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初恋は異世界でなんて

作者: 清泉なり

私、山中楓は元は普通の女子高生だった。だがある日、ある男子高校生を助けようとし、交通事故で死んでしまった。その時の、男子高校生がどうなったかは私にはわからない。ただ、私は人のために死ねたのだと思い、親より先に死んでしまったことを悔やみながら今を生きている。


今言ったことに、疑問を感じた人もいることだろう。今を生きている?どういうことだ?そう思うことだろう。


なぜなら、私は異世界転生してしまったのです。私が死んでしまった後、再び目を開くと、まばゆい光が差し込んできた。その光が霧散してきたころ、視界が開けてきて、そこで私はとある貴族の令嬢として、生まれてきていたのです。そして、私は第二の新しい名として、シェルニア・ルーシーという名が与えられた。


突如、生まれ変わってしまったこの世界で私はどうしたらいいのか迷ってしまう。ただ一つ私に救いがあったとすれば前世の私はオタクという文化に片足を突っ込んだ人間だったので、異世界転生についての知識が多少はあったのだ。


転生した私は新しい人生を有意義に過ごすため、自分で立ち上がれるようになったころから、屋敷の中を歩き回り、書斎で本を漁り、この世界の知識を身に着け、これからの世界のために備える。


七歳にも満ちるころ、社交界とも言えるようなパーティーが開かれた。とある貴族様が主催のパーティーなので、その貴族様のお子様にご挨拶をする。その子は、たくさん取り巻きを連れ立ってパーティーの中心にいた。名をジョン・コークというらしい。


中心の皆様にご挨拶を済ませた後、中庭をぶらりと歩いていると、一人の少年と出会った。彼の名を聞くと、


「僕かい?僕の名前はアルベルト・オフィスというんだ。」


「そうなの?アルベルトね。覚えたわ。私はシェルニア。シェルニア・ルーシーというのよ。私はあそこの雰囲気に耐えられなくて、こっちに来てしまったの。あなたは?」


「僕も同じようなものさ。仲間だね、僕たち。」


中庭のベンチに座り、談笑を楽しんでいた。アルベルトとの会話がものすごく盛り上がる。


「私たちは気が合うね。」


「そうだね。もしよかったらこれからも会うことができないかな?」


「そうね、また一緒におしゃべりしたいわ。好みの本についてもっとおしゃべりしたいもの。」


そう言って、彼に別れを告げる。そして、パーティーの会場に戻ってくると、もうお開きに近い状態になっていた。両親の元に戻ると、父上が


「どこに言っていたんだい?探したんだよ?」というので、


「すみません、お父様。お花を摘みに行こうと思ったのですが、その途中で迷ってしまいました。」


その言葉を父上は信じてくださり、そのまま私たちは帰路に就いた。


その日から、私は時々アルベルトと会うようになり、今日でもう五回目となる。


「やぁ、シェルニア、おはよう。今日で会うのは五回目だね。」


「そうね、あなたにあったのはもうずいぶん昔のことのように思うわ。」


「ああ、そろそろ僕は君のことを愛称で呼びたいんだけど?いいかな?」


いきなりの提案で驚いてしまう、私。


「それはいい提案ね。私もあなたともっと仲良くなりたいわ。」


「なら、僕のことはアルと呼んでほしい。君のことはシルニと呼んでもいいかな。」


「ええ、いいわよ。よろしくね、アル。」


それから、共通の趣味の本の話をして、アルは家に帰っていった。


あれからもう、八年も経ってしまった。いろいろな社交界に出ることも多くなり、友達も増えてきた。私にはシャルロット・ルイスという親友もできた。


そして、私たちは学校に行く歳にになった。家を出て、メイドのアリア・ロンドを連れて、寮に向かう。貴族の方々が住まう寮ということだけあって、その外観はとてもきれいなものだった。


