ダンダダンの「Hunting Soul」は著作権侵害なのか、作曲者目線でお伝えします。
アニメ「ダンダダン」第18話の挿入歌「Hunting Soul」が、ヴィジュアル系ロックバンドのX JAPANみたいじゃないかと、X JAPANのYOSHIKIさん本人がコメントされていてちょっと物議を醸している。
聞いてみるとなるほど、バラードっぽく入るところやイントロのリフ、Aメロの感じはX JAPANの「紅」に似ている。
というかこれ、「わざと似せている」んだと思う。作曲者や編曲者の方へもそういうオーダーだっただろう。
そもそもこの曲を演奏するバンド名がHAYASiiなのだが、YOSHIKIさんの本名の苗字が林。
他にも、バンド名が全てX JAPANメンバー由来で、ボーカルはトシロウ=ToshI、ギターはヒデジ=hide、ベースはパターソン=PATA、ドラムはヨシキチ=YOSHIKI。ビジュアルも本人たちとなんだか似ている。
「おい、ベースはTAIJIかHEATHやろ! そもそもなんでPATAがベースやねん!」とツッコみたい気持ちもあるが、バンドメンバー含めたオマージュなのは明白だ。
しかしながらYOSHIKIさん本人が、これは著作権侵害の可能性があると弁護士から連絡があった、というコメントをされたのだ。
この件についてはネット上であれこれ意見が出ているが、楽曲の著作権的な観点について自分の意見を言わせていただくと、リフは紅にかなり似ているがそもそも歌以外のアレンジ部分に著作権はない。
歌のメロディーも似ているのはAメロの一部だけで、他は全然違うと感じる。
したがって著作権侵害には当たらないと思うし、それを言えばもっとモロのパクリ曲が山ほどある。それをいちいち訴え出したらキリがないレベルで。
例えば「美少女戦士セーラームーン」のアニメop曲である「ムーンライト伝説」。
実はこの曲のメロディー、倍賞千恵子さんの「さよならはダンスの後に」という曲のパクリなのだ。
(両曲ともにA-B-Aという構成だが、Aの部分がとてもよく似ている)
これは単なる噂や疑惑に止まらず、「さよならはダンスの後に」の作曲者の小川寛興先生から訴えがあり、印税の一定金額を小川先生が受け取るという形で和解したそう。
つまり、作曲者側は意図的に盗作したと認めたことになる。
他にも、曲の一部が他曲のモロパクリの有名曲・ミリオンヒット曲は腐るほどあるのだが、元曲の作者と和解したケースは稀で、ほとんどの場合は勝手に拝借して知らんぷりだろう。
ムーンライト伝説だって後から訴えられた訳だし。
そのレベルの曲たちが著作権侵害と訴えられないのであれば、今回の曲も不問のはずだ。
こんなことは弱小作曲者の自分でさえ知ってるのだから、YOSHIKIさんも当然知ってるだろう。
ではなぜ、今回あえてコメントを出されたのか。
おそらくだが、今回のオマージュは事前に使用確認がなかったそうなので、そこに疑問を示されたんじゃないだろうか?
「スジを通して欲しかった」と、そういうことなら納得できる。
イントロからAメロの入りはかなり似ているので作曲者本人が「え......!?」と思っても無理はないし、何より似ているのはメンバーの容姿や名前も含めた部分。
このレベルのオマージュを連絡なしに目の当たりにしたら、複雑な気持ちにもなるのかもしれない。
自分もどちらかといえば、こうしたケースなら一言連絡が欲しいとは感じる。
一方で、「Hunting Soul」はボーカルが声優の谷山紀章さん(谷山さんはGRANRODEOというロックユニットもやっていて歌がめちゃくちゃ上手い)、ギターは元MEGADETHのマーティ・フリードマンという豪華布陣で、楽曲のガチさにも大盛り上がりだったところに、「著作権侵害」や「弁護士」というワードを使ったことでネット上が身構えてしまった気もする。
SNS含めたネットの難しさを同時に感じもした出来事だった。




