妖怪を知る男
「おや、一人なのかい?」
多助の家を出て少し歩いた所で後ろから声をかけられた。
警戒しながら振り向くと男性、音子神社の新しい管理人さんがいた。
「さがしたぜ、渡里さん」
管理人さんは少し笑いながら言った。
「……なんで私の名を?」
管理人さんは言いにくそうに頭を掻きながら
「信じてもらえっかわかんないけどよ、猫に聞いたんだ」
「猫に……ですか、あの……」
「海斗だ、森岡海斗」
「森岡さんは猫と話せるんですか?」
何かおかしい
「あるていど、一定の猫とだけだがな、ところであの多助とか言う彼氏さんはどうした?」
「多助は家です」
何か……何か違和感を感じる
「そうか……まあいいか、この前は手伝いありがとよ」
違和感の正体がわかった
「森岡さん……私が手伝った事覚えてるんですか?」
森岡さんはニヤついて
「やっと気づいたか、その通りだ」
「え……」
「縁切り身切り」
森岡さんは私を見て呟くようにその名を言った
「笑み切りともいうな、始めに縁を切り最後は身を切る、蟹の妖怪」
「……どうして」
「取り憑かれてるんだろ?」
私は気づいた、この人は知ってる。
妖怪の事を、もしかしたら琴花やペンたちころおやしの事もこの人は知っている
森岡さんは続けて言った
「あの白猫の所に案内してくれ」
「白猫?」
森岡さんは少し考えて言った。
「多助君の所に案内してくれ」




