妹
三題噺もどき―はっぴゃくごじゅう。
家の中に、何かを焼く匂いが、漂い始めた。
キッチンでは、使った道具を妹が洗っていた。
「……」
私は、毎日変わらずテレビを見ている。
春休みと言うのは、ホントにやることがなくて嫌になる。
これなら学校に行っている方がましだ……だって考えても見ろ。基本的に平日は、家にいる時間より学校に居る時間の方が長いのだ。寝るためだけに帰ってきているような場所で何をしろと。
「……」
嫌まぁ、やることがないわけではない。
一応、学生の身分ではあるので、勉強でも何でもしていればいいんだけど。
やる気というものが、とことん起きない。
何をしようにも、手を付けようとした直前に辞めてしまう。
「……」
その点、あの妹は、やる気がある。
やる気があると言うと、また語弊がある気がするが……基本的にはやる気がないが、自分がやろう、やりたい、と決めたことに、ちゃんと向き合うし、見ている側からすると、脊髄で動いているのかという程に、フットワークが軽い。
そういうのを見ていると、何もできない自分がつらくなるが、それはまぁ自業自得だし、関係のないことだ。
「……」
どこかに行くとか、旅行に行くとかは、まだしていないけど、そのうちするだろう。
行きたい場所があれば、すぐに母に言って連れて行ってもらっているし、買いたいものがあればすぐに、なんやかんやと言いくるめて買ってもらっている。
口が達者なのだ。
「……」
もう1人の妹は、そんなこともなく。
私と近いと言うか、あの妹はあの妹で、独特と言うか……同じ家に住んでいてもつかみづらいところがなくもない。
「……」
今、キッチンで何かを作っていたのは、フットワークの軽い妹の方だ。
今日は部活が休みだったらしく、朝から家にいた。
たまの休みくらい、休めばいいのに、突然何かしたいと言いだして。
「……」
これが、スマホやゲーム機でもあれば、それに集中するんだろうけど。
我が家は、高校生になってからでないとスマホを与えられない。
一応、ゲーム機はあるんだけど、ソフトをあまり買わないと言うか、買えないと言うかで、飽きたのだと言う。
「……」
それでまぁ、何を始めるのかと思えば。
キッチンに立って、何かを作り始めた。
もともと、料理をすることに興味があって、母の手伝いをしたり、アレを作りたいこれを作りたいと、スイーツを作ったりするのだけど。
「……」
その中でも、本人が気に入っていて、本人もよく食べる、我が家特製のチーズケーキを今は作っていた。もういい匂いがしだしたから、焼き始めていくらかは経っている。
材料が家にあったからよかったものの、なかったらどうするつもりだったんだろう。まぁ、どうせ、自転車に乗って自分で買いに行ったんだろうけど。
「……」
母が作るチーズケーキは、母方の祖母、つまりは母の母に教わったものらしい。
我が家で作る場合は、そのレシピから、かなり砂糖を抜いた上で作っている。
その方がおいしいから。
「……」
そういえば、あの子もチーズケーキが好きだと言っていた気がする。
ケーキをあげるような機会なんてそうないし、一緒に食べることなんてないだろうけど。
そういえば、もうすぐあの子の誕生日が来る。
「……」
さすがに、手作りをあげるのは気が引けるが……先月のホワイトデーのお返しは、市販のものを渡した。作ろうとも思ったが、生憎、私は料理をすることに向いていないので。
それに、美味しいと分かっているものをあげた方が、私はいいと思ったのだ。
「……」
でも、あの子は私よりは甘党よりだからなァ……家のレシピで作ったチーズケーキは違うとなるかもしれない。
学校に近くにケーキ屋さんでもあれば、テスト期間にでも買ってあげたいところだが。
残念ながら少々距離がある。自転車ではケーキを買うのも難しい。
「……」
あーホントに。
あの子に会いたくなってきた。
春休み早く終わらないかな。
お題:つらい・脊髄・チーズケーキ




