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異世界料理バトル  作者: 東国不動
第三章「風雲の料理人ギルドランク試験編」
46/99

44 エルフ合コン 前編

『異世界料理バトル』の正式発売日です!

もしよろしけれ是非、店頭でお手にとってください。

「バランス悪くね?」


 ランチタイムにハヤトの店に入ってきた赤原の第一声だった。

 国境に駐屯している救世主たち、つまりハヤトのクラスメートたちは駐屯が長引いているために半数での交代制となっている。 

 赤原が言いたいのはその人選のバランスらしい。赤原の駐屯中は、清田という総合力で明らかに最強の人物に加えて、西という魔法のスペシャリストもいない。

 代わりに汎用性のない時魔術士の時田など足を引っ張るメンツが多くて、壁役の赤原は八面六臂の活躍だったという。


「ダークエルフは大人しいもんだったのに、時田が駐屯先でオーガチャンピオンの巣穴を掘り起こしたり、リザードマンの集落に紛れ込んだり、古城に大人しくしていたバンパイアロードの棺を開けたり……」

「それは、お疲れ様だな……」

「怪我を治してもらおうにも、佐藤までいないときた」


 赤原にとってはそれが一番重要なのだろう。怪我の治療は赤原と佐藤が唯一、素直になれる時間なのだ。

 赤原が苦労していた時、ハヤトは腕の治療をしてもらっていた。

 ハヤトは赤原も佐藤がいなくて寂しいんだな、と優しい気持ちになる。こんぐらいの愚痴なら聞いてやってもいいかと。

しかし、赤原の次の一言で、その気持ちは銀河の彼方へ吹っ飛んでいった。


「だからさ。今度この店を合コンの会場に使わせてよ」

「はあ?」


 ハヤトの店はどちらかと言えば、大衆食堂という感じだった。

 しかし、ルシアという女性を雇ってからは、週に何度か、夜は雰囲気のよいダイニングバーとして営業している。ルシアはそのバーのマスターを任されていたしている。


「いや実はさ。エルフのお姉さんと知り合いになって。飲み会をするならお前の店でやりたいってご指名なんだ。なかなか予約取れないだろ?」


 エルフは金髪碧眼で美男美女ばかりだ。ダークエルフは人間に敵対的だが、エルフは人間と友好的だ。

 しかし人間が、エルフから恋愛的な意味で好かれることはほとんどない。セビリダにはエルフも住んでいるし、交易もしている。人間との交流も多いが、ハーフエルフはほとんどいないことがそれを示していた。


