シエリとイーダ
イーダが荷車に多くの荷物を乗せて運んでいる。
イーダとはつい最近スイーツ城に入って来た執事だ。
「うわーーーっあぶなーーーい!!」
その途端ドンガラガッシャーンと荷車と荷物が転がる。
「だ、大丈夫ですか!?」
シエリが転がった荷物を一緒に拾う。
「何やってるんだ君は!シエリ君、一人で拾わせたまえ!」
ノフィンがそこに現れこう言う。
「でもでも、手伝わないと…「トーマ君に任せておけば良い!」
とノフィン。
「その通りだよ僕のことは良いから」とイーダが言う。
そしてそしてノフィンが言った。
「本当に使いものにならないな!」
その言葉はシエリにとって聞き捨てならなかった。
その言葉がイーダに向けての言葉であってもだ。
「おじさん!いくらなんでもその言い方は無いんじゃないですかっ!?」
「し、しかし君…」
そんな時くるみんとシュカシュカがシエリを止める。
「シエリさんあっち行くですう!」
「そうですよ触らぬ神に祟りなし!」
そしてピューッとどこかへ連れて行かれる。
連れ去られるシエリだが「離してください!」と二人を振り解く。
「さっきの人可哀想でしたよ!それとそれとあの長髪の人は私の叔父です!だからだから正さないといけなかったのに!」と怒鳴る。
「堅物ですぅ…」
「それが良いところなんだけど…」
とくるシュカ。
「イーダさんは新人なんですから、怒られるのは一種の儀式「いいえ行き過ぎですあれは!とにかく一言おじさんに強く行ってきます!」
と頼もしく歩いて行った。
「あー行っちゃった…」と呆然と目で追うくるシュカ。
シエリが歩いているとイーダがいた。
イーダは嗚咽をあげて泣いていた。
「大丈夫ですか?」
シエリが声をかける。
しかしイーダは言った。
「良いよな君は、発達だから手帳とか持ってるんだろ?」
「持ってます、それが何か?」
シエリは真面目に答えた。
「っ!まあ良いや…君には僕の辛さがわからないんだろうさ?」イーダは憎しみの含んだ声で言った。
「……私が貴方に何かしましたか?」
身に覚えがなく何故か憎しみをぶつけてくるイーダにシエリは聞いた。
「くっ!やめろ!またあのトラウマが襲って来る!」
イーダがもがき始めた。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?イーダさんっ!」
イーダの脳裏に父親、母親、姉、その他にディスられた記憶が蘇る。
『イーダお前は東大に入らなければならないんだっ!』
『イーダ、貴方は本当はとても出来る子なのに、どうして本気を出さないの?』
『なんで何にも出来ないの?男のくせに!』
『やーい泣き虫のろま!シンショー!本当にエリートなのかよ!?』
過去に浴びた罵声が沢山イーダに降り注ぐ。
僕は出来るんだ、なんせ知能指数が119もあったからな!しかししかしなんで僕は…なんで僕は…。
「なんでだよ、なんで発達障害のシエリ《この子》が僕よりしっかりしてて僕がこの子より劣ってるんだ!そんなの絶対おかしいっ!」
シエリは必死に揺さぶりイーダを現実に戻す。
「イーダさんっ!!」「はっ!」
イーダは我に返った。
イーダの顔は汗びっしょりだった余程のトラウマがあったのだろう。
「イーダさん大丈夫ですか?精神病院に行かれたほうが…」
「精神病院だと!?馬鹿にしているのか??」
イーダは噛み付く。
普通はそう言われたら怒るだろう。しかしシエリは普通に自然のこととして受け取っていた。
だから人に言っても良いと思っていた。
「そうか、そうやって僕を馬鹿にするのか!?しかし残念だったな、一度調べてもらったら異常無しなんて出たんだよ!」
イーダはこう言う。
「解せません、貴方はきっと精神病院を間違えたんだと思います」
「大人しくしていればこの小娘!」
イーダは突如飛びかかる。
そんな時「ホーリーネット!」と叫び声がしたかと思うとイーダは光り輝く蜘蛛の巣のような物体に丸み込まれた。
「のぞのぞ先輩!」とシエリ。
「本当に探したんですよシエリさん、他の部署の人と駄弁ってるんじゃありません!」
のぞのぞは言った。
「のぞのぞ先輩、この人は可哀想な人なの手荒な事はしないで」
こう言われるとのぞのぞは魔力を抑える。
「イーダさん、本当に精神病院行く気にはならないの?」
「なるもんか!これ以上僕を馬鹿にするんじゃない!」
イーダはあくまで反発する。
「これでは埒があきませんね…」
のぞのぞは考えた。
そしてそしてーーー
「ゲーム…ですか…」とイーダ。
「凄い…スイーツ城にこんな場所があったんですね…」一方のシエリは驚いている。
そうそこはコンピュータ室。
コンピュータ室でもあり、決闘の場でもあったのだ。
「そうここはかつて私が副メイド長となったきっかけを作ってくれた場所」
それからここは負けた方が勝ったものの言う事をなんでも聞く場所となったのです」とのぞのぞは言った。
「面白い……僕は引きこもり期間ずっと一人でゲームしてたから腕には自信があるんだ」
「私もスプラトゥーン3をやりまくってました、しかも対戦もいっぱいしたから誰にも負ける気がしません!」
両者は自信のある面持ちで睨み合う。
「良い顔になってきましたね二人とも、ではフィックスリリース!」のぞのぞが号令をかける。
「勝敗は対戦者の操縦の腕のみに決まらず…」
「ゲームの相性のみで決まらず…」
「「結果のみが真実!!」」
そしてシエリVSイーダの戦いの火蓋が切って落とされた。
シエリとイーダのゲームでの戦いを見て思った。
(本来なら体と体のぶつかり合いだったのだけれど、これなら互いを傷つける必要もないわね…)
そして互いは互いの技で相手を凌駕しようとする。
「喰らえ!リバースアタック!!」
「ちょこざいな!ウルトラショット!!」
ドカンドカンドカン!!