玄関前に立ち、扉をノックする。少し扉の前で待っていると、扉が開かれ、奥から、一人の女の子がやってきた。


「初めまして、ルーシーさん、ロンドさん。本日案内を担当させてもらう、シエル・クリュセです。よろしくお願いしますね。」


こちらへどうぞ、と言って前を譲ってくれるクリュセさん。


それに従って前に進むと、広いエントランスに出た。大きなシャンデリアが輝くエントランスには二手に分かれる階段が中央に立っていた。


そこからは、クリュセさんの案内で各階、各部屋の説明を受ける。


「クリュセさん、本日はありがとうございました。これからもわからないことがあれば頼ってしまってもよろしいでしょうか?」


「もちろんです。クリュセさんなんて他人行儀な言い方はおやめください。これから同じ屋根の下で暮らす仲じゃないですか。私のことはシエルとお呼びください。」


「そうね。これからよろしくね、シエルさん。」


「さんってもう。まあいいでしょう。はい、よろしくお願いしますね、シェルニアさん。」


そういって、私の部屋まで案内してもらい、そこでシエルさんと別れる。部屋に入るとすでにほとんど荷物が備えられていて、残りの荷物はアリアが片付けてくれる。


夕方ごろにもなると、アリアによる片づけが終了した。


「お疲れ様、アリア。ありがとうね。」


「もったいないお言葉でございます、お嬢様。そろそろ、お飲み物を準備しましょうか?」


「もったいないなんて言わないで。お昼に来てからもう日が傾いているんだものすごいわ、アリア。それと、飲み物はいいわ。」


「さようですか?」


「ええ、あなたは集中していて気付かなかったでしょうけど、もうお夕飯の時間よ。」


「そうでしたか、ありがとうございます。」


アリアとしゃべっていると、扉がノックされる。アリアが扉を開けに行くと、扉の前には先ほど数時間前に分かれたばかりのシエルさんが立っていた。


「あら、シエルさん。どうかしたのですか?」


「いえ、そろそろ夕食の時間なので。まだ、食堂を案内してなかったと思いまして。」


わざわざ迎えに来てくれたのか。本当にいい子だと思った。


迎えに来てくれたシエルさんと一緒に食堂に向かう。


食堂にやってくるとそこには見知った顔と見知らぬ顔が並んでいた。彼らはもうすでに席についている。私はその中でアルの顔を見つけた。


「久しぶりね、アル。あなたもこの寮生だったのね。驚いたわ。」


「やぁ、シルニ。僕も君がここに来るとは思はなかったよ。」


「何⁉二人は知り合いなの?」


隣の子が急に割り込んでくる。


「カルテ、まずは自己紹介するべきじゃないかな。」


さらに奥側の席の男性が口をはさむ。


「いきなりすまないね。私はコーラル・シュシュというものだ。一応、この寮の寮長を務めている。そして、さっき口をはさんだ子はカルテ・ユニアスという。どうかよろしく頼む。ほら、カルテも挨拶したらどうだ。」


「はい、私はカルテ・ユニアスです。どうかよろしくです。」


コーラルさんはずいぶんしっかりとした人らしい。カルテちゃんは元気な子だ。


「ええ、よろしくね、コーラルさん、カルテさんよろしくお願いしますね。」


「いきなり名前から行くんだね。僕の時は違ったのに…」


後ろからそんな声が聞こえてくる。


「今日から我々の仲間になる二人だ。君たちも挨拶したらどうだい?」


「はーい、カール・ダリィでぇーす。はぁ、だるぅ。」


「初対面の方に向かってだるぅなんて言葉遣いはおやめください。カールさま。お二人ともすみません私はシュレル・ターナーと言います。」


向かいのテーブルに座っている二人の男女が口を開く。


「シュレルはカールのメイドなんだよ。」


そうだったのか。確かに先ほどカールさんに対して敬語を使っていたものね。


「ああ、それとアリアさんこの寮では従者も主もみな同様に扱う決まりになっているんだ。だから、アリアさんもそこの椅子に座ってくれたまえ。」


その指示に従い、アリアと私も席に着く。そのうちに料理が運ばれてきて、みんなでディナーをいただくことになる。


ディナーを食べ終わると、それぞれ部屋に帰っていく。


それから、アリアにお紅茶を用意させ、いただく。


ゆったりしていると、今度はシエルとカルテさんとシュレルさんがやってきた。


「あら、今度は女性陣が勢ぞろいでどうしたのかしら?」


「あのね、お風呂の時間だからみんなで入ろうと思って呼びに来たの。」


「そうそう、みんなで入ると気持ちいいからね。」


ということらしい。後ろに控えていると思っていたアリアにどうしようかと尋ねようとしたらそこにアリアの姿はなく、不思議に思うと同時に部屋の扉が開いた。そこからアリアは二人分のタオルと着替えをもって現れた。


