蟹の妖怪
時刻は午前一時、全然寝れません。
美月は大体十一時半時頃に寝息をたてている。
これまで約三回美月が落ちてきそうになったが全力で止めた。
そんなアニメみたいな展開に俺の理性が保てる気がしない。
まあそんなわけで起きていた俺は美月の上に何か黒い影があるのを見つけた。
その影は何度も俺と美月の間にある何かの線を何度も切ろうとしては白い影に邪魔されている。
影をよく見てみるとそれは
「蟹……か?」
影は蟹の形をしていた、一方の白い影は今だ尻尾のような部分しか見えない。
「聞いてみる必要がありそうだな」
俺は呟いて眠りに……
「うおっ、な……何回落ちかけるんだよ美月」
つけなかった。
翌日、てか朝。
朝食を食べている時に俺は美月に聞いた。
「美月、最近蟹にあったりしたか?」
美月は少し考えて
「うん、挟まれた」
「そうか……」
「どうしたの?」
「いや、もしかしたらさ、ぺんたちころおやしと同じなんじゃないかと思って」
「どういう事?」
「ぺんたちころおやしにはカラスに襲われて憑かれた、なら今回は蟹の妖怪に憑かれたんじゃないか?」
「……蟹坊主とか?」
「蟹坊主なぁ……」
「ねぇ多助、今日って用事ある?」
「いや……ないな」
家族で出かけるはずだったがこんな事態だしパスだ。
「じゃあさ、一日早いけど神社の掃除に行かない?」
「いいよ、昼になったらいこうか」
「うん」
昼、俺と美月は音子神社にいた、琴花が治めている神社だ。
神社にはいつも通り猫が多い、神社はほとんど手入れされておらずなんとなく俺達は掃除しようと考えた。
「美月そっち頼むな」
「うん」
しばらく掃除をしているとチャラそうな男性が神社に入ってきた。
「…………」
「…………」
男性と目があう、何か睨まれてる?
「おい、あんた……あんたら誰だ」
男性は見た目通りの強い声で俺達に向かって睨みながら言った。
「……多助」
美月が俺の服を握る、美月はそうとう弱ってるようだ……
「誰だって聞いてんだ」
俺は少し考えて
「少しここには思い出があるので掃除をしようと思って……」
「……なんだ、そうか」
男性の顔が緩んだ、俺の肩をバシバシ叩きながら
「そりゃあすまねぇ、疑っちまって」
「……あの」
「ああ、俺はここの新しい管理人だ」
「そうなんですか」
美月が俺の後ろから出てきた
「ああ、親父が死んでから長いことたってんだけどよ、まあ色々あって放ったらかしになってこのザマだ、ありがたいや」
「……はあ」
そんなわけで三人で掃除を始めて数分後、美月が周りを見渡しながら
「猫、いなくなったね」
俺と男性も辺りを見渡す
「確かにいないな」
「おめぇら見てみろ一匹だけいるぞ」
男性が指差したのは屋根の上、俺が始めて琴花を見た場所に白い猫がいた。
「……琴花か?」
俺が呼びかけても白猫は反応しない、琴花に毛並みが似ているが違うようだ
「きんかって……なんか聞いた事あんだけどな……何だ?」
「えっと、ここにいる守り神みたいな奴です」
「守り神……ああ、思い出した、確かにここにいる猫神の名前は琴花とかいう猫又だったな、おめぇら知ってたのか」
そんな事を話していると近くにある納屋から何かが崩れ落ちたような凄まじい音が聞こえた。
「何だってんだぁ?」
俺達が納屋に入るといたのはさっきの白猫、口に一冊の本の栞部分をくわえている。
「てめぇかこの白猫」
男性が呟きながら散らばっている本の整理を始める。
手伝おうとした瞬間白猫が俺の肩に飛びのった、くわえていた本が俺の顔面に直撃する。
「いっつ……なんだよ」
本を持ったままジャンプとは猫は凄い
「にゃー」
猫は何度も俺の顔面に本を当てる
「やめい!」
俺は本を奪った、本の題名は
「妖怪談・蟹」
俺は本を開いた、そこには蟹坊主等の蟹にまつわる妖怪が書かれていた。
「笑み切り……」
本に書いてある妖怪、略称 笑み切り、真名 縁切り身切り。
「縁切り….…」
俺は猫の方を見た
「……あれ?」
白猫はいつの間にか姿を消していた。




