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執行者 ~チート嫌いなチート使い~  作者: みやすのりか
第三章 オールラウンダー
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03-06 ギルドマスター

そして、無事に ――とは言い難かったが――隣街に着いた。

途中の食糧は現地調達だった。

ケンジーの気配察知とアンドリュースの弓で、ひもじい思いをしない程度には何とかなった。


シーヴァーは大量の荷物を失ったにも関わらず上機嫌だった。

あの時の言葉通り、命を拾っただけで儲け物と思っているのだろう。

それどころか、ケンジーにランクアップの推薦状をくれると言うのだ。



「ケンジー殿がいなければ我々は一人として生きてはいなかったでしょう」



まあ、事実そうなのだが。

だからと言って自分だけと言うのも居心地が悪い。

そう思っていたら――――



「大将の言う通りだぜ。貰っとけ貰っとけ」



バーナードたちがやって来た。



「そうですよ。ケンジー君がEランクなんて間違っています」


「そうだぜ、お前みたいに頼りになる奴はそうそういねぇ」


「できればうちのパーティーに加わって欲しいくらいです」


「おう、そりゃいいな! なぁ、そうしようぜ」



怒涛の勧誘が始まってしまった。

シーヴァーが何とか取り成してくれる。



「まぁまぁ、みなさん。お気持ちは分かりますが、ケンジー殿はやりたいことがあると言うお話です。笑って送り出してあげるべきでしょう。――なに、縁は繋がりました。またすぐに会えるでしょう」


その言葉に納得したのか、みんな笑顔で送り出してくれた。



こうしてケンジーの冒険者ランクはDとなった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



とうとうオールラウンダーに手が届くところまで来た。

あと一つ、冒険者ランクが上がったらオールラウンダーだ。


正直うまく行きすぎと思うが、領主と大商人、二人の大物に推薦してもらえたのは大きい。

そこまで考えて、ふと気付く。

大商人シーヴァーとは、冒険者ギルドに対して領主と同じ影響力を持っているのか。

凄い人と知己を得たものだと改めて思ったケンジーだったが、相手もまさか似たようなことを考えているとは思いもしなかった。



(凄まじかったですねえ。あれが“覇者”とまで言われる冒険者の実力ですか。それでもまだまだ力を隠し持っていそうなところがまた…ふふふ、楽しみですね)



二種の障壁と罠発見、罠解除。

これくらいなら多少アレンジしたところでバレても問題ないだろうと使用したケンジーだったが ――実際、護衛連中は問題視していなかった―― シーヴァーはケンジーの特異性に気付いていた。

目端が利かなければ商人として大成できないのだろうが、シーヴァーはそう言う意味でも大商人と言えた。


とは言え、この二人が接近するのはもう少し先のことだ。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



あと一つ。

そのあと一つが遠かった。

このランクまで来ると、さすがに上がり辛いのか、普通に依頼をこなしていても上がる気配が見えなかった。



(慌てるな。落ち着いて着実に依頼を完了する。下手に失敗なんてしたら今までの功績が全部吹っ飛んじまう)



焦りをじりじりと感じながらも淡々と ――表面上は―― 依頼を片付けていくケンジー。

シーヴァーが宣伝してくれたのか、護衛の指名依頼なども入ることがあった。

だからと言って、あのような事件がそうそう起こるはずもなく。

比較的平和な日々を送っていた。



冒険者のケンジーを見る目も変わってきた。

以前は、こいつの実力を見てやろうと挑戦的な視線が多かった。


そこへ単独による盗賊団の撃破に続き、ゴブリンキング ――上位種の更に変異種と思われる―― に率いられた軍隊の包囲網から依頼主を守り切り無事に街へ送り届けたという、ちょっとした英雄譚とも取れる逸話が加わった。

――――この逸話の発信源は、無論守られた当人たちだ。


そしてその結果、オールラウンダーと言う冒険者・探索者の夢とも言うべき境地へ手が掛かっているのだ。


羨望と畏怖。


それが今のケンジーに向けられる視線の全てだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



今日も今日とて依頼をこなすべくギルドへ向かうケンジー。

ギルドの扉を開け、中に入り真っ直ぐ依頼の貼ってある掲示板へと足を向ける。

しかし、そこで後ろから声が掛かる。

振り替えると、そこにいたのは受付嬢だ。



「ケンジーさん。今ちょっとお時間よろしいですか?」


「いいですけど、なんですか?」



受付嬢は近付いてきて、小声でそっと囁くように告げる。



「ギルドマスターよりケンジーさまにお話がございます」


(っ!? ……ついに来たか?)

「……わかりました。伺いましょう」



受付嬢に着いていくと、随分と重厚な印象を受ける扉の前へ来た。

ここがギルドマスターの執務室なのだろう。

受付嬢がノックをすると「入れ」と返事があった。

バリトンだ。



(いい声だなー)



そんな場違いなことを考えながら受付嬢に促されて部屋へと入る。

そこには声から想像した通りの“シブイ系の色男”が待っていた。



「初めまして、だな。“迷宮の覇者”ケンジー・ドレイパー君。私は、この冒険者ギルドのギルドマスター、ギディオン・ベローだ」






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