俺と蟹
翌日、俺はまだ痛みを伴う左足を引きずりながら図書館を歩いていた。
左足の事を美月に聞かれたが階段から落ちたと誤魔化した。
図書館で縁切り身切りについて調べたが何も見つからない。
てなわけでまた夜。
夜一時、蟹があらわれた。
俺は用意していたバットを蟹に向けて振り下ろす。
蟹はよけ、俺は振り下ろす、攻防が数回続いた後に蟹は美月の上に乗った。
「……….…」
硬直状態が数分続いた後あの白猫があらわれた。
「キュー」
昨日と違い蟹は動じない、それどころか敵対心丸出しで白猫に襲いかかった。
猫は華麗によけ続ける、蟹は諦めたのか俺に襲いかかってきた。
俺はよけ切れず次は右腕を切られた。
「がぁ……」
叫びかけて口を抑える、美月を起こしてはいけない。
そう考えてる隙に左足を切られた。
「……!?」
昨日とは比べものにならない激痛がはしった。
もはや声が出ない、痛みが止まらない。
「シュウウ」
蟹はよくわからない音を上げて消えていった。
「なんで……」
理由はすぐにわかった、美月が起きた。
「ん……多助?……多助!」
うずくまっている俺を見て美月が叫ぶ。
「どうしたの! 何が……」
美月にばれてしまったようだ。
「……やられちゃった」
「やられちゃったじゃない! 大丈夫じゃない!」
「……今は寝させてくれ」
「でも病院……」
俺は片足で立ち上がって
「やられたのは腕と足だ、病院には明日行く」
「…………」
少し間を開けて美月は俺をベッドに寝かせた。
「…………」
「…………あの」
俺の言葉に美月が首を傾げる
「眠りづらいのですが」
「……え?」
「いや、そんな見られても」
「だって私一度起きたら中々寝れないから」
「それは知ってるけどさ」
「おやすみ」
「…………」
一言で会話を終わらされた。