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変わったもの変わらないもの

 実家のインターホンを押してから、ほんの数秒。それなのに、やけに長く感じた。

「はーい」と聞き慣れた声と一緒に、玄関のドアが開く。

 出てきたのは、私のお母さんだった。

「小春、おかえりなさい。あけましておめでとう」

「あけましておめでとう」

 お母さんの視線が、私の横に立つ光希へと移る。お母さんはニヤッと笑って、

「あら、彼氏?」

「違うよ!」

 反射的に否定すると、光希が一歩前に出た。

「お久しぶりです。光希です。空本光希。小春ちゃんの幼馴染です」

 お母さんの表情がそのまま固まった。目の前の情報をどう処理していいか分からないみたいに。

「えっと……光希、ちゃん? あけましておめでとう……」

「はい、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「寒いでしょう。中、どうぞ……」

「お邪魔します」

 と、光希は笑顔で家に上がっていった。


 甘辛い煮汁の匂いが漂う台所の方から鼻歌が聞こえてきて、覗いてみると、私のお父さんがいた。

「小春〜、おかえり。あけましておめ……」

 そう言いながらこっちを向いたお父さんは、私の隣に立つ光希を見て、ぴたりと動きを止めた。

「え……? か、かか……彼氏……?」

 完全に動揺しているのか、声が裏返っていた。

 私が慌てて否定すると、お父さんはほっとしたように胸を撫で下ろした。

「そっかぁ……いやぁ、びっくりしたぁ……ん? それじゃあ、君は誰?」

 お父さんは私と光希を交互に見る。

 そこで、光希が一歩前に出て、いつもの穏やかな笑顔で頭を下げた。

「お久しぶりです。空本光希です。小春ちゃんの幼馴染の、光希です」

 お父さんは固まって、宇宙猫のような状態になっていた。


 すると光希がふと思い出したように、

「そういえば僕の両親はどこへ?」

 と、私のお母さんに尋ねる光希。

「お母さんはお手洗いで、お父さんはジュースを買いに行ったわよ」

 その時、廊下の奥から、足音が近づいてきた。

「あら、戻ってきたみたい」

 お母さんがそう言った直後、廊下の角から一人の女性が姿を現した。

 ラフな服装、でもどこか上品。動きに無駄がなく、立ち姿だけで『なんか強そう』と思える、カッコいい女性。この人が光希のお母さんだ。

「あけましておめでとうございます」

 私が一礼すると、光希のお母さんはピタリと動きを止めた。

 私と光希を交互に見てから、

「あけましておめでとう、小春ちゃん。と、光希」

 光希は苦笑いを浮かべ、

「久しぶり、母さん……なんで分かったの?」

「そりゃ分かるわよ。雰囲気と佇まいが同じ」

「さすが母さん……」

 光希は驚いてもらえなかったことにしょげていた。

 その時、玄関の方からドアの開く音がした。

「ただいまー」

 よく通る声。ビニール袋を持った男性がリビングに入ってくる。メガネをかけており、頭が良さそうな雰囲気で、落ち着いた印象。光希のお父さんだ。

「あけましておめでとうございます」

 私がそう言うと、光希のお父さんはにこやかに頷き、

「あけましておめで……と……」

 私の隣に立つ光希を見て、完全に固まった。

 私たちを交互に見ながら、何度も瞬きをする。明らかに思考が追いついていない様子。

「ちょ、ちょっと待って。え? えぇ?」

 完全に言語化できていない感じだった。

 すると光希のお母さんが、

「光希よ」

「み……つ、き……?」

「久しぶり。僕だよ、父さん」

「いやいやいやいや……性別が……」

 光希がサラッと、

「変えた」

「変えた!? ちょっと待って!? 聞いてない!?」

「言ってないもん」

「言ってないもん、じゃない!」

「今言った」

「変える前に報連相しなさい!!」

 光希のお母さんは、やれやれと肩をすくめ、光希のお父さんの肩に手を置いた。

「昔から言ってたじゃない。『小春ちゃんと結婚する』って」

「あれ本気だったのか……籍入れるためだけにわざわざ……だからバイトで稼いだ金を貯金してたのか……」

 ヘナヘナと床に膝を着いた光希のお父さん。光希のお母さんは、ヘナヘナになったお父さんの顎に指をかけて、軽く持ち上げた。

「相変わらずリアクション大きいわね。驚く顔、嫌いじゃないけど」

 そう言われただけで、光希のお父さんは少し頬を赤く染め、目を泳がせる。

「人前、だぞ……」

「だから?」

「あーもう、家帰ってからやって」

 光希はそう言いながら、私の視界を手で塞いできた。

 光希のお父さんとお母さんは、相変わらずラブラブだなぁ。

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