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三題噺もどき5

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/02

三題噺もどき―はっぴゃくごじゅう。

 




 家の中に、何かを焼く匂いが、漂い始めた。

 キッチンでは、使った道具を妹が洗っていた。

「……」

 私は、毎日変わらずテレビを見ている。

 春休みと言うのは、ホントにやることがなくて嫌になる。

 これなら学校に行っている方がましだ……だって考えても見ろ。基本的に平日は、家にいる時間より学校に居る時間の方が長いのだ。寝るためだけに帰ってきているような場所で何をしろと。

「……」

 嫌まぁ、やることがないわけではない。

 一応、学生の身分ではあるので、勉強でも何でもしていればいいんだけど。

 やる気というものが、とことん起きない。

 何をしようにも、手を付けようとした直前に辞めてしまう。

「……」

 その点、あの妹は、やる気がある。

 やる気があると言うと、また語弊がある気がするが……基本的にはやる気がないが、自分がやろう、やりたい、と決めたことに、ちゃんと向き合うし、見ている側からすると、脊髄で動いているのかという程に、フットワークが軽い。

 そういうのを見ていると、何もできない自分がつらくなるが、それはまぁ自業自得だし、関係のないことだ。

「……」

 どこかに行くとか、旅行に行くとかは、まだしていないけど、そのうちするだろう。

 行きたい場所があれば、すぐに母に言って連れて行ってもらっているし、買いたいものがあればすぐに、なんやかんやと言いくるめて買ってもらっている。

 口が達者なのだ。

「……」

 もう1人の妹は、そんなこともなく。

 私と近いと言うか、あの妹はあの妹で、独特と言うか……同じ家に住んでいてもつかみづらいところがなくもない。

「……」

 今、キッチンで何かを作っていたのは、フットワークの軽い妹の方だ。

 今日は部活が休みだったらしく、朝から家にいた。

 たまの休みくらい、休めばいいのに、突然何かしたいと言いだして。

「……」

 これが、スマホやゲーム機でもあれば、それに集中するんだろうけど。

 我が家は、高校生になってからでないとスマホを与えられない。

 一応、ゲーム機はあるんだけど、ソフトをあまり買わないと言うか、買えないと言うかで、飽きたのだと言う。

「……」

 それでまぁ、何を始めるのかと思えば。

 キッチンに立って、何かを作り始めた。

 もともと、料理をすることに興味があって、母の手伝いをしたり、アレを作りたいこれを作りたいと、スイーツを作ったりするのだけど。

「……」

 その中でも、本人が気に入っていて、本人もよく食べる、我が家特製のチーズケーキを今は作っていた。もういい匂いがしだしたから、焼き始めていくらかは経っている。

 材料が家にあったからよかったものの、なかったらどうするつもりだったんだろう。まぁ、どうせ、自転車に乗って自分で買いに行ったんだろうけど。

「……」

 母が作るチーズケーキは、母方の祖母、つまりは母の母に教わったものらしい。

 我が家で作る場合は、そのレシピから、かなり砂糖を抜いた上で作っている。

 その方がおいしいから。

「……」

 そういえば、あの子もチーズケーキが好きだと言っていた気がする。

 ケーキをあげるような機会なんてそうないし、一緒に食べることなんてないだろうけど。

 そういえば、もうすぐあの子の誕生日が来る。

「……」

 さすがに、手作りをあげるのは気が引けるが……先月のホワイトデーのお返しは、市販のものを渡した。作ろうとも思ったが、生憎、私は料理をすることに向いていないので。

 それに、美味しいと分かっているものをあげた方が、私はいいと思ったのだ。

「……」

 でも、あの子は私よりは甘党よりだからなァ……家のレシピで作ったチーズケーキは違うとなるかもしれない。

 学校に近くにケーキ屋さんでもあれば、テスト期間にでも買ってあげたいところだが。

 残念ながら少々距離がある。自転車ではケーキを買うのも難しい。

「……」

 あーホントに。

 あの子に会いたくなってきた。

 春休み早く終わらないかな。










 お題:つらい・脊髄・チーズケーキ

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