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縁切りの蟹

「多助君も無茶するよなぁ」

美月が寝るのを待ってる間、違う部屋で森岡さんは言った

「無茶……ですか?」

「そ、妖怪の対策もせずに生身でたたかうなんて俺にとっちゃあり得ない」

森岡さんは俺の横にいる白猫を指して

「そいつがいないとたぶん死んでたぜ、琴花のやろうに感謝しとくんだな」

「……やっぱりこの白猫は琴花が」

森岡さんは白猫を撫でながら

「そ、琴花が残してったやつだ、ところで琴花のやつ何処行ったんだ?」

「ああ、琴花はぺんたちころ」

森岡さんに止められた、縁切り身切りが出たようだ。

「取り憑くのをやめて貰おうか、縁切り身切りさんよ」

扉を開けた瞬間縁切り身切りは森岡さんに向かってハサミを突き出した。

「きかねっての」

森岡さんは縁切り身切りを虫でも払うように受け流した。

「……確かに縁切り身切りだな、多助君、質問いいかい」

森岡さんは白猫に目で合図をした、白猫が縁切り身切りの周りを音も無く駆け回る。

「渡里さんに縁を切りたいほど嫌いな人はいるかい?」

「……半年くらい前ならいたかもしれません」

半年前、美月の両親が離婚した時、美月は母親と縁を切りたいと思っていたかもしれない。

「半年前か……今は大丈夫なのか?」

俺は頷いた

「ぺんたちころおやしの影響もあって今は大丈夫です」

「なるほど、ぺんたちころおやしが憑いたなら大丈夫だろうな」

森岡さんは頭を掻いて

「ならメンタルケアの方法は無理か」

「え、じゃあどうすれば……」

「実力行使、こっちの力を見せつせて寄り付かなくする」

俺は近くに置いてあったバットを握る

「多助君は何も持たなくていいよ、猫さんよ使命果たしな!」

森岡さんはそう言って俺の背中を押した

「多助君はおとり役な、猫が守ってくれるから命は大丈夫だ」

「え……」

命は……足とかやられるんじゃねぇか!?

必死に避けたりする俺を他所に森岡さんは両端が尖った銀の棒を持っていたポーチから取り出して俺に見せて

「法具の独鈷ってんだ」

「そんなのいいから速くしてくれぇ」

あくまで小さい声で言う。

負傷してる状態のまま蟹に襲われてるこっちの身にもなって欲しい

「へいへいっと」

森岡さんは銀の棒を蟹の甲羅に向かって投げた。

蟹の甲羅が訳のわからない音を出しながら割れていく

「完璧だ、元の場所に帰りな、縁切り身切り」

森岡さんはまるで何かのついでのように軽々しく甲羅から銀の棒を抜いた、蟹は奇声のようなものを上げながら消えていった。

「疲れた、今日は泊まる」

「いいですけどこの部屋では寝かせませんよ」

「襲ったりしねぇよ」

「ともかくダメです、向かいの部屋にしてください、布団もありますし」

「りょうかーい」

森岡さんは気の無い返事をして隣の部屋に行った。


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