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尾行

 最近、小春ちゃんの様子がおかしい。

 僕に隠れて一人で買い物なんて、めったにないのに。

 僕が講義で一緒にいられないのを狙ってるし。何がどうあれ、何か隠してるのは間違いない。

 というか小春ちゃん、今日僕講義ないって知らないのかな? あれ、言ったっけ? まぁ良いや。

 僕に隠れて男に会ってたら問い詰めるだけだもんね。


 それから僕は小春ちゃんの尾行を始めた。

 ショッピングモールでウロチョロしてるの可愛い。じゃなくて。

 文房具屋さんに入って行った? あれ、自分用のを探しに来たのかな?

 だとしたら僕を連れて行かないのはおかしくない?

 それから小春ちゃんはボールペン、蛍光ペン、筆箱の順に回って行った。

 待って。青と緑のパステルグラデーション……? 小春ちゃんが好んで選ぶ色はピンクとか、ピンクと紫のグラデーションとかだったはずなのに。たまには使ってみたいとか?


 文房具屋さんを出た小春ちゃんは、またモール内をぐるぐる回り始めた。

 あれ、宝石とかの方見てる? と思ってたら、急に男性もののスーツ専門店に入って行って、衝撃を受けた。

 小春ちゃんが自らそこに行くなんて。まさか僕以外の男に? そんなことないはず。いつもラブレターらしきものは僕が捨てて、LINEも僕が認めた人しか交換できなかったはず。

 いつ僕の小春ちゃんに接触した?

 許せない。と思っていたら、何も買わずに出てきたのでホッとした。


 にしても小春ちゃん、ずっと頭を悩ませてるみたいだけど、やっぱりプレゼント用なのかもな。見てるものが小春ちゃん好みってわけじゃなさそうだし。しかも男物っぽいし。

 小春ちゃんのお父さんって可能性もあるけど、何かしらの記念日ってわけじゃないもんな。

 そんなことを考えながら尾行を続けていたら、小春ちゃんが急に止まった。

 目線の先にはカフス専門店。

 小春ちゃんが吸われるように入って行っちゃったけど……。あんまり近づくと店員に話しかけられて尾行がバレちゃうかもしれない……。

 そう思って一つ上の階に行き、カフス店が見える場所のベンチに座った。

 何か店員と話し合ってるな。遠目だからどんなのを見てるかまでは分からないけど、店員さんの話をしっかり聞いて、何かを購入したらしい。

 途中「うっ……」って顔してたから、多分高いんだろう。でもめちゃくちゃ上機嫌だったんだよな。

 結局小春ちゃんが、自分用に買ったのか、別の誰かにあげるものなのか分からなかったな。

 多分後者だと思うけど。

 これは問い詰めるべきだよね。

 そう思って、近くのエレベーターを使って小春ちゃんのもとに向かった。


 やがて小春ちゃんの背後までやってきた。

「小春ちゃん、奇遇だね」

「えっ!? 光希!?」

 さっき買ってたやつ、慌てて隠したな。

「何隠してるの?」

「な、なんでもない!」

「僕に隠し事は良くないよ? 教えて」

「それはっ……」

 濁した。やっぱり何かある。僕に言えない何かが。

「そうだ! 光希、次の土曜日開いてる?」

「土曜……八日か。開いてるよ」

「その時に言うね。今は言えないから」

「うん、分かった」

 今はこれ以上無理そうだな。

 しつこく問い詰めて、小春ちゃんに嫌われちゃったら本末転倒だもん。

 今日帰ったら、一度小春ちゃんの周りを洗い直さなきゃ。

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