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異世界料理バトル  作者: 東国不動
第三章「風雲の料理人ギルドランク試験編」
47/99

45 エルフ合コン 中編

『異世界料理バトル』の第一巻が発売されました!

もしよろしけれ是非、店頭でお手にとってください。

 ハヤトが言おうとしたことは代わりに赤原が言った。


「変じゃない! 変じゃない! スゲー似合ってるよ。さあこっちに座ってくれ」

 

赤原は六人がけのテーブル席の椅子を引いた。


「よかった。人間の服屋に行って、似合うものが欲しいと頼んだんだ」

「ディートの服選びは本当に長かったからねぇ~」

「こら! 内緒って言ったでしょ!」


 ディートをちゃかしたエルフは、エルミア、ララノアと名乗った。

 ハヤトの予想通り、やはりディートの料理をサポートしていたエルフらしい。

 エルミアとララノアが教えてくれた。


「私たちはエルフで全員、適職が『料理人』なんだ~」

「故郷に帰る前にハヤトの店でご飯を食べたいねって話になったんだけど」

「夜の予約はなかなか取れないと聞いて、仕方ないから三人でランチタイムに行こって」

「そしたらアカハラさんが、この店なら俺のコネで予約を取れるぞって」


 赤原が笑いながら胸を張った。ハヤトは少し頭に来る。


「アカハラ! 勝手なこと言うんじゃねえよ!」

「ごめん。迷惑だった?」


 ディートが申し訳なさそうにする。


「あ……いや……全然、迷惑じゃないよ」

「よかった」


 ディートとハヤトのやり取りを見て、またエルミア、ララノアがちゃかした。


「ディートはディナーに来れるだけじゃなくて、ハヤトと食べられるってすっごい喜んでたんだよ」

「そうそう。それで服選ぶのがながーくなっちゃったんだよね。店員さんに人間みたいに可愛くしてくれって」

「え? マジ? そうなの?」


 ハヤトが少し驚いていると、ディートが赤い顔で言い訳をした。


「ハ、ハヤトだってエルフの国に来たら、私の店に来てみたいと思うだろう? そ、それだけだ。別に他意はない!」

「ああ。確かにそうだ。そりゃ行きたい」


 ハヤトは本心からそう言っている。


「ホントか!? ぜひ、来てくれ!!! あ、……あぅ……」


 エルミアとララノアはそのやり取りを見て楽しそうに笑っていた。

 一方、赤原と吉田は不機嫌だった。

 ディートは赤い顔をしている。ハヤトはディートの山菜料理に思いを馳せて口の端を光らせていた。

 まだちぐはぐな六人だった。


「ハヤト! 飲み物とか飯はどうなってるんだ!」

「あ、忘れてた。ルシアさーん。お願いしま~す」


 ハヤトがルシアに飲み物と料理を持ってきてくれるように頼む。

 最初に出てきたのは飲み物とサラダだった。

 エルフの料理人たちは早速サラダの話題で盛り上がった。


「ダイコンの細切りとレタスに梅肉のドレッシングがかけてあるのか」

「サッパリしているし、ドレッシングが滅茶苦茶おいしいね」

「上にかけてある黒いのは?」


 ハヤトも料理の話は大好きだ。


「これはイリース南部で取れる海苔を集めて乾燥させたものなんだ。俺が漁師さんに頼んで作ってもらったんだよ」


 バーン世界でも生海苔は食べられているが、いわゆる板海苔はなかった。食の知識だけは豊富なハヤトが、漁師に作り方を教えて板海苔を生産したのだ。

 バーンには冷蔵設備がないので腐らない板海苔はかなり感謝された。どうやら漁港の名産の一つにしたいらしい。

 ハヤトがそんな話をするとエルフたちは興味深そうに聞いていた。

 しかし赤原と吉田は、その話にまったく参加できない。ハヤトだけが楽しく会話をし、しかも持ち上げられている。赤原はなんとか参加しようとして口を滑らせてしまう。


「俺たちの世界には、この世界にはない料理がいくらでもあるんですよ」


