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02-04 更なる問題

訳が分からなかった。



(なぜアレがここにある)

(生まれた?ダンジョンコアから?)

(いや、再生したのか?)


「ケンジー!早くあいつを倒した方がいいよ~」



はっとして、正気に返るケンジー。

剣を抜き、構える。



「すまない。そうだったな。それが先だった」


「いい? いくよ? 武器位階強化――第五階梯!」



以前と同じように剣が輝きだす。


慎重に近づく。

例の書は動きを見せない。


そのまま――――剣を振り下ろした。



“ィィイエエエエエエエエエエエ…………”



断末魔の声が聞こえた気がした。

そのまま、例の書は何をするでもなく消滅した。



「随分と、あっけなかったな」


「アイツ自身は、なんの攻撃力もないみたいだね~」


「前のヤツは“魔法の矢”をどれだけ撃ち込んでも無傷だったけど……攻撃されなかったな、そういえば」


「攻撃力の無いぶん、防御力が高いのかもね~」

「でも第五階梯の武器なら倒せるからダイジョブだよ~」



誇らしげに胸を張るプラム。

いつもの調子に戻ったプラムを見て、ケンジーはようやく落ち着いたのだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



何が起こっているのだろう。

落ち着くと、再びそんな考えが浮かぶが、応えられる者がいるとは思えない。

――――はずだった。



「……調べよっか~」



突然プラムが言い出した。

ふと思い至る。



「また読んだな?」


「えへへ」



プラムが言うには、ケンジーとは通じ合っているから“分かる”のだという。

でも、常に通じ合ってはいないのだろうとも思う。

なぜなら――あまり認めたくはないが――頼りたいと心のどこかで考えた時だけ、この妖精は心を読んでいる。

そんな気がしてならないのだ。


いや、本音を言えば身に覚えがあるのだ。

ほんのわずか、心が後ろ向きになった時。

プラムはケンジーに先んじて行動を促してくる。背中を押してくれる。



(ほんと、頼りになる相棒だよ)



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「調べるって、どうするんだ?」


「ん~……」



ひょいっ!という感じでケンジーの肩に乗るプラム。

そのまま後頭部にしがみついた。



「……ぎゅっ」


「おい。 いま口で言っただろう……」


「いいから、そのままダンジョンコアに触れて~」


「危なくないのか?」


「ダイジョブ、あたしが守るから~」



プラムの考えは、解らないことは世界の意志に丸投げするということだ。

それでも解らないのなら考えるだけ無駄。

そして世界の意志に介入させる時、プラムよりケンジーに行わせた方が効率がいいのだ。

代弁者とは世界の意志と記録にアクセスできる者のことだ。

それも、受け取る方面に特化している。

対して代行者は、自身が世界の意志の端末だ。

代行者の眼は世界の意志の眼であり、代行者の耳は世界の意志の耳である。

“百聞は一見に如かず”

要は、そういうことなのである。


そして解析結果をケンジーに伝えるにはプラムが必要となる。

後頭部にしがみついているのは、ただの茶目っ気――――

ではなく、プラムも今の状況に不安を感じているのであった。



「解ったよ~」


「どうだった?」


「んとね~。ダンジョンコアは、あの本の卵みたい」


「……なんだって?」


「あの本は、ダンジョンコアから生まれるの」


「それは、全ての迷宮ダンジョンコアがあの書のための卵ってことか?」


「うん~」



衝撃の事実だった。衝撃的過ぎた。

目の前が真っ暗になった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



迷宮は、あの書に寄生されている。

当然だが、迷宮はあの書のために存在する訳ではない。

この世界の理に則った現象だ。

あの書は、その性質を利用して世界に生まれでる。

あの書が何かは分からない。

それが問題だった。……のだが

――――――――更なる問題が発覚した。



「あの本は再生したんじゃないの。新たに生まれた本だったんだよ」


「……迷宮の数だけあの書があるとか言わないだろうな?」


「……えへへ」


「なんてこった……」


「た、倒せないわけじゃないんだよ? それが分かっただけでも朗報だよ~」



倒せばそれだけ数が減るのは確かだ。

だが、一体どれだけの速度であの書たち(・・)は生まれているのだろうか。

これでは、ただの対処療法だ。

必要なのは根治だというのに、ヤツらが生まれる速度によっては、イタチごっこにすらならない。


そこでふと思いついた。



「代行者の力で、ダンジョンコアに寄生できないようにお願いしたらいいんじゃないか?」


「……やってみる~?」



その返答でピンときた。



「――――無駄なのか」


「うん~」



代行者の力とは世界の理と記録を書き換える能力だ。

だが、際限がないということではない。

原因不明の現象に力は及ばない。

原因は解明しなければならない。

そして世界の意志は、あの書を感知できない。

つまり代行者の力は、あの書に何の影響も与えない。



「――――あの本が何物なのか、どうやってダンジョンコアに寄生しているのか、それが分からない限り、どうにもならないかなぁ~」


「そうか……ん? 迷宮は世界の理に沿った現象って言ったよな?」


「……なんか嫌な予感がするけど。言ってみて~?」


「世界から迷宮を無くそう」


「だめぇ! やっぱり、そんなことだろうと思ったよ~、でもだめだからね!」


「なんでだよ。いい考えだろうが」


「まったくもう。ケンジーも、そういうとこは人間だね~」

「よく考えて? 世界の意志は、世界のすべてに対して平等なんだよ」



例え迷宮が世界の乱れの一旦を担っていたとしても。

迷宮の存在が世界の理に沿っているのなら、世界の意志はそれを受け入れる。

プラムはそう説明した。



「つまり、ヤツらを倒しながら、かつヤツらの誕生メカニズムを解析する必要があると」


「そうだね~」


「うわあああああ! めんどくせぇえええええええ」


「お、落ちついて~」


「代行者になっても、生きるのが全く楽になった気がしねええぇぇぇ!」


「うん、代行者って人生を楽にするモノじゃないからね~」


「うわあああああ! 聞きたくなかったわ! そんなこと!」





ケンジーの未来に光はまだ見えない……?


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