「佐藤がいないからって……俺の優しい気持ちを返してくれ……」

「ハヤトも参加していいからよ。エルフたちは三人来るらしい。誰か呼んで3:3でどうよ」

「いや、俺はいいよ。なんていうか……その……ユミもいるし」


 ハヤトが断ろうとすると、色気あふれるルシアが口を挟んだ。


「あら。たまにはいいんじゃなくて。別に皆でお酒を飲むぐらい。店長はお堅いですよ」

「そ、そうっすか?」

「やっぱりルシアさんは話がわかる! 大人の女性だ!」

「私、店長や赤原くんとそんなに年変わらないわよ?」

「……え?」


 ハヤトは知っていた。裏にキスマークをつけてきた履歴書には18歳と書いてあったのだ。

 ルシアはどう見ても25歳ぐらいの色っぽいお姉さんにしか見えない。あの赤原にすら勘違いさせるんだから大したものだ。女性の年は見た目ではわからないとハヤトは思う。

 彼女の服の胸の部分はいつもはち切れそうである。ちなみに仕事ぶりは真面目だった。


「でももう一人は誰にするんだよ?」

「エルフだぞ。クラスの奴らに声をかければ誰でも……」

「僕、僕! 僕にして!」

「「僕?」」


 ハヤトと赤原が振り向くと、クラスメートの吉田が肉野菜定食を食べていた。


◆◆◆


 エルフとの飲み会(合コン?)の当日になった。エルフたちが来る前に三人は集まっていた。吉田が先に集まろうと提案したのだ。

 ハヤトも赤原もその理由はなんとなく気がついていた。


「本日の作戦会議に入る」


 吉田はテーブルに作戦書を広げた。そこには『エルフ攻略作戦』と書いてある。

 作戦書には様々な状況に適応した作戦パターンが、①から⑩まであった。

 吉田の適性職業は『軍師』だ。


「まずハヤトと赤原に覚えてもらいたいのが、攻略対象者を決めるサインだ」


 ちなみに適職が『軍師』の者は身体能力も魔法能力も低い。

 作戦立案能力を活かす職業だが、クラスメートは基本、脳筋が多いので誰も彼の指示に従わない。

 そもそも吉田の作戦はいつも成功するか疑わしいものばかりだった。現に今も。


「アホかー! 童貞の考えた合コンの攻略作戦なんて意味あるかー!」

「あ~~~! 寝ないで考えてきたのに~!」


 赤原は『エルフ攻略作戦』をビリビリと破り捨てた。

ハヤトはユミに友達と食事をするだけだと言ってここに参加している。本当に赤原に付き合うだけのつもりだった。


「俺は別にエルフなんか狙ってないし、作戦なんていらないよ。それに複雑すぎるだろ……覚えきれないよ」


 そもそもエルフは冷たい印象が強い。それほどコミュ能力が高いわけではないハヤトは、エルフとどう話していいかなど想像もつかない。


「でもまあウチの店にどうしても来たいって話なら……」


 きっと食やお店に関心の強いエルフたちなんだろう。ハヤトはそこから話を盛り上げようとしていた。結論としてそれは〝アタリ〟だった。

 カランコローン。

 ドアベルの音が鳴って、三人のエルフが入ってきた。

 ハヤトのイメージと違って、そのエルフたちからは冷たい印象を感じなかった。


「こんばんは」


 ハヤトにとってエルフと言えば、冒険者のような男装をしていつもツンとしている山菜料理のディートのイメージだった。

 三人とも美人であったが、そのなかの一人は誰もが目を引くほど美しかった。しかも美しいだけではない。

 素材は異世界のものだが、日本で言うところの白いウール製のカーディガンの下に黒いレースのワンピースを着ていた。

 ワンピースのスカートは上品な程度に丈が短く、裾にわずかにフリルもついていた。

顔立ちはシャープな美人だが、やわらかい笑顔が優しげでそれを感じさせない。


「あ、ああ! よく来てくれたね。席はこっちだ。どうぞどうぞ」


 百戦錬磨の赤原ですら緊張している。軍師様の作戦は完全に机上の空論と化し、油の切れたロボットになっていた。


「セビリダから森に帰る前にハヤトのお店に来れてよかったわ」


 例の一番美しく、しかも可愛らしいエルフがそんなことを言った。

 ハヤトの声が上ずる。


「え? そ、そんなに俺の店に来たかったんですかね? 俺ってそんなに有名なの?」

「有名ではあるけれど、ひょっとしてハヤト……気がついてないのか?」


 そのエルフは少し俯いて恥ずかしそうに言った。


「私だよ……お前と戦ったディートだよ! そんなに変か? オシャレをしてきたのだけど」

「え? ええええええええ!」


 ハヤトは目の前のエルフの顔をよく見る。


「ディートだ……」

「マジだ」


 赤原も試験会場に行っていたので、ハヤトほどではないがディートを見ていた。

 というか、声をかけて誘った時も気がつかなかったらしい。それほど試験会場のディートとは雰囲気が違っていた。


「だからそう言ってるだろうに! やっぱり変なのか……」


 もちろん変ではない。だが恥ずかしくて可愛いとは言えないハヤトだった。

ここまでこれたのも皆様のおかげです。

感想等ありましたらよろしくお願いします!

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