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01-09 始まる探索

ケンジーは、もちろんオールラウンダーを目指すことにした。

今後の方針は、無難に見習い冒険者として始めて、Gランクを卒業する。

次に迷宮へ赴き呪文スクロールを手にすべく深層を目指す。

その際、戦士として戦いつつも例の書の補助魔術を使い実力を嵩上げする。


どこまでやれるかは、やってみないと分からないという不安はあるが、やらなければ始まらないと覚悟を決める。


最終的には冒険者のランクも上げていくが、まずは呪文スクロールを手に入れて、魔導書の充実を図る。

戦士としての実力を付けた以上、もう魔術師にこだわる必要もないのだが、せっかくのファンタジー世界なのだから、魔術をいっぱい使いたいという思いは消えなかったのだった。


ちなみに冒険者のランク上げは地元で行う。

なぜなら街を出ると妹が泣くからだ。


でも迷宮探索は討滅の済んでいない迷宮でやる必要がある。

討滅された迷宮では呪文スクロールの新たな発見は期待できないからだ。

父親の討滅した迷宮ならばノウハウを教わることができる上に家から近いので良いこと尽くしなのだが、肝心のスクロールが手に入らないのでは本末転倒だ。

妹をなんとか説得しなければならない。



結果から言うと、説得に失敗した。

むしろ反対に説得された。

妹に父と母が手を組んだのだ。

いずれ遠くに行くのは良い。だが急いで行く必要はないだろうと。

まずは近場のノウハウのある迷宮で、実際の探索の手応えを知っておくのは有益だろうと言われたのだ。


全く反論できずに終わった。

その通りだと納得さえしてしまった。

納得してしまった以上、反抗する気は起きなかった。

今までだって駆け足で進めたことは無かった。

一歩一歩進み、時には立ち止まり、後ろを振り返ることさえあった。


じっくり腰を据えて取り掛かろう。

そう決意を新たにした。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



冒険者ランクは、すぐにFランクとなった。

1日に2件、街中のお使いやら雑用やらをこなしていたら1週間ほどでランクアップした。


ちなみに登録時のお約束は発生しなかった。

自分が冒険者上がりの名誉貴族の息子ということは、この地では自分で思っていた以上に知られていたのだ。

どうせ、どこかの親バカが息子自慢でもしていたのだろう。


そしてやっかいなことに、戦士で魔術師だということも知れ渡っていた。

なぜなら…



(あいたたた。“呪文スクロール求む”の依頼が未だに残ってるじゃないか)



無期限で出した依頼なのだから、撤回しない限り残っているのは当たり前だ。



(反対に、この依頼が残っている限り、魔術師としては使えないとバレているってことか)

(使えるかもな、この状況は)



魔術師として使えないと認識されているということは。

直接目視されない限り、例の書の存在は秘匿ひとくできるということでもある。



    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦    ♢♦♢♦♢♦♢♦



(とりあえず、迷宮初日は慣れる意味でも1階だけにしよう)

(例えどんなに楽勝でも先には進まない)



父親が討滅した迷宮。

ノウハウは、ある。

きっちりメモに取ってきたし、充分な準備と対策もしてきた。

自分がこの先やっていけるかどうかの試金石になる迷宮だ。



(やってやる)



ケンジーの初めての迷宮探索が始まった。


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