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01-11 貴族

その日、気配感知に引っかかる集団があった。

いつもなら避けていくだけだ。それで終わり。


だが、その日は何かが変だった。

バラバラに動く気配と、陣形を取っている気配。

モンスターと探索者パーティーだろうと当たりをつける。

それらの気配を回避しようとしたら、陣形を取っていた気配が急にバラけてモンスターと思われる気配から遠ざかっていくのだ。



(ありゃ。決壊したのか)



どうするかと考える。

ここはまだ表層だ。

自分と同じ駆け出しかもしれない。



(見捨てるのも後味が悪くなるか)



気紛きまぐれに救助に向かうことにする。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



急いで現場に向かうと、大量のコボルドが探索者を取り囲み、タコ殴りにしている場面だった。

阿鼻叫喚…に見えて実は、



(なんのコメディーだ、これは)



コボルド達は必死に棍棒で探索者達を叩くのだが、背を丸めて頭を庇い縮こまっている探索者達には、全くダメージが通っていないようだった。

どうやら探索者達の防具が、非常に強力な魔力の付与された逸品のようだ。



(金持ち貴族のボンボンってところか)



溜息をきながらコボルド達を駆逐するケンジー。

全ての処理が終わる頃にようやく活動を再開する探索者達。


リーダーらしき人物がケンジーに近づいてくる。



「助力感謝する。私はニール。シーメンス准男爵家の六男だ」



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



「私はニール・シーメンス。シーメンス准男爵家の六男だ」


(言い直さなくても聞こえてるし。つか、六男て…)


「自分は、クレイグ・ドレイパー名誉騎士爵の長男、ケンジー・ドレイパーです。」



名乗り返さないと話が進まないと思い、仕方なく返す。



「災難でしたね。これほど大量なコボルドに襲われるとは」

(それだけの防具があるなら、普通はどれだけ居ようがコボルドなんか雑魚だけどな)


「うむ、後から後から羽虫のように湧いてきてな。難儀していたのだ」



ニールの取り巻きなのだろうか、パーティーメンバー?が4人ほど集まってきて自己紹介を始める。



(めんどくさいな。もう取り巻きA~Dでいいだろ)

「では、自分は先を急ぐのでこれで失礼します」


「…え?あ、おい!待て!」



聞こえなかったフリをして、とっとと走り去ることにするケンジー。



(やっぱり関わらなきゃよかったなぁ)



早くも後悔しているが、本当の後悔は、これから始まるのだった。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



(とうとう見つけたぞ、ケンジーと言ったな。あいつをパーティメンバーに加える!)



ニール・シーメンスは准男爵家の六男だ。

永代貴族の男子と言えども、三男以降は貴族籍は貰えない。

成人してしまえば庶民と変わらないのだ。


これが上級貴族ともなれば、なにがしかの職位を継がせることができるのだが、准男爵程度の下級貴族では望めない贅沢だ。


まして、ニールは六男。

子供の頃から親に「何か手に職を持て」と言われて育った。


末っ子と言うこともあり、兄達より我儘を言っても聞いてくれた。

だが決してニールに期待してのことではない。

産まれる前から、成人後は庶民となることは決まっていたのだった。


しかし、幼少から散々我儘を言ってきたニールは堪え性がなかった。

何をやっても中途半端。

歳だけを重ね、取り返しがつかないところまできた。



(もう、冒険者になるしかない)

(探索者なら実績がなくてもランクを上げられるし、装備は親父に我儘を言えば上等な物が揃うはずだ)



そう思ったら上手くいくイメージしか湧かなくなり、似たような状況の取り巻き達を唆してパーティーを組んだ。

成人し、いざ迷宮探索と意気込んではみたものの。

何の訓練もしていないボンボンに戦闘などできるはずもなく。

なのに根拠もなく奥へと赴き、ついには雑魚モンスターの代表とも言えるコボルドにボコられたのは、ある意味当然の成り行きだろう。

なのにダメージは(ゼロ)という。

ケンジーでなくともコメディかと思うシチュエーションは、こうして出来上がったのだった。



とはいえ、ニールもそれに気付かないほど馬鹿ではなかった。

自分のことは棚上げしつつ、取り巻きに一人くらいは戦闘できる者がいると思っていたのだ。

まぁ、結果はアレだったが。


ならば次の手段。

腕のいい戦闘職を加えるしかない。



気紛れで人助けをしたがゆえに、ケンジーは厄介な人間から“ターゲットロックオン”されてしまったのだった。


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