペシャリスト”

それがSランカーなのだ。


ギルドの各支部には、それぞれ数名のお抱えSランカーが存在する。

必要であれば周辺支部に要請して、そこのSランカーを借りることもある。


それこそ、先日の罠群迷宮などは周辺から罠解除のスペシャリストを集めて対処していた。

だが、罠群を突破できず、討滅どころか撤退となってしまった。

罠解除専門Sランカーの面目は丸潰れであった。


ケンジーは、そこを四日弱で踏破して見せたのだ。

この時点でSランク候補に挙げられていた。

勧誘が今になったのは、やはり人間性の確認があったゆえである。


若すぎる。これに尽きた。

若い者は優秀でも自惚れる、慢心する。

そのため、そこで成長が止まり使い物にならないどころか害悪になる者までいる。

ましてやケンジーは、その後に念入りに迷宮関連の調査を行った。

――迷宮で一旗揚げた者が、迷宮の魔に取り憑かれることは、よくあることだった――


慎重に見極める必要があった。結果は上々だった。


迷宮に入り浸っていたようだが、それは噂によると親との約束だった ――親バカが酔って口にしたため事実という裏が取れた―― というし、盗賊団を一人で壊滅させたことで、対人戦闘と人を殺すことを物ともしない胆力があることも分かった。


止めに先日の護衛任務に於ける逸話だ。

あの手の緊急事態になると依頼主を捨てて自分だけ助かろうとする者は多い。

つまり、あれほどの事態となると、もう若いベテラン関係無く、本人の責任感の問題となる。

覚悟の無い若い者はすぐ逃げる。

ベテランは逃げる印象がないが、それは、どこまでの事態なら自分が耐えられるかの判断が秀逸なだけで、逃げる時は逃げる。


あの状況で、最後まで任務を遂行したケンジーは、信頼できる人間だと自ら証明して見せたのだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「――――という訳で、君をSランクとしてギルドに迎え入れたい。どうだろうか」



言われてケンジーは考える。



(最初は何が起きたのかと思ったけど、これは俺が考えていた以上の成果じゃないか? 考えていた以上にギルドに食い込めそうだ。……だが慌てることはない)



考えを纏め、ゆっくりと口を開く。



「Sランクを受けること自体は構いません。しかし、自分も目的が合って冒険者をやっています。そして冒険者の一番のメリットは自由であることと考えています」


「――――ふむ。その目的と言うのを聞いてもいいかね」


「はい。今後、変わっていく可能性もありますが、今は迷宮の討滅です。それも世界中の迷宮を討滅したいと考えています」



ギディオンは目を大きく見開いた。



「世界中とは、大きく出たな。君は世界の国々に対するギルドの役割を知っているかね」


「……迷宮管理。それを条件に完全な独立を果たした」


「その通りだ。そして、その条件とは各国…厳密には実際に迷宮を持つ領地の領主だが ――――に対する要望を飲むことだ。具体的には迷宮をどこまで育てるか、となる」


「つまり、領主の望む大きさまで育っていない迷宮の討滅は許さない」


「そうだ。諦めたまえ」



そうギディオンは突き放す。

だがケンジーは喰らい付く。



「ですが領地外、領地の外の迷宮まで討滅許可が出ないのはなぜですか?」



ピクリとギディオンが反応する。



「まだあります。領地内と言えども領主に運営できる規模、数には限度がありましょう。なぜ管理運営されていない迷宮まで許可が出ないのでしょうか」


「……………………」


「…………」



無言の睨み合いが続いた。

そして、きっちり三分経つとギディオンは口を開いた。



「――――表向きの理由としては二つある。領主が欲深で諦めきれない。もう一つは、そこまで簡単に討滅できる問題ではないのだ。ある程度育った迷宮を討滅するのは一筋縄では行かない」


「それはつまり――――」



ケンジーの言葉を遮るようにギディオンが言葉を繋ぐ。



「簡単に言えば、育った迷宮を討滅できる探索者は極僅かだと言うことだ」


「――――裏の理由は?」


「それはまだ言えないな」



少し時間をかけ考えを纏めるケンジー。



「Sランクになればそういった討滅していい迷宮を自分に回して頂けますか?」


「……可能だ」


「世界中を回ります。ここの支部に囚われず、行動の自由を保証して頂けますか?」


「……すぐには無理だ。暫くはうちに貢献して貰う必要がある。……だが、その後は――――認めよう」


「了解しました。――――要請を受け入れます」



緊張していた空気が解ける。



「……ふぅ。こんなに緊張した駆け引きは久しぶりだよ。だが、その分頼もしくもあるがね」



その言葉に嘘はないのか、リラックスした笑顔を見せるギディオン。



「すぐにでも契約締結に入りたいところだが――――」


「何かあるんですか?」


「契約の準備をする間に緊急の案件を説明してしまおう」


「ああ、それで妙に急いでいたんですね。こんな簡単に話が進むなんておかしいと思っていました」


「気が付いていたのか、さすがだね」



そう言うとギディオンは真面目な顔をして切り出した。







「――――――――実は、育ち過ぎた迷宮がある」








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