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異世界料理バトル  作者: 東国不動
第三章「風雲の料理人ギルドランク試験編」
64/99

61 ハヤト覚醒!?

更新遅れて本当に申し訳ないです。

異世界料理バトルも4月末に2巻が出ます。

 昼食を食べた後、ハヤトとブラックアイスは、あの子牛を撫でに来ていた。

 ハヤトがふと問う。


「なあ、その子牛、なんていう名前か知ってるか?」

「子牛の名前? さあ……知らない……」

「やっぱりか。呼びかけないからそう思ってさ」

「う……」


 毎日のように来ているブラックアイスも名前を知らなかった。

 なんだかブラックアイスが可哀想に思ったハヤトはある提案をした。


「なら俺たちでこの子牛に名前をつけないか?」

「え!?」


 マスクの奥から、小さな子供のようにブラックアイスが目を輝かせる。


「でもオジサンが名前つけてるだろう?」

「いいじゃんか。別に。名前が二つあったってさ」

「そ、そうか。そうなのかもしれんな」

「どんな名前がいいかなあ? お前なんか候補ある?」

「す、すまん。私は料理のこと意外はなにも。牛はどんな名前が多いのだろうな」

「俺の遠い故郷だと……」

「ハヤトの故郷……」


 ブラックアイスはある事情から、ハヤトの故郷は戦争で滅ぼされた国だと思っている。


「私も……故郷は知らないんだ」


 しかし、ハヤトはブラックアイスの告白を聞いていなかった。


「俺の故郷ではなぜか雄牛はタロウとか雌牛はハナコが多いんだよな。でもイリースで多い名前はなんだろ?」

「! ハヤトの故郷ではハナコって言うのか? いいじゃないか!」

「そ、そうか?」


ハヤトはちょっと格好悪いかと思ったが……。


「ハナコ、ハナコ」


 既にブラックアイスはハナコ、ハナコと頻りに呼びかけていた。

 雌牛も呼びかけられる度にモーモーと鳴き、返事をしているようだった。


「よしよし、ハナコ、可愛いな」


 雌牛と戯れるブラックアイスを眺めながら、ハヤトはビッテンの話を思い出す。

 裏料理人ギルドを勝たせないためにブラックアイスの対戦者であるチキータに投票しろという提案だ。


「ブラックアイス」

「ん? なんだ? ハヤト」


 ハナコを撫でながら満面の笑みを返す、ブラックアイス。

 だが、ハヤトの顔は真剣そのものだった。


「俺、次の勝負は勝つよ」

「う、うん。当然だろ? ハヤト大丈夫か?」


 ロウとの戦いに勝ち上がって、チキータとブラックアイスの料理バトルは、ちゃんと料理の美味さで投票するとハヤトは決心するのだった。


◆◆◆


ついにAリーグ最終試合、ハヤトとロウの対決の日がやってきた。

今日のハヤトは勝つという意志を持って会場に入ってきた。それは気迫となって会場の料理人たちにも伝わったようだ。

各地の料理人ギルド支部から集まった幹部たちが、自分の弟子や会場の運営委員にハヤトについて尋ねる。


「イリースの神殿が魔王に対抗するために呼び寄せた救世主の一人らしいです」

「なんでも適職が戦闘に適した職業ではなく、われわれと同じ料理人だったとか」

「S級で王宮料理人のアンドレ氏を料理バトルで負かしたこともあるらしいです」


 だがハヤトの耳には彼らの言葉は入っていなかった。

 ハヤトはまっすぐにロウのもとへ向かい、彼女の前に立った。

 料理バトルの条件はデスバッファローを使った料理ともう決めてある。今から対戦する相手と話し合う必要はないはずだった。


「ロウ。お前はやはり勝ち上がったら、ビッテンさんが言うように料理の味に関係なくチキータに投票するのか?」


 ハヤトはロウにしか届かない小さな声で、しかしハッキリと聞いた。ビッテンの提案に乗るのか試合の前に確認したのだ。


「……いまだ決めてはいないが、チキータに投票すると言ったらどうする?」


 ロウは不敵に笑う。

 しかし、もうハヤトは、笑顔から見えるロウの牙を恐れなかった。


「そうか。なら俺が勝つよ」

「むっ、試合はまだはじまってないんじゃぞ」

「西、ジンを頼む」


ハヤトはもうロウとは話さずに助手として一緒に来た西と会場を出ていった。


「なんなんだ。私だってもやもやしてるんじゃ」


 会場に残されたロウは独りごちて料理の下ごしらえをはじめた。


◆◆◆


 約三時間後、ハヤトは西が召喚したジンの背に乗って会場に戻ってきた。

 その背には牛型の魔物、巨大なデスバッファローも乗っていた。


「そ、そのデスバッファローは?」


 ロウが驚いてハヤトにたずねる。


「西と狩ってきたデスバッファローさ」

「なるほど。会場のデスバッファローの肉ではなく、最上のデスバッファローを使って有利になろうと言うんじゃな」

「いや、そういうわけじゃない」


 ハヤトは闘厨場の床に置かれたデスバッファローを出刃包丁で縦に真っ二つにした。


「なっ、なにー!?」


 その光景に会場がどよめき立つ。

 いつも気だるそうにしている西も目を見開いた。


「ハヤト、弱いのに包丁捌きは凄いのな」

「死んでいる魔物なら食材ってことになるらしいぜ。食材なら〝料理人のスキル〟でこんなもんよ」

「お前の料理人のスキルってレベル的にはどんなもんなの?」

「さあ? 普通じゃないのか?」

「普通……ってこともないと思うけどな」

「そうか?」


 さすがの西もいつものように皮肉が出てこない。


「ああ、いくら死んだデスバッファローとはいえ、まるで勇者の清田が聖剣で真っ二つにしたみたいじゃんか」

「そんなことより」


ハヤトはロウの前に行き、デスバッファローを指差した。


「食材でお前に有利に立とうとは思ったわけじゃないぜ。ピッタリ半分にしたから使えよ。高級食材のデスバッファローのなかでも最高のものだ」

「ハッ……ハハハ。このパフォーマンスはそういうことじゃったんか。たまげたわ」


 ロウはやはり笑うしかなかった。


◆◆◆


 ハリーとビッテンはそれを観覧席で見ていた。


「ハハハ。あれで普通か。俺の料理スキルではとてもああはいかないぜ」

「さすがはビッテンさんですね。よく笑えます。私は……ハヤトくんの才能に冷や汗が流れましたよ」


一見、豪快に笑っていたビッテンが、ハリーに手のひらを見せた。


「俺もだよ……手がビチョビチョだ。俺は手に汗を握るタイプなんだ。まったく今年の受験者はどうなってるんだよ」

「私たちは少し心配をしすぎなのかもしれないですよ」


ハリーは、ビッテンが画策している裏の料理人ギルドに対しての工作について言ったのだ。

ビッテンが真面目な顔でハリーのほうを向いた。

そのハリーは笑顔だった。


「若い料理人は育っています。彼らは必ずや料理の正道を貫いてくれることでしょう」

「フフッ。かもしれねーな」


 そう答えたビッテンの目は、鍋を振るうハヤトの姿を見ていた。

賢者の転生実験2が3月末に

異世界料理バトル2が4月末に発売します。

よろしくお願いします!

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