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02-01 顛末色々

家族に対するプラムの説明は、存外すんなりと終わった。

今でこそ見かけることがなくなった妖精フェアリーだが一昔前は、特に珍しくもなかったそうなのだ。


いったい何があって見かけなくなったのか

――プラムが言うには数が減った訳ではない―― 気になるところだ。



閑話休題。



それでも、その頃から妖精を連れて ――気に入られて―― いた人は少数だったようだ。

妖精が気に入る人物は誠実で、決まって大成したという。


そういう逸話もあって、両親どころか屋敷中の人間がケンジーとプラムを祝福した。


約一名。

妹だけはケンジーに付き纏うプラムに嫉妬していたが。



「プラムちゃんばっかりずるいー!」


「えへへ~、いいでしょ~」



わいわいきゃあきゃあ騒いでいる。

仲が悪いわけではないようなので、気にしないことにするケンジーであった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



今後の方針をプラムと相談した。


といったところで、倒すべき相手がどこにいるのか分からない、探す術がないでは、如何ともし難かった。


とりあえず、ケンジーのやりたいこと ――冒険と探索―― をしていれば、あちこち出かけることになる訳だし、そのうち出会うことになりそうだ、ということで落ち着いた。



「で、その代行者の力のことだけどな」


「うん、な~に?」


「使わない方針で行くから」


「うんうん。りょうか~い」


「軽いなぁ。…いいのか?」


「…いいよ~?あ、でもね」


「なんだ?」


「自分の身を守ることに対しては躊躇ちゅうちょしないでね~」



どういうことか。

現状、敵を探知することはできない。

ならば、最も警戒すべきは奇襲からの即死だ。


一見、楽勝に見えた前回の戦いは、実のところかなり危険だった。


ケンジーのことは、成人したころから観察していた。

ケンジーは、初めから代行者の素質は充分だった。

観察していたのは人間性を見るためだ。


その最中に、敵が本性を現したのだ。

これは、ある意味幸運で、また別の意味では不運だった。



幸運とは、正体不明だった対象を知ることができたこと。

不運とは、唯一の代行者候補が命の危険にさらされたこと。



すぐに対処を開始したが、プラム経由による事象の書き換えは時間が掛かる。

なぜなら、いちいち世界の意思に説明し、承認を受けなければならないからだ。

結果、時間を止めて急遽きゅうきょ本人に代行者となって貰うことで対応した。

時間が止まったタイミングは……ギリギリだった。

間一髪かんいっぱつと言える。


もし、間に合わなかったらと思うとぞっとする。

あのぼろぼろな、満足に動かない体で地竜に向かって行ったのだ。

万に一つも勝てる見込みなどなかった。


失う訳にはいかない。

代行者ということを除いても、この家族思いの少年は好ましい。

失いたくない。

だから、この少年のことは自分が守らなければならない。


けれど、とても残念なことだけれど。

自分の力だけでは守りきることができないだろうこともプラムは理解していた。


だから、ケンジー自身が力を使うことを躊躇ためらって、手遅れにならないように注意を促したのだ。


実際のところ、敵を倒すための火力はプラムがいれば事足りた。

それほど彼女の固有魔術エクストラは強力だ。

後は防御なのだ。


その辺りを考慮しても、ケンジー自身の実力を上げることに繋がる冒険者・探索者という仕事は打ってつけだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「ねね、ケンジー、そういえばさ」


「どうした?」


「魔術は、どうするの?」



そう、その問題があった。

幸か不幸か、現存するほぼ全ての呪文はケンジーの頭の中に刷り込まれているのだ。


これは問題であった。

うっかり使ったところを見られたりしたら。

それが実は秘匿された大魔術だったりしたら。


呪文を知っているだけで、その対外価値を知らないケンジーには、どこまでが知られてもいい呪文なのかの判断ができないのだ。



「初心に帰るしかないかなぁ…」


「つまり~?」


「実際に迷宮か遺跡で呪文スクロールを手に入れる」

「それなら使って見せても問題ない」


「そうだけど~」



随分と消極的な対応だと感じる。



「スクロールを見つけたからって言い訳できる。」

「どこそこのなんていう迷宮・遺跡で手に入れたってな」



チートを忌避きひするあまり、考え方まで後退しているのではなかろうか。

そう思わずにはいられないプラムだったが、少し考えて思い直す。


そうではない。

彼は変わっていないだけだ。

あの書を見つけた時と同じなのだ。


だから…



「早くたくさん見つかるといいね~」



ちょっと呆れ気味にそう言うだけで済ませたのだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



事象を書き換え、あの書に干渉されずに済んだことになった現在。

ほぼ全てが穏やかに流れているように見えた。


だがその影で極一部、不幸に見舞われた人たちもいた。

ニール・シーメンスと、その取り巻きたちだ。


いや、彼らの場合は全て自業自得なのだが。


ケンジーが彼らと関わらなくなった結果。

あの時、コボルドの群れから彼らを助けたのは領主 ――伯爵家―― の三男に変化した。

ケンジーにした時と同じように彼に付き纏った結果、ニールたちは彼の不興を買った。


その後、ニールとその取り巻きたちは、二度と表舞台に出ることはなかった。


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