蟹と白猫
掃除も終わり帰ることになった。
男性が箒を片づけながら俺と美月を見て
「ありがとよ……で、そちらの可愛いのはどちらさん?」
言われた瞬間美月は神社から泣きそうな顔をしながら走り去った。
そう、美月と男性の縁は繋がった瞬間に切られたんだ。
「美月!」
俺は美月を追いかける。
数分で美月に追いついた。
「美月……」
「……もう人に会いたくない」
「………とりあえず家に戻ろう」
美月はゆっくりと頷いた。
「蟹……縁切り……身切り」
疲れたのか寝てしまった美月の方を見る、蟹の影は見えない。
俺はパソコンで縁切り身切りの事を調べた、わかったのは夜に力が少し弱くなり見えるようになるって事だけだった。
「夜か……」
俺はその日の夜、美月を監視することにした。
夜の一時頃、美月の上に蟹があらわれた。
「…………」
俺は恐る恐る手を伸ばして……
「やっ!」
蟹の足を掴んだ。
その瞬間蟹の黒い影は無くなり蟹の姿が完全にあらわれた。
普通の蟹より明らかに長い足に特徴的なハサミ、右は小さく左は大きい。
わけのわからない音を発しながら蟹が突っ込んできた。
なんとか蟹を避けて無駄に長い足を掴んで窓から投げた。
蟹に重さはほとんど無く簡単に投げれた、しかし蟹は他の足で俺を掴んだ。
明らかに重い俺の方に蟹が来るかと思ったが違った、何故か俺が蟹に引っ張られる形となって蟹と俺は窓から落ちた。
「ぐっ……」
背中から叩きつけられて肺の空気が一気に無くなる。
動けずにいた俺の上に蟹がのった。
「…………」
声がでない、息をするのでやっとだ、重くないはずの蟹が重い、物理的な重さではなく凄まじい重圧がかかる。
「あ……ぐっ……」
蟹は俺の首に小さいハサミを近づけて来る。
身をよじるが状況は変わらない。
ハサミは首の横を切ろうとした、美月と俺の縁となる線を切ろうとしているのだ。
切ろうとするたびに白い影があらわれ蟹を止める。
蟹は諦めたのか大きいハサミで俺の左足を切った。
血はでない、傷もない、しかし激痛がはしる。
蟹は止まる事なくハサミを右足に向ける。
その瞬間に白い影が蟹を突き飛ばした。
月光に照らされて白い影が全体をあらわし白い影が無くなった。
「お前……」
そこにいたのは神社で俺に本を渡した白猫だった。
「ニャー」
猫は背中を伸ばして蟹を見た、蟹はひっくりかえってもがいている。
猫は狼の遠吠えのような体制で
「キュィィィィィ」
不思議な声を出した。
猫とは思えない声を出した白猫を恐れたのか蟹は消えてしまった。