再会のクリスマスイブ
百合でありノーマル。好きな人に意識してほしいからと性転換するヒーローです。
幼馴染の女の子が、私好みの男性になって帰ってきました
幼馴染の名前は空本光希。小学生の頃はとても可愛い女の子だった。いつも私の隣にいて、笑ったり拗ねたりしながら、一緒に大きくなった。
中学も高校も同じで、大学だって当然のように一緒。それが当たり前だと思ってた。
でも半年前。
「小春ちゃん」
声をかけられて振り向くと、そこにいたのは昔と変わらない。……ようでいて、どこか雰囲気の違う光希だった。
いつもより低く落ち着いた声。長かった髪は肩のあたりで切り揃えられていて、前より少し骨ばったような印象を受けた。
でも、笑った顔は相変わらず優しかった。
「小春ちゃん、ちょっと話したいことがあってさ」
「うん、いいよ」
私の返事に、光希はふっと笑った。それから少し間を置いて、ぽつりと呟く。
声の調子が、どこか“男の子っぽい”と一瞬だけ思ったけれど、すぐにその違和感は流れていった。
「病気が見つかって、手術することになったんだ。安心して、ちゃんと戻ってくるから」
それ以上は聞けなかった。「もしかして、すごく重い病気……?」「癌とかだったらどうしよう」なんて、勝手に最悪の想像ばかりしていた。
そして現在。今日はクリスマスイブ。
大学の友達と、小さな飲み会をしていた。私はまだ一年生だからお酒は飲めないから、オレンジジュースを片手に、友達の笑い声を聞いていた。
「そういえば、小春の幼馴染って元気してんの? ほら、病気で休学したって子」
「光希のこと? さぁ……元気にしてるといいけど」
グラスの氷を揺らしながら、ぼんやりと光希の顔を思い浮かべた。
飲み会が終わって、冷たい夜道を一人で歩く。街のイルミネーションがやけにきらきらしていて、行き交う人たちの笑い声が遠くに溶けていく。
『光希……ちゃんと戻ってくるかな?』そんなことを思っていたとき、背中越しに声をかけられた。
「こんばんは。1人?」
振り返ると、背が高くて知らない男の人が立っていた。声も見た目も、全然知らない。なのに、どこか懐かしい雰囲気をまとっていた。
男の人はふっと笑って、ゆっくり近づいてくる。
「あの、何か……?」
私が戸惑っていると、その人は少し顔を近づけて、小さく笑った。
「相変わらず鈍感だね、小春ちゃん」
頭の中が真っ白になる。男の人は、楽しそうに目を細めて口元を緩めた。
「光希だよ。久しぶり、小春ちゃん」
一瞬だけ、私の中の時間が止まった。
光希と名乗った人物はクスリと笑って、
「驚きすぎだって……! はは、ホント可愛い」
「本当に光希なの? 光希を騙った偽者じゃ……」
「初めてブラ買いに行ったとき、店員さんの前で固まって動けなくなった小春ちゃん」
「んなっ!?」
「『やっぱり恥ずかしいから代わりに聞いて』って言われたの、嬉しかったな。頼られてるって感じで」
このエピソードを知ってるのは光希だけ。信じたくないけど、この男の人は間違いなく……
「僕だって、信じてもらえた?」
空本光希だ。
外は寒いからと、光希が暮らすというマンションまで連れてこられた。その場所は光希が女性だった頃と同じ部屋だった。
前に着たときと同じ部屋。
「小春ちゃん、紅茶でも良い? コーヒーは『もう飲まないー!』って半泣きになってたもんね。懐かしいな」
嫌でも目の前の男性が光希なのだと分からされていく。
「あれ、ちょっと待って。光希、病気が見つかって、手術することになったって言ってたよね?」
「うん、言ったよ。恋の病」
にこやかに答え、光希はさらに続ける。
「小春ちゃんの好みは、優しくてカッコいい王子様系って言ってたでしょ? だから、性転換手術をして、小春ちゃんの好みに寄せてみた。カッコいい?」
「うん……」
「ふふ、お気に召したみたいだね」
不敵な笑みを浮かべる光希は、嬉しそうにしながらソファーに座る。
「こっちおいで、小春ちゃん」
私が光希の隣に座ると、光希は優しく私を抱きしめた。
光希と分かっていても、感触は完全に男性。全然落ち着けないっ……!
「半年も小春ちゃんと離れてたから小春ちゃん不足〜」
幼稚園の頃からよく抱きついて来るような子だったけど……。
幼稚園児の時は『小春ちゃんぎゅ〜!』って飛びついて来たし、小学生の時はどこだろうと抱きしめられ、中学生の時は2人っきりの時に抱きしめられ、高校生になったら後ろから抱きしめられるようになり……。
そして現在、わざわざ性別を変えて抱きしめられてる。
「小春ちゃん、緊張してる?」
そりゃあイケボでイケメンな人に迫られたら誰だってドキドキするでしょ……!
「ふふ、可愛い」
イケメンスマイルに浄化されちゃいそう……
「そうだ、今日はクリスマスイブだよね。プレゼントがあるんだ」
光希は私から離れて、部屋の奥へと消えた
残された私は、ソファの上でそわそわしながら手を握りしめる
どうしよう。本当に、どうしよう。今日プレゼントなんて用意してない。まさか、今日会うなんて思ってなかったし……
「お待たせ」
戻ってきた光希の手には、小さな箱があった。
「はい、小春ちゃん」
「私、何も用意してないんだけど……」
「いいよ。これは僕があげたかっただけだから」
そう言って、光希は楽しそうに笑う
断る理由も見つからなくて、私はそっと箱を受け取った
中に入っていたのは、ピンクゴールドの、小さいお花ネックレス。
「可愛い……」
「でしょ。小春ちゃんに似合うと思って」
「これ、いつ選んだの?」
「んー、退院した頃かな。クリスマスに渡そうと思って選んだんだ」
私は言葉に詰まって、視線を落とした。
「ねぇ、小春ちゃん」
光希が、少しだけ真面目な声になる。
「僕が男になったからって、無理に意識しなくていいよ。でも」
距離が縮まり、視線が絡む。
「小春ちゃんを好きなのは、ずっと前から変わってない」
胸の奥が、ぎゅっと掴まれたみたいになる。優しいのに、逃げ道を塞ぐみたいな言い方。
「返事は、まだいいよ。その代わり」
そっと、私の頭に手を置く
「僕が小春ちゃんの一番近くにいることだけは、覚えてて」
心臓の音がうるさすぎて、返事ができない。
それを見て、光希は満足そうに微笑んだ。
「やっぱり可愛いなぁ、小春ちゃん」
この人、本当に、私の幼馴染なんだよね……?
X(旧Twitter):@rutakoto0905
です。




