03-02 冒険者
現在のケンジーのランクは以下の通り。
・冒険者ランクF
・探索者ランクC
非常にアンバランスだ。
だが、通常こんなものだ。
技術畑が違うために住み分けされているのが普通なのだ。
だから、これから冒険者ランクを上げて行こうというケンジーは異常と言えた。
探索者としては、努力だけで上げられる域へ届いてしまった。
他の探索者からは尊敬の眼差しの対象である。
もっとも15歳という年齢から多分に嫉妬も混じっているが。
だが、その多数の眼差しは驚愕に見開かれた。
ケンジーが冒険者の依頼を積極的に受け始めたからだ。
通常、探索者は仕事場 ――街―― を替える場合にすら冒険者の依頼は受けない。
まずランクを上げていないし、自分の適性を見るために低ランク帯で双方上げていた者ですら、矜持として ――大抵は先輩探索者からそう教えられる―― 受けはしない。
そう矜持の問題なのだ。
どれほど探索者として経験を積み、ランクを上げていても、冒険者としては下っ端だ。
個人主義が通用する探索者に対して、比較的合同で仕事を受ける割合の高い冒険者は仲間意識が強い。
依頼で一緒になった時にはランクの低い者は高い者の命令に従わなければならない。
そんな暗黙のルールがあるために、一度探索者に染まると冒険者としてはやっていけない者が多いのだ。
「まだ若いから」
口ではそう言いながらも薄々勘付いている。
認めたくないだけだ。
アイツが本気で“オールラウンダー”を狙っているだなんて。
しかし、ここで誰かが疑問を口にした。
「でもあいつ、だいぶ前にCに上がってたよなぁ」
周りがハッとする。
そういえばそうだ、何か裏があるのか、そんな噂があったか、囁き合う。
本人はいないというのに囁き声だ。
「ああ、俺それ知ってるぜ」
一人が声を上げる。
「たしか親から、領地内の全部の迷宮を制覇しないと家を出る許可が下りないらしい」
「「「「……………………」」」」
「「「「ぶふっ」」」」
「「「「ぶぁっはははははっあははは……何だそりゃあ、腹いてぇぇええええ」」」」
家の事情がすっかりバレていた。
色々と台無しだった。
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「Fランクなんてこんなもんかぁ、しょっぱいなあ、もー」
「落ち着いて~。駆け出しだもん、仕方ないよ~」
ケンジーは、まだFランクの依頼を受けていた。
見習いGランクの依頼は雑用だった。
街中だけで完了する依頼だ。
Fランクになったからと言っても所詮駆け出し。
稼げる依頼などありはしない。
冒険者のランクアップは信頼度による。
一つ一つ着実に熟していくしか方法はない。
「……ふう。……うん、その通りだな。ありがとう、プラム」
「えへへ~、どういたしまして。ケンジーのそういうところ、好き~」
言いながらプラムはケンジーの頭の上に座る。
――――最近のプラムの定位置だ――――
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自らの言葉通り、ケンジーは着実に依頼を熟していった。
駆け出しとは言え、ただの駆け出しではない。
多くの迷宮を踏破し、公開できる呪文のレパートリーは充実していた。
一月もすると信頼度は上がり、ランクこそ上がっていないが盗賊団の討伐依頼を受けられるようになっていた。
「――――これで盗賊団討伐依頼の受注は完了いたしました。無事に依頼を完遂いたしますよう祈っております。――――ご武運を」
ギルドの受付嬢にそんな言葉で見送られた。
いつもの定型文なはずなのだが、妙に熱い眼差しで見つめられてしまった。
なんだろう、最近こんなのが多い気がする。
頭の上ではプラムがそっと溜息を吐いていた。




