表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

あの日からずっと

今回は光希視点の過去編です。

 十四年前のあの日、僕は恋に落ちた。

「じゃあさ、いっしょにさがそ?」

「いいの?」

「うん、いいよ」

 そう言ってあの子は僕の手を優しく握ってきた。

「ねぇねぇ、おなまえは?」

「みつき……」

「みつきちゃん。こはるはこはる!」

 引っ越したその日に、一人で街を散策して迷子になって心細かった僕に、優しく笑いかけてくれた小春ちゃんは、幼いながらに、天使だと思った。

 無事に帰宅した後、母さんにこのことを話したら、「恋なんじゃない?」と冗談っぽく言われたが、当時の僕はそれを信じた。実際合っていたから。


 幼稚園に入る前、母さんの妹が結婚するという話がやってきた。

 風呂上がり、母さんに『結婚』について聞いてみた。

「そうねぇ……お父さんとお母さんたちみたいに、ずっと一緒にいることよ」

「いっしょ?」

「そう。好きな人と結ばれて、一緒にいるって決めた二人ってとこかしら」

「おかあさんは、おとうさんがすきなの?」

「大好きよ、毎晩おそ……」

 急に父さんがバタバタと近づいて来て、母さんの口を塞いだ。

「光希の前でなんてことを!」

 母さんはどこか嬉しそうに、父さんの腕を掴む。

「ひぃっ⁉」

「あら、どうしたの? そんな声出して……」

「おとうさん、まっかだねー」

「な、何すん」

 母さんは嬉しそうにしながら父さんの口を塞ぎ、僕の方を向いた。

「光希、そろそろ寝る時間じゃない?」

 時計は九時を指していた。

「うん、そうだね。おやすみなさい」

 父さんはいつも母さんを大事にしていた。 母さんも、父さんの隣にいるのが当たり前みたいだった。 だから僕は思った。 好きな人とは、隣にいるものなんだ、と。

「そうだ、おかあさん。このまえテレビでやってた、『しんこんさん』ってなに?」

「結婚したばかりのカップルのことよ」


 そして数日後。幼稚園に初めて来た日、小春ちゃんを見つけて、胸が高まった。

 自由時間になった瞬間、僕は真っ先に小春ちゃんの手を握った。誰かに取られる前に。

「ねぇ、こはるちゃん。新婚さんごっこしよ?」

 幼いながらに、僕は小春ちゃんを独占する気満々だった。だからこそ、「それたのしそう! ぼくもまぜて!」と言った持田の存在が邪魔で嫌だった。

「いいよ。『ペット』か『壁』なら」

 そう言えば諦めるだろうと思ったが、彼は何故か壁になることを選び、邪魔することはなかった。

『小春ちゃんがお嫁さんで、光希が旦那さん』、この配役を変えるつもりは一切ない。新婚さんごっこに誰が入ってこようが、小春ちゃんの旦那さんは僕だけだ。

 十四年経った今でも、その気持ちは変わってない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