 エルフは一斉に「は?」という顔をした。

 吉田が赤原に馬鹿という顔をする。


「あ……やべっ。いやその……」


 赤原がなにか言い訳をして取り繕おうとすると。


「そうなんだよ! 実は俺、日本っていう別の世界にいたんだけどさ。そこにはバーンにはないいろんな料理があって」


 ハヤトは日本の美味い料理について隠さずに話す。

しかし、それを説明するには、自分たちが日本から召喚されたことも話さなければならない。

 赤原と吉田は顔を見合わせて、コソコソと打ち合わせる。


「コレって言っていいのか?」

「いやダメかと思っていたけど……でもよく考えたらダメだとも言われてないしな……」

 相変わらずエルフたちとハヤトは、料理の話で盛り上がっている。

「人間の一部の奴らは俺たちを異世界からの救世主とか言っているし、周知の事実なんじゃないの?」

「でもエルフは知らないだろう」


 不思議なことにエルフたちはハヤトの話を素直に受け入れていた。どうやら料理人として、ハヤトの料理はバーン世界にはない料理体系ということがわかったようだ。

 変わった料理が存在するという不思議と、異世界を跳躍するという不思議を天秤にかけると、彼女たちにとっては異世界跳躍のほうが不思議ではないのかもしれない。

 それでも吉田にはわからないことがあった。


「しかしハヤトの奴はどうして自分の料理の秘密を簡単に話してしまうんだろうか?」


 赤原が笑う。


「ハヤトは自分に有利だからと料理についてなにか隠したりするような奴じゃないんだろ。なら俺らも乗っかったほうが得だ。日本の食いもんの話でもしようぜ」

「なるほどな。そうしよう!」


 赤原や吉田は日本の食べ物の話をすることにした。

 二人もエルフという種族は野菜が好きだということぐらいは知っていたので、日本で食べられている野菜の話をすると、スムーズに輪に入ることができた。

 六人全員で盛り上がってきたころ、新しい料理が運ばれてきた。

 いつものレバ刺しとモツ鍋だ。

 赤原と吉田は笑顔を作りながら小声でハヤトに言った。


「ちょっ! せっかく盛り上がってきたのに! なんでレバ刺しにモツ鍋なんだよ!」

「ハヤトだってエルフが野菜ばっか食ってるの知ってるだろ? さっきのサラダまではよかったのによ」

「いやだってモツ鍋にはキャベツ入ってるじゃん。異世界ではベーキャーって言うらしいけどさ」

「呼び方なんてどうでもいいわ!」

「野菜が好きイコール肉は嫌いだろ! ボケ!」

「いや俺だって一応考えてメニューを作ったんだぜ……」

「うるせえアホ!」

「この料理バカ!」


 赤原と吉田は小声のつもりだが、エルフたちには丸聞こえだった。

 ディートはやや怒った口調で言った。


「私たちは別に肉も食べるし嫌いじゃないぞ。確かにエルフの中には野菜ばかり食べている者もいるが」


 赤原と吉田がディートに向き直る。


「え? そうなの?」

「いやてっきり野菜ばっかりなのかと……」


 ハヤトがモツ鍋とレバ刺しを出した理由を話した。


「試験で判定をしていた時にディートが肉も食べてたから、エルフが野菜好きだったとしてもそれ以外も食べるってことは知ってたんだよね」


 ディートが笑う。


「フフフ。そうだったんだ。でも本人が来るとは思わなかったよね」

「いやビックリしたぜ。まあとにかくさ。俺は野菜以外も食べるって知ってたんだけど、野菜好きでも好きなんじゃないかなと思った珍しい肉料理を用意したんだ」


 赤原と吉田は同時に思った。それがこのレバ刺しとモツ鍋なのか? と。

 確かにバーンにはない料理という意味では珍しくはあるだろうけれども、野菜好きの亜人が好みそうな肉料理とは二人には到底、思えなかった。

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