01-15 代弁者
目の前が真っ暗になった。
絶望だけが心を覆った。
だというのに。
次の瞬間には、体に力が籠った。
「うおぉぉおおおおおおおおおお!!」
守護者の間にいるのは地竜。
体長10メートルほど、体重は…知らん。
首長竜のようなフォルムに4対8本の脚。
敵に体当たりし、転んだところに多脚でトランプル。
それが必殺のパターンだ。
(勝てる気がしねぇ)
(だけど)
(そんなこと、知ったことか!)
互いの戦闘オプションは“体当たり”
勝てる要素は万に一つもない、
だがどの道、体は動かない。
(今、俺にできる攻撃は、体当たりしか、ないんだからなぁぁああ!)
その瞬間、突如として時が止まった。
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体が動かない。
よく見ると、地竜も動いていない。
あろうことか、あの書も浮いたまま止まっている。
(やべぇ、今すぐあの書を殴りてぇ)
(てか、今何が起きてるのかねぇ)
(時間停止?何でもアリだな異世界…ぱねぇ)
動けないので益体もないことを考え始めてしまう。
すると、
「あたしのお話聞いて~」
そんな、気の抜ける声が聞こえてきた。
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声の主は妖精だった。
時間の止まった世界で、この妖精だけが動いている。
体長40センチくらいの妖精。
だが、よく見ると羽がない。
妖精というのは、トンボとか蝶のような羽があるものではなかったか?
それに、よくよく見ると美少女だ。
肩に届かない程度の髪はハニーブロンド。
澄んだエメラルドの瞳。
美人なのに愛嬌がある顔立ち。
人間でいえば13~14歳位だろう容姿。
…ちょっと見惚れたのは内緒だ。
「ねぇ、お話聞いて~」
(勝手に喋ればいいだろう)
(俺はどうせ動けない。声も出せない)
「あはは~、そうだね~」
(!? 心が読まれている?)
「あたしは、あなたのための代弁者だからね~、通じるんだよ~」
(俺のためって何だ?代弁者?)
「お話聞いてくれる?」
(嫌って言ったら何も進まないんだろう、なら聞くよ)
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話の要点を纏めると、こうだ。
この世界は、もうどうしようもないくらいに乱れてしまっているらしい。
この乱れというのは、人の営みとか自然のバランスとか、そういう目に見えることではない。
世界というモノは、混沌としているように見えて、実は一定の法則に沿って動いている。
この法則ってのは世界毎に違うらしい。
閑話休題。
普通は、世界はその世界にとっての当たり前に収束していく。
予定調和だ。
だが今、その予定調和が崩れている。
この世界そのものが、かつてない程に窮地に追い込まれている。
原因は不明。
…つい先ほどまでは。
(先ほどまでは?)
「うん、あたしはね、少し前からずっとあなたを見てたの」
(なんだってー!)
(ストーカー!ストーカーだ!異世界にもストーカー!)
「違うよ!いかがわしい気持ちなんて、これっぽっちも無かったよ!」
いいリアクションだ。
からかい甲斐がある。
新しい玩具を見つけた気分だ。
(打てば響く、この反応。からかい甲斐があるな)
「ひどいよ~」
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(世界が乱れた、その原因。それが、あの書って訳か)
「あれだけじゃないと思うけどね~」
「あれ一つで保てなくなるほど世界が乱れるはずないもの」
(なるほど)
「たぶん、一つ二つじゃないよ。100とか200とか…ううん、もっとかも」
(ふむふむ。…で、代弁者ってのは何だ?)
「あたしのこと~。世界の意志を必要な相手に伝える者のことだよ~」
(普通に伝えちゃだめなのか?)
「普通に伝えたら発狂するよ?」
(こわっ!なんだよそれ)
「世界の意志ってね、物凄い数の事象を同時に処理しているの」
「整理しないまま、その全ての情報を受け止めたら、大抵の生き物は発狂するよ~」
(なるほど、その中から相手に伝えたいことだけを取捨選択できる者が代弁者なんだな?)
「そうそう~、凄い~、よく分かったね」
(分からいでか)
やっとヒロインが登場しました。
実験として予約投稿をしてみました。
この話を含めた第四話(全三記事)を順次投稿します。
上手くいけばね(しろめ)
間隔は、なろうの設定上、一時間毎になります。