お風呂にはみんなで入りに行き、今はアリアに髪を乾かしてもらっている。後は寝るだけである。おやすみなさい。


それからは同じような日々が繰り返される。毎日、週に五回学校に行き授業を受け、寮に帰ってきてご飯を食べみんなで、時には二人でお風呂に入り、日々を過ごす。


そんな中で私は相変わらずアルと一緒に遊ぶことがある。趣味の読書の中で読んだおすすめの本をお互いに紹介しあう。そんな毎日が幸せなのである。


そのうちに、学園祭の季節がやってきた。クラスのみんなで一つの出し物を作ってお祭りを盛り上げる。私たちのクラスはチョコバナナを売ることになった。私たちの学校は制服はあるが着用は自由なので今回お祭りに合わせて全員で着てみようということになった。


これから一週間は学園祭の準備期間になっている。みんなで一緒に準備をしている。全員せっせとこなしている。


私たちは衣装係になり、そのメンバーはアリアとアルだった。アルは意外に器用で縫物などをパパッとやってしまった。


ちなみに私の学校は貴族も庶民も一緒に生活するが貴族もクラスのために働き、庶民も貴族と同じ食事などを提供される学生同士の平等を謳っている学校である。まぁ、しかし、多少の差別は目に映るのだが。


そんなときだった私は針で指をさしてしまった。すると、アルが手当てをしてくれた。顔が近くて、びっくりしてしまった。


それから一週間が経ち、学園祭が始まった。私はアルに誘われて、一緒にまわることになった。一緒に二人で食べたり、遊んだりした。


しかし、突然めまいが起こった。急に、視界が一回転し、私は床にへたり込み、アルに抱えられながら気を失ってしまった。


次に目を覚ましたのは学校の保健室のベッドの上だった。視界の周りには心配そうな顔や不安そうな顔をしていたみんながいた。


「お嬢様!?目が覚めたんですね。大丈夫ですか。」


アリアに続き、みんなが声をかけてくる。


「大丈夫よ。心配かけたわね。それと、少しアルと二人にしてくれるかしら?」


「かしこまりました。みなさま、一旦こちらにどうぞ。」


アリアが皆を連れて退室する。


「アル、ごめんなさいね。アルがここまで運んでくれたのでしょう?」


「そうだけど、大丈夫だよ。ずいぶん軽かったしね。」


「もう、冗談言わないで。…ふう、それでね、大事な話があるの。」


意を決してそう告げる。


「何となくわかっていたけど、何かあるんだね。」


「ええ、そのね。私と、お付き合いしてほしいの。」


「ああ、もちろんいいよ。これからよろしくね。」


「え、いいの?」


ずいぶんあっさりした返事だった。


「それなら、もう一つ聞いてほしいことがあるの。」


「なんだい?ずいぶん、大きくなりそうだけど。」


「私には、前世の記憶があるの。変な子だと思うかしら?」


「……いや、続けて?」


「私はね、前世にこことは違う世界で初恋の男の子をかばって、車っていう、燃料を積んだ馬車のようなものにひかれて死んでしまったの。」


「ッ、もしかして、君の前世は山中楓というんじゃないかい。」


「え?どうしてそれを。」


「僕だよ。篠本光輝だよ。君が助けてくれた男の子だよ。僕は君に一度でいいから会いたくてこの前世を過ごしてきたんだ。」


「ええ~~!!」


ウソでしょ。まさかアルが光輝君だったなんて。


「きみにありがとうを言いたかったんだ。ずっと会いたかった。」


「私も会いたかった。」


まさか、初恋が異世界で結ばれるなんて。

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