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01-12 決闘

そんなことがあったことなど、すっかり忘れてケンジーがギルドへ戻ってくると、

そこには“いい笑顔をした”ニール・シーメンスが待ち構えていた。



(うわぁ、あれから8時間は経ってるってのに、ずっと待ってたのかコイツ)



「やぁ、おかえり、ケンジー・ドレイパー君。先ほどは世話になったね」


「あぁ、いや。…同じ探索者の義務って言うか努めっていうか、気にしなくていいですよ」


「おお、素晴らしい。さすが騎士の息子だ。言うことが違う」



清算があるからと、一旦ニールから離れ、ギルドの清算受付へ向かう。

補助魔術の嵩上げがバレない程度に探索の成果を受け付けに渡す。

中層のモンスターから出た魔核は、一つ二つを除いて。全て迷宮内で穴を掘り捨てている。

もったいないとは思うが、書の存在がバレるよりはいい。


一つ二つなら、新人のちょっとした勇み足に運があったと思われる程度だろう。

そう思っていたが、甘かったようだ。



「おめでとうございます。ケンジーさんは、これで探索者ランクがFになりました。ギルドカードを更新しますので提出して頂けますか?」


「…え?」



探索者のランクをあげるためには、とにかく良い魔核をたくさん持ち帰るしかない。

のんびり一週間働いてFランクになれる冒険者とは難易度が違うのだ。

新米探索者が一か月でランクアップするなど数年に一人出るか出ないかだった。


混雑している夕方だ。当然、注目を集める。

大量の視線の中で、ニールの目が一際光った気がした。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「単刀直入に言おう。君を我がパーティーに加えたい」


「…はぁ」

(早く終わらね―かな)

「自分は自分の限界を知るために。また、その限界を超えたいがために迷宮に挑んでいます」


「分かる、分かるぞケンジー。男ならばそうでなくてはな」


(なら、あんな表層で崩壊するパーティーに誘うんじゃねぇよ!)

「いずれは他者と組むこともありましょう。けれど、それは今ではありません」


「分かる、分か…何?」


「申し訳ありませんが、お誘いはお断りさせて頂きます」


「断るというのか!この私の誘いを!」


「そう申し上げました。失礼します」



さっさと席を立つケンジー。

だが、ニールは追い縋ってきた。



「無礼であろう!各上の貴族家に対して!」


「成人した以上、我々は庶民ですよ」

「けれど、礼を尽くしたからこそ先ほどは貴族としての応対をさせて頂きました」



ハッと周りを見渡すニール。

ニヤニヤとした表情のベテラン探索者達と目が合った。

とっさに引き下がろうとするニールだが、ここで思い直す。

ここで下がったら、もう探索者としてすら名を上げることはできない、と。



「ならば決闘だ!貴族らしく決闘で決着を付けよう!」


(頭、膿んでるのかな、コイツ…)



溜息しか出ないケンジーだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



ギルドの訓練場は賑わっていた。

そこかしこで賭けが始まっていたが、よくよく注意して聞いてみれば、ケンジーに賭ける者しかいないようだった。

それでも賭けが成立しているところを見ると、大穴に賭けている者もいるのかもしれない。



「それでは、開始!」



立ち合いを買って出てくれた冒険者が決闘の開始を合図する。

ケンジーは、相手の出方を見ようと待ちの構えだ。

するとニールは走り込み、大上段から裂帛れっぱくの気合でケンジーに剣を振り下ろす。

へっぴり腰で。



(なーんか、気になるんだよなぁ、あの剣。変な効果を持っていそうで)



勘に従い受けずに避けることにするケンジー。

すると空振りしたニールの剣は、地面に当たると、その瞬間…

剣の触れた地面が大きく裂けた。



(うお!?なんだあれは!)



ケンジーは、ニールを見る。

すると彼はドヤ顔で、



「よくぞ避けたなケンジーよ。だが、腰が引けているぞ?我が剣に恐れをなしたか!」


(呆れてるんだよ!それだけの武器持ってて、なんでコボルドにボコられるんだよ!)

(むしろ、よく負けられたな!もー、びっくり!)



気を良くしたニールが、再度大上段からケンジーに切り掛かる。



「ばからしい。いつまでも茶番に付き合ってられるか」



ニールの剣をかわした瞬間、武器落とし(ディザーム)を使う。

見事にニールの剣は、手を離れて飛んでいく。

呆気あっけに取られたニールを足払いで転ばすと、うつぶせになったニールの背を踏み、剣を首筋に当てる。



「そこまで!勝者ケンジー!」



秒殺だった。

もっとも、この結果に驚いているのは、ニールとその取り巻き以外にはいなかった。


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