煙が舞い上がる。
「くっ流石はスプラトゥーンをやりまくってただけの事はある…!」
「貴方も……長年の苦労から得た莫大なエネルギー波のその一撃に重みがあるわ……」
互いの腕を認めた。認めざるを得なかった。
だが負けるわけにはいかない。
イーダは更に恨みつらみパワーを発揮させてブーストをかける。
「カースブースト!!」
イーダの体の周りにパープルオーラが放出する。
それによって身体能力、技のパワーが倍になるのだ。
ドカンドカンドカン!!
「きゃーーーっ!!」シエリのパワーゲージが一気に減った。
「シエリさんっ!」
のぞのぞが叫ぶ。
「大丈夫…手元が狂っただけです…」
シエリは立ち上がる。
「ほお、まだそんな強がりを言う余裕があるのか?」
「強がりかどうかっ!」
シエリはエナジースタンドを出現させる。
そして自分をブーストさせる。
「ふん、そのままでは僕に敵わないと、だからだから自分をパワーアップさせたか!」
「それだけじゃないよ!」
「な、なに!?」
エナジースタンドはなんと障害物となり、イーダの攻撃を吸収させながら上手く戦っていたのだ。
(流石ねシエリ…多分カマンや明日香さんをも凌駕するんじゃないかしら…)のぞのぞはシエリのプレイを見て固唾を飲んだ。
「隙あり!メガホンレーザー5.1ch!!」
「なにぃ!?」
勝負が決まった。
シエリが圧倒的に勝利した。
「勝者!シエリ・ユーノ!!」
そして結界が解かれた。
「さあ約束です、診断、受けていただけますね?」
「わかったよ、結果は同じだろうけどさ…」
イーダは腑に落ちない様子だったが条件はのんでくれた。
そしてそしてーーー
「どうでした?結果は………」
シエリが聞く。
「おんなじだったよ、発達障害どころか、グレーゾーンにもならなかった……」
イーダは沈んでいる様子だった。
「そう言う事だお前は努力不足だ!」
「あっはっは勉強しろ勉強しろ!」
連中がイーダを煽りに来る。
3人とも執事服を着ているがどいつもこいつもガラが悪い。
「貴方達!言動を慎みなさいっ!!」
「なんだとうこのアマ!!」
シエリは果敢に向かうが返り討ちに遭いはじめる。
「やめろーーーっ!!」
イーダがシエリを助けた。
「なんだコイツ、イーダのくせに…!」
「僕はいくら傷ついても構わない、しかししかしこの子には指一本触れるな!」
イーダは今までに見たことない勇敢な姿で連中を追い払った。
(イーダ…本当に良い人、貴方はもう一人じゃ無い、これからはずっと私が支えてあげる!)
とシエリは誓った。
「シエリさん、ありがとう僕の為に…」
「良いよ、これから貴方は私が支え「イーダぁ!何やってるのよ!!」
すると向こうからポーネが。
「あ、ポーネ、この子は僕の恩人、シエリ、この人が僕の恋人だよ♪」
イーダがこう言った途端シエリは硬直する。
「あらシエリじゃない、うちの彼氏を助けてくれたんだってね?こらイーダ!女の子に助けられてどうするのよ!」
「いてっ!」
イーダとポーネのやり取りも、はしゃぎ声もどんどんシエリの意識から遠ざかっていく。
支えようと誓ったがシエリの心の中で。
しかし恋人がいてとっくに支え合っていたのにショックを受けたと言うか、現実を目の当たりにした途端目の前が真っ暗になる感覚を覚えた。
恋人いたなら何故恨み言吐いたり泣き言言ったりしてたんだ。
助けた意味無いじゃん。
発達障害ゆえにナイーブなシエリ。
彼女は仕事に戻るが仕事を教えられている最中もずっと上の空だった。
「こらどこを見ているんですかシエリさん!」
のぞのぞによる指導からはまだまだ解放されそうもない。
続くーーー