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異世界料理バトル  作者: 東国不動
第三章「風雲の料理人ギルドランク試験編」
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50 料理人ギルドの幹部

 会場の闘厨場に残った対戦者はオーベルンだけとなった。

 イリース水牛の肉は闘厨場に豊富に取り揃えてある。

 だからオーベルンとその助手だけが、ここに残ってイリース水牛の下ごしらえをしていた。

 ハルトラインとロウは魔物を食材に使ったサラダという条件がある。闘厨場でも魔物食材は置いてあるが、数はも質も少ない。

 二人は魔物を求めに市場や街の外に向かった。

 ブラックアイスは肉用種として肉質の良さで有名なイリース水牛の肉を使わず、牛乳を使うという。

 闘厨場にも食材として牛乳は用意してあるあるが、それは乳用種のものだった。

 だからイリース水牛の乳を求め、ブラックアイスも会場を出ていった。

 もちろんハヤトが教えた牧場のイリース水牛の乳は質が良いこともあるだろう。

 料理の判定は日没だ。

 基本的にやることのないハヤトとチキータは観戦席に座ってオーベルンの調理姿をぼーっと眺めていた。


「ねえハヤト。ブラックアイスと行った牧場って、ひょっとしてイリース水牛の牧場?」

「ああ」


 イリース水牛はこの地方の名産なので必然的に牧場の数は多い。


「そっか。牧場でなにしたの?」

「なにをしたかって……牧場の仕事を少しだけ手伝って牛を愛でただけだよ」

「やっぱデートみたい」

「いや違うって……でもさ。アイツは孤児でさ。子供のころからどっかのギルドで料理の修行ばっかりしてたみたいだぜ。それで牧場がだいぶ楽しかったみたいだよ」

「子供のころからギルドで料理の修行ばかり……それってひょっとして」

「ん? どこのギルドか知ってんのか? 偉いよな。孤児を育てて手に職をつけさせようとか。しかも、その職業が料理人っていうところがまた偉いぜ!」


 ハヤトは頻りに感心している。


「偉くないよ。そのギルドって」

「え? 偉くね?」

「い、いや……そうかもしれないね。私も噂でしか聞いたことがないし、別のギルドかもしれないし」

「?」


 チキータがなにを言おうとしているのか、ハヤトにはわからなかった。


「まあよ。とにかくアイツは牧場の子牛が凄く気に入って、ずっと撫でてたな。ひょっとすると……それで肉を使いたくなかったのかも」


 チキータが怒ったように反論した。


「そんなわけないじゃない。牛肉を使うと可哀想なんて言ってたら料理人になれないよ」

「いやまあ……そうかもしれないけどな。アイツは凄く可愛がっていたから」


 ハヤトはチキータが見ていないブラックアイスの一面を知っているし、チキータはハヤトが聞いていないバーン世界の料理界の噂を知っている。

 二人の意見には微妙に食い違いがあった。


「そうだ!」

「ん?」


 ハヤトが急に声を上げる。

 こんな時は二人で美味しいものでも食べるに限る。ちょうど時間はお昼時だった。

 ハヤトがスタジアムの観戦席のほうに走る。そこにはギルドの幹部たちがいた。


「あのーすいませーん。会場の調理場と多めにある食材を使ってお昼ごはんを食ってもいいですかね。ちゃんと片付けますから」

「は?」


 ギルドの幹部たちは面食らうが、しばらくすると怒鳴りだした。


「アホか! ダメに決まっているだろう!」

「ええ? なんで?」

「お前は今日、対戦者ではないだろう。大人しく見学してろ。昼飯が食いたいなら外に行け、外に!」

「なんでだよ。調理するための竃も食材もこんなにあるんだから別にいいじゃんかよ」

「ダメだ!!! 失格にするぞ!」


 失格という言葉を聞いて、チキータが慌てて止めた。


「ちょっ、ちょっとハヤト。す、すいません。私たちは外でご飯食べてきますから」

「ええ? ここで食おうぜ。チキータにめっちゃ美味いもん作ってやるよ。チキータもなんか作ってよ」


 そのやり取りを聞いていた幹部の一人が大声で笑った。


「ハハハ。君が噂のハヤトくんか。面白いね。いいよいいよ。作りたまえ」


 見ると赤髪オールバックの大柄の男性だった。


「お、ありがとうございます。いやー話がわかる人もいますね」

「でも一つだけ条件を」

「条件?」


 条件と聞いたハヤトが、しかめっ面をした。


「私の分も作ってくれないだろうか?」


 ハヤトの表情は一変して、笑顔になった。


「ああ、条件ってそんなことか! もちろんいいですよ」


◆◆◆


 ハヤトとチキータと赤髪オールバックの幹部の前に料理が並ぶ。


「さすがに美味しそうだね。見たこともない料理だよ」

「それは餃子っていうんです。そっちは中華丼で、付け合せのスープはチキータが作ってくれました」


 ハヤトは幹部に料理の説明をする。

 幹部もそれを楽しそうに聞いていた。


「では餃子とやらから一つ……ほう……美味いね」

「そうですか! ありがとうございます」


 喜ぶハヤトにチキータが耳打ちする。


「この人、多分ビッテンって人だよ」

「ビッテン? どこかで聞いたような?」

「チェーン店を持っている人で、セビリダの料理人ギルド本部でも影響力が大きいらしいよ」

「へ~、そうなんだ。結構すごい人?」


 ハヤトもどこかでその名前を聞いたような気がするが思い出せない。


「ハハハ。自己紹介をしようと思っていたのだが、そこのチキータさんに全部説明をされてしまったようだね。私はビッテンという。凄い人ではないけどな」


 料理人ギルドの幹部にも、こんな人がいるんだなと感心するハヤトだった。

しばらく異世界料理バトルを一日、二回更新したいと思います。

一巻が好評発売中です。

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