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異世界料理バトル  作者: 東国不動
第三章「風雲の料理人ギルドランク試験編」
40/99

38 ブラックアイスの休日 中編

12月28日に第一巻が発売されます。よろしくお願い申し上げます。

スマホのアプリゲームをアンドロイド版からリリースしました。

詳しくは一番下の画像をクリックしてください。

――ハヤトとブラックアイスが二人でセビリダの街に繰り出した前夜。セビリダの料理人ギルド本部には長老や幹部が集まっていた。


「やはりS級料理人試験に裏が送り込んできた刺客は、ブラックアイスに間違いない」

「間違いないそうだな。第四試合で見せた他の受験者の料理の再現」

「他も見事な料理人だが、格と技量が違うな」


 料理人ギルドの幹部たちは、今日も裏料理人ギルドからの刺客の噂をしていた。


「やはりブラックアイスは、運営権限で落とすしかない」


 発言した幹部はビッテンという名前で、料理店の派閥チェーンを持っていた。そのため、ギルドでの影響力も大きい。

 ギルドの幹部や長老は基本的に揉め事を苦手としているが、ビッテンは穏健派の幹部たちの中では珍しく、派閥のためなら戦う武闘派としても知られていた。


「ちょっ、ちょっと待ってください。なにか正当な理由はあるのですか?」


 ハリーが尋ねた。


「裏料理人というだけで十分だろう」

「証拠はないですよ。もしS級料理人の受験者をそのような理由で落としたら、それこそ裏の料理人を恐れていると思われます」

「甘いぞ。手を打てる時に打たねば」

「ハヤトくんも他の料理人もまだ残っています。信じましょう」

「技量が段違いだ。勝負は見えている!」


 幹部会の意見は二つに分かれた。

 こういう時に意見をうまく誘導するのはエキドナだった。


「少し試験を中断して様子を見ては? 今、イリースと敵対してた隣国も動きを見せたり不穏でしょう? それに裏料理人ギルドが刺客を送ったというのは、あくまで噂なんですから」

「なるほど……」


 根本的な解決にはならないが時間を延ばせば、その間にハリーとしては食帝が帰ってくるという期待があった。食帝ならば、受験者を裏料理人であるという疑いで落とすようなことはしないという期待だ。

 しかしビッテンのほうもまた、ある目論見を持って試験の一時中断を受け入れた。


◆◆◆


「こっちだ。こっちだ」

「ちょっ、ちょっと待て」


 ハヤトが先に行ってブラックアイスを誘うが、なかなかついてこれない。


「早い。待って」

「あ、悪い悪い。速く歩いたつもりはなかったんだけどな」

「人が多くて……」


 ブラックアイスは人波に飲まれていた。

 二人がいるのは、セビリダの中央通りで人通りが多い。


「おいおい。大丈夫かよ」

「なんでこんなに人が多いんだ」

「お前、セビリダの街を歩いたことはなかったのか?」

「試験がはじまる朝と終わった後の夕方にしか動かない。試験の間に支部が宿場を用意してくれたが、そこからも出ないしな」


 そんな黒い格好で夜道を歩いたら逆に危ないだろうとハヤトは思ったが、あえて指摘はしなかった。

 しばらく二人で歩くと、街並みは段々と閑散としだす。街の外に向かっていたからだ。

 バーンの大きな街にはだいたい、魔物に対する防衛や戦争のため街を囲む大きな壁がある。

 ハヤトはそこを出ようとした。


「お、おい。どこに行く。護衛なしで城壁の外に出たら、危険ではないのか?」

「城壁の周りなら平気だよ」

「そうなのか? てっきりモンスターがうようよしているのかと」

「なんだお前。日本人の俺より」

「は? 日本人?」

「あっいや。なんでもないよ。それよりモノを知らないんだな」

「むっ。料理のことなら、お前になどに負けん」


 二人は城壁を出て街道を歩く。いつしか牧草が綺麗に刈り込まれた丘陵地帯に辿り着いた。イリース国の名産の水牛がゆったりと歩いている。


「どうよ!?」

「どうよってイリース水牛だな」

「いやそうじゃなくてこの景色がさあ」

「景色?」


 ブラックアイスはキョロキョロと辺りを見る。空は青く晴れ渡って、白い雲が少しだけ浮かんでいた。丘陵は牧草で緑々としている。


「なんだか太陽の光が眩しいけど」

「おい。なんだよ。この素晴らしい景色がわからないのか? まさにスローライフだろうに。と思ったけど、このバーン世界はこんなところばっかりで珍しくもないのかな? 日本とは違うのかもな」

「あ、いや……私は地下で料理ばかりしていたから外に出たことがなくて。牧場で歩いている牛を見たのは初めてだ」

「え? そうなのか。料理人たるもの自分が使う食材の生産現場には足を運ぶもんだぜ」

「そうか。役割が分担されていてな。知識としては知っていたが、私には食材を用意してくれる担当がいた」

「そういうのがよくない。足を使おうぜ」

「なるほど。参考になる」


 二人がそんなことを話しながらさらに少し歩くと、ログハウスが見えてきた。

 ドアの前でハヤトが叫ぶ。


「おっちゃーん。いる?」

「お~ハヤトか。牛乳かチーズでも切れたか?」

「いや牛を見に来たんだよ」

「またか。まあ構わんけど手伝ってもらうぞ」

「おう!」

「じゃあ牧草撒きからお願いしようかな。それが終わったら柵が壊れてないかチェックをしてくれ」

「わかった」


 ハヤトはそう返事をすると、近くにあった小屋から牧草の束を両手で運びだした。そしてその場に突っ立っていたブラックアイスを見た。


「お前、なにしてるの? お前も小屋から牧草持ってついてこいよ」

「え? 私もそれを運ぶのか?」

次回は0:01頃に更新する予定です。

アプリゲームのモンスター斬もよろしく。

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