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01-14 予言

自宅がたいへんなことになっているとは露知らず。

ケンジーはマイペースに迷宮を探索していた。



(次が最深部だ。一旦ここで休憩して万全の状態で守護者に挑む)



休憩のために守護障壁を張ろうと例の書を取り出す。

該当のページを開こうとして違和感に気付いた。



(…書が…開かない…)



―ガッシ、ガッシ、ガッシ…―


モンスターの足音だ。近い。


…手を抜いた訳じゃない。

だが、もう休憩だと思い、感知魔術を切ったのは確かだ。

いつもなら、すぐに守護障壁を張り、仮にモンスターが近づいても悠々対処できていたのだ。


そこにリザードマンの群れが現れる。

硬い鱗、高い身体能力、何よりも表層のモンスターとは違い、連携を取ってくる。

補助魔術チートがあっても強敵だった。


悔やんでも悔やみきれない。

明らかな油断だった。

あれほど、この書を信頼してはならないと自分に言い聞かせていたというのに。

結果は、このざまだ。

これでは生きて地表に出られるかも分からない。



(だけど、まずはコイツラだ)



気持ちを切り替え、戦闘モードに移行する。

こうして最深部のモンスター相手に、補助魔術チートのない戦いが始まった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



どれだけ時間が経っただろうか。


ケンジーは生きていた。

体はぼろぼろ、ポーション等のアイテムは使い果たした。

けれど、それでも生きていた。


―バサバサバサバサッ―


ビクッと体が反応する。

恐怖に体が震えるが、気をしっかり持って音のした方を見てみると…


そこには本が浮いていた。

例の書だ。

開いている。

勝手にページがめくれている。


いや、まて。

何かがおかしい。

何がおかしい?



(そうだ、ページだ)

(あの開かれている場所。)

(あれは、後半部分じゃなかったか)



ゆっくりと書が近づいてくる。

後ろに下がろうとするが体が動かない。

ゆっくりと書が持ち上がる。

やめろ、見たくない。

中身を読ませるようにゆっくりと近づいてくる。

体は動かない。

まぶたを閉じることもできない。

書は、さらに近づいてくる。


文字が見えた。

見えてしまった。


読めてしまった…



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



“ドレイパー騎士爵家の破滅”


“ドレイパー家の長男ケンジーが、迷宮でシーメンス准男爵の六男ニール・シーメンスを助ける”

“ニールはケンジーを手に入れようとするが、ケンジーは拒否する”


“…決闘で決着をつけることになる”

“ケンジーは決闘でニールを嬲る”



「違う! 俺は、穏便に済ませようと!」



“…剣では勝てないニールは一計を案じる”


“そう、上位貴族に反抗することは許されない”

“まして、恥を掻かせるなど万死に値する”

“一族郎党皆殺しにするべきだ”

“それこそが世の理に則った相応しい罰だ”



「なんだ?何を指しているんだ?訳が分からない」



“…当主は領主の城で弁明の機会も与えられず処刑される”



「!?」



“その時点で反逆罪は適用され、一族郎党の処刑が決定する”



「お、おい。なんだよそれ…」



“ならば残った者に何をしようが罪にはならない”



「勝手なことを!」



“屋敷の女は犯せ。その上で殺せ”



「アンジー!母さん!逃げてくれ!頼む!」



“残るは長男だけだ”



「…っ!?」



“長男は迷宮の最深部で―”






“―守護者に喰われて骨も残らず消滅する”



―ずずずずずずずず……―



扉が開く…



あの書がわらっていた。

声が無くても聞こえる。


あの表紙のシミが、

人間の表情を形作かたちづくり、

俺を見てわらっていやがるのだ。



―ずずずずずずずずずずずず……―



守護者のの扉が開いていく…


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