特別な日まで待てない
高校生になって三ヶ月くらい経った頃。僕は貯めたお金で、小春ちゃんにネックレスをプレゼントした。
小春ちゃんは、箱を開けた瞬間目を丸くして、それからふわっと笑った。その笑顔を見ただけで、胸の奥が満たされる感覚がする。
「これ、良いの?」
「もちろん、小春ちゃんの為に選んだんだから」
「ありがとう、光希。すっごく綺麗。」
小春ちゃんが指先でそっと持ち上げて、光に透かすみたいに眺める仕草がやけに愛おしかった。
「でもね、これ、特別な日にだけつけるね」
「特別な日? なんで?」
「うん。だって、失くしたらやだもん。光希から貰った大事なものだし」
その言葉は嬉しかった。けれど、毎日つけてほしいという気持ちも確かにあった。
「そっか……」
そう返すのが精一杯だったけれど、悪い気はしなかった。
彼女が大事にすると決めたなら、それでいい。小春ちゃんの中で特別になれたんだ。
身につける日が少なくても、彼女の中で価値があるなら、それだけで十分だった。
でも、少しだけ、僕の我儘を聞いてほしいな。
「小春ちゃん、ちょっとつけてみてよ。特別な日までお預けなのは……」
「うん、良いよ」
僕が小春ちゃんにネックレスをつけてあげると、小春ちゃんは嬉しそうに目を輝かせていた。
大切にされてることが嬉しくて、小春ちゃんが愛おしく感じて、つい頭を撫でてしまった。
**
高校に入学してから、まさかあの二人に遭遇するとは思わなかった。
俺の推しカプが、
「ヤバい尊すぎる」
「何言ってんだ行也」
友達の川橋に指摘され、俺はハッと我に返る。
「口に出てた?」
「ガッツリと」
「はぁ~、川橋。お前はあの二人がどう見える?」
「空本と日向原のことか?」
「そう、みつこは。尊いだろ?」
川橋は苦笑いしながら「あぁ……はは……」と微妙な反応をしてきたが、関係ない。
「まさか高校でまた供給が得られるなんてなぁ」
「幸せそうで何より」
俺が推しカプを眺めていると、光希が箱を取り出し、小春ちゃんにプレゼントする様子が見えた。
「待ってプレゼント⁉ 何、何あげたの⁉ ネックレス……⁉」
「うるせぇぞ行也」
「前から思ってたけど、独占欲っ! マジで良い」
俺は思わず手を合わせた。
「落ち着け」
「落ち着けるかよ! ネックレスだぞネックレス!」
「まず深呼吸しろ」
俺は言われた通り深呼吸した。
でも、無理だ。推しカプが目の前でやり取りしてるのを見て、胸の奥がギュッと締め付けられる。
「だって、あの仕草……あの笑顔……あの距離感! 尊すぎるだろ!」
川橋は呆れた顔をしていた。
光希の手が小春ちゃんの首元にそっと触れたり、小春ちゃんがネックレスを受け取り、目を輝かせていたり。
俺の脳内では勝手に、二人の手が絡み合うところ、笑顔の角度、声のトーン、全部がループ再生されていた。
授業も部活も、全部忘れて二人だけを見ていたい。そんな気持ちが、止められない!
みつこはに脳焼かれた行也くんを書きたくて……




