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02-05 展望

叫んだことで多少気が晴れたのか、ケンジーは落ち着きを見せ始めていた。



「……やれることをやろう。 まずは初めての迷宮討滅だ」



ダンジョンコアを慎重に取り外す。

コアは討滅の証明だ。

破壊した破片でも問題はないが、完全体の方が遥かに価値が高い。


次に宝物関係を物色していく。

几帳面に宝箱に収まっている、と言うことも無く、ダンジョンコアがあった場所の周りに乱雑に散らばっていた。

なぜ、最深部の最奥に宝物類があるのか?

プラムに聞いてみると、ダンジョンコアは極僅かだが世界の記録にアクセスできるのだという。

そこでダンジョンコアが人々の記憶から欲しがるものを宝物として作成しているそうだ。



「なんだろう……ネズミ取りの餌的な……?」


「それで合ってるよ~」



人間に限らず、生物は迷宮が成長するための養分なのだそうだ。

中でも、態々奥へ奥へと侵入してくる人間は貴重で、奥へと誘い込みたい迷宮は餌となる宝物を生み出すのだという。



「その生み出す宝物リストに、例の書が加えられてるんじゃないのかね」


「あ、その可能性はあるね~。その仮説が証明できたら代行者の力で書き換えられるよ~」



先は長そうだ。



閑話休題。



宝物を確認したところ、アクセサリーや宝石などが大半だったが、ついに念願の呪文スクロールが見つかった。


見つかったスクロールは次の四つ


・自動地図作成:迷宮

・罠感知

・罠解析

・罠解除


ナニモノかの意図を感じずにはいられない品揃えだった。



「いや、実際のところ実用的で便利だし、これらが大手を振って使えるのは有り難い上に、探索者パーティーからは引っ張りだこになるレパートリーだけどもさぁ」


「なにが不満なの~?」


「不満はない。ないんだが、ただ釈然としないだけだ」



そういうことらしかった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



家に戻ると総出で出迎えられた。

ちょっと大げさだと思うと告げると帰ってきた言葉はこうだった。



「何を言う。六日も家を空けていたのだぞ。心配するのは当然だろう」


「……父さんが僕に依頼したのですが?」


「それはそれ、これはこれ、だ」


(親バカ……)



無事に迷宮を討滅したと報告し、ダンジョンコアを取り出すと、喜びと共にとても驚かれた。



「成人してすぐに迷宮を討滅したか! 我が息子ながら末恐ろしいな」



目尻の下がった笑顔で言われても、とてもそうは思えない。



「名誉貴族のこの家も安泰ですわね」



母も満面の笑みだ。

もっとも、この母は大抵この顔だが。



「凄い、お兄ちゃん、凄い~」



妹は、ひたすら凄いを繰り返し、尊敬の瞳でケンジーを見ている。



祝福する家族に囲まれて、漸く嬉しさが込み上げてきたのだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



身内による祝賀パーティーが開かれた翌日。

書斎で父に相談した。



「ダンジョンコアは、この後どうなるのでしょう?」


「領主様への報告に必要だ。明日にでも俺が持っていく」


「そうですか」


「だが、その功績はお前のものだ。コアはどの道冒険者ギルドに収める決まりだ。お前の貢献度ポイントになる」


「え? そうなんですか?」


「ああ。若い迷宮とはいえダンジョンコアだ。Dランクは確実だな」


「……へ、へぇぇ。……へへ、えへへへ……」



思わず笑みが浮かぶ。

隠そうとしても隠しきれないほど喜びが湧いてきて止まらない。



「お前の喜び方はぎこちないなぁ。もっと素直に感情を表せるようになれ」


「むぐぐ」



ぐうの音も出なかった。

プラムは腹を抱えて笑っていた。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



その後、色々あった。

大体、父の言うとおりになった。


ドレイパー家は、単独による迷宮討滅の功績を持って、正式に騎士爵家となった。

もう名乗る際に“名誉”を付けなくて良いのだ。

公式には迷宮討滅の功績となっているが、後継ぎが優秀なことを加味されたことは疑いがない。


ケンジーの探索者ランクはDランクとなった。

こちらはわざわざ発表されることは無かったが、あの(・・)罠群迷宮を単独制覇した以上、確実に注目されているだろうと、父は言っていた。


領主の期待に応えて見せたこと。

ギルドが投げ出した迷宮を制覇して見せたこと。



様々な方面から注目されているだろうことは誰にでも簡単に予測できた。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「まぁ、だからなんだって感じだけどなー」


「嬉しくないの~?」


「やらなきゃならないことが山積みなもんでね」


「えへへ、そうだね~」



まずは冒険者ギルドだ。

討滅された迷宮から例の書は発見されたのか?

発見されたなら、その書はどうなっているか?


迷宮を討滅した探索者が現在どうしているのか?

討滅されていない迷宮はどこにどれだけあるのか?


調べなければならないことはいくらでもあった。


だが、その結果は芳しくなかった。

秘匿された情報が多すぎるのだ。

調べていると、必ずと言っていいほど秘匿情報に繋がり、調査が停滞してしまう。


隠し方が尋常じゃなかった。

“調べるな”と言われているようだった。



「……迷宮管理」


「え、なーに?」


「ギルドがここまでして秘匿したいこと。 迷宮管理以外に考えられない」


「……調べて(・・・)みる?」


「いや、いいよ。 開示していない情報を知っているなんてバレたら、命を狙われかねない」


「じゃあ、どうするの~?」


「向こうから話したくさせてやる。 今までと同じさ。 オールラウンダーになってやる。それも最短でな!」


「うん! がんばろう~」





~第二章 完~


これで第二章は終わりです。


第三章はケンジー君が成り上がるお話になると思います。

ただし、プロット構成するところから考えるので、

ちょっと間が開くかもしれません。


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