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01-13 暗雲

「くそぉおおおお!くそっくそっくそっ!許さんぞ!」

「あの成り上がりの息子ごときが、この私に恥をかかせるなど!」



自室でニール・シーメンスが荒れていた。

さすがに、あの場では素直に冒険者ギルドを後にしたが、その後は大荒れだった。

取り巻き達は、そそくさと離れて行った。

一人になったニールは荒れたまま自宅へ帰り、自室で物に当たり散らした。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



一通り当たり散らして発散したニールは、多少落ち着いたようだった。



(この恨み晴らさずに措くものか)

(だが、どうやって…戦いではどうやっても勝てん)

(自分が何をされたのか全く分からなかった)

(となれば…)



そのまま、ニールは自分の考えに深く埋没していった…


この集中力を他に使うことができたなら、と思うものは実は意外に多い。

が、その思いが届くことは無く今まで来てしまったのがニールの不幸かもしれなかった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



決闘騒ぎから2週間経った。

あれ以来、ニールの顔を見ることは無く、平穏な探索生活が送れているケンジー。

迷宮の到達深度は深層にまで届いていた。



(上手くいけば今日にも最深部に手が届くな)



そう思った時に何か違和感を感じた。



(…ん?笑い声みたいな音が…いや違う、音じゃない)

(イメージ?ちょっと違うけど、イメージが一番近い表現…)

(…消えた…?何だったんだろう)

(うーん、気になるけど、どうしようもないな。今は忘れよう)



知らないところで悪意が形を持とうとしていることにケンジーは気付かなかった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



その頃、ドレイパー騎士爵家にて事件が起きていた。

当主クレイグの同僚騎士が、領主よりの命令にて屋敷を訪れていた。



「ドレイパー卿、貴殿に反逆の意志ありとの密告があった。く登城なされよ」


「おいおい、いきなり何を言い出すんだ?」


「登城せず弁明無き折には容疑が確定される。疾く参られよ」


「…………」



同僚騎士は、命令を遂行するというよりは、まるで祈るような面持ちでクレイグに登城の意志を促していた。



「…了承した。しばし待たれよ」


「承知」



屋敷の使用人達は、何が起きたのか分からず、お互いの顔を見合わせるだけだった。

パーシアがクレイグの支度を手伝うべく、着いていく。



「…お母様」


「アンジェラ。あなたは、お部屋で待っていなさい。決して家から出ないように」


「わかりました…」



そこに騎士が口を挟む。



「反逆罪の容疑が掛かっております。無実が認められるまで外には出ないようにお願いします」


「分かっていますわ。アンジェラ聞いていたわね?」


「…はい、お母様」



自室のソファに腰掛けるアンジェラ。

疲れたような、その姿には、いつもの無邪気さは感じられない。



(何が起きているの? 頭がぐちゃぐちゃで何も考えられない…)

(お兄ちゃん、早く帰ってきて…)


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