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02-03 誕生

ケンジーが迷宮の探索を開始してから三日が経過していた。



「遅々として進まねぇ…」


「そうだね~」



話を聞くだに嫌らしい迷宮だと思ったが、

実際に目の当たりにすると、それは際立っていた。



「迷宮は生きているって話だけどさ」


「ん~?」


「もしかして性格が現れるもんなのか?」


「あははは。どうだろうね~」



迷宮に性格があるならば、コイツは相当捻くれたヤツに違いない。

そう確信するケンジーだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「とりあえず、解ってきたな」



少しだが、進むための方向性が見えてきた。


まず大切なのは時間管理だ。

約一日。

一日経つと罠が入れ替わる。

しかも一連の罠の途中で入れ替わると、

一旦一番手前の罠まで戻らなければならなくなる。


これだけは絶対に避けなければならなかった。

これを繰り返すと確実に心が折れる。


襲ってくるモンスターは、プラムが一蹴できたので問題にならなかった。

実に便利。

一家に一妖精(フェアリー)も案外冗談ではなくなる未来も近いかもしれない。



「…なんか変なこと考えてる~?」


「面白い未来なら考えている」


「むぅ!」



これだけ守ることで、確実に前進できるのだが、

ケンジーが三日も掛かけてまだ表層にいる理由は、


罠解除の技術を身に付けるために、魔術を使わず進んでいるためだった。



「無駄とは言わないけどさ~」


「なんだよー」


「効率は悪いよね~」


「…もうそろそろ効率は上がる」


「え~、なんで~?」


「だいたい、把握した」



そう、観察し、本質を掴むことこそがケンジーの真髄。

基本を一度掴んだならば、その派生形は比較的容易く理解できる。

じっくりと三日を掛けて理解を深めた結果、ほぼ全ての罠に対応できるようになっていたのだ。


今は、そのおさらいをしているところだ。

今対応している一連の罠群をミスなく攻略したならば、ほぼ全ての罠を解除できると自信を持って言えるまでになっていた。


実は凝り性なところのあるケンジーは、一旦始めてしまった罠解除を途中で止められなくなってしまっただけだった。


無駄…とまでは言えないが、ここまで時間を掛ける必要性がないのは確かだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



罠群を攻略して気分が落ち着いたケンジーは、本格的にこの迷宮の攻略を始めた。


やることはやったので、ここからは魔術による罠解除を使い、ちゃっちゃと階層を進んで行く。



「そろそろ最深部のはずだけど…」


「…なんかへん…」


「どうした?」


「…なんか気持ち悪いの」


「お、俺はプラムを変な目で見てないぞ!!」


「そうじゃなくって!」



いちいち人をおちょくらずにいられないのだろうか、この男は。



「…気を付けて、ケンジー。きっとこの先に嫌なモノがある」


「確かか」


「たぶんね~」



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



この迷宮の守護者は扉だった。


ありとあらゆる罠が詰まった罠の祭典。

罠による至高。

知識と知恵と類まれなる技術を駆使して初めてこの扉の先に進める。

そんな選別の役割を与えられた高貴なる守護者。


それが、この扉だった。



「ま、こんなの魔術の罠解除(リムーブ・トラップ)で一発だけどな」



“ガチャン”



一発だった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



最深部のさらに奥。

真の深奥。

そこに足を踏み入れる。

若年の迷宮とはいえ、初めての経験だ。

慎重に歩を進めて行く。


息をんだ。



「――――これがダンジョンコアか」



初めてみるダンジョンコアに圧倒される。

思わず駆け寄ろうとした、その時。



「まって!やっぱりなにかがおかしいよ、ここ!」



いつもの間延びした話し方ではなく、切羽詰まった感じでプラムが叫ぶ。



「おかしいって、何がおかしい…ん…だ…」



ケンジーが気付く。


目の前の圧倒的な存在感を示すダンジョンコア。



そのダンジョンコアが濁っていた。



見るのは初めてだったが、コアが濁っている筈がないと、なぜか確信していた。



「なんだ、これは…」



よくよく観察してみれば、


コアの周りに異様な威圧感と魔力が渦巻いていた。



「なにが起ころうとしているんだ…?」



その声に応えた訳ではないのだろうが、コアに変化が訪れた。


渦巻いていた威圧感と魔力が、吸い込まれるようにコアの中に消えて行った。



「ケンジー!見て!…出てくるよ!」



言われずとも見ていた。釘付だった。

目を離せる訳がなかった。



“ずずずずずず―――――”



“ィィイエエエエエエエエエエ…………………”



いつか聞いた声。



音は同じだが、意味は真逆。



ソレは誕生を喜んでいた。



“…トスン”



ソレが地に落ちた。



落ちたソレを見る。



知っている。

俺はコレをよく知っている。



「コレは――――あの書だ」






表紙の顔は寝ているようだった。


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