仲違いと仲直り
「執事長危険ですよ早く避難してくださいっ!!」
トーマが叫ぶがノフィンは無視してカマンに言った。
「カマン、シエリは発達障害なんだから多少おかしな行動を取ることもある、だけどそれも堪えてやれないのか?本当にお子様だな」
するとカマンが瞳に涙を溜めだす。
「何?結局私が悪者なわけ?一生懸命仕事してるのにっ!なんでシエリが怒られなきゃいけない事を私が怒られなきゃいけないの!もう帰る!!」
カマンはヒステリックに喚き散らした後帰り出した。
「ナンマンダーナンマンダー…あ、あれ?」
「何を勘違いしていたんだトーマ君…」
実際何も起こっていないが神頼みしまくるトーマにノフィンは軽く言う。
シエリは呆然と放心していたがふと我に返る。
「あぁ私はまた人を怒らせちゃった!」
「大丈夫だそんな時もあるさっ!」
自責しまくるシエリをノフィンが必死に説得する。
「でもでも私…カマン先輩に謝らずにはいられないっ!おじさん行かせて!今すぐ謝りたいっ!」
「駄目だもう日が暮れる!シエリは早く帰りなさい!」
とノフィンとシエリは軽く揉める。
「大丈夫です私がついています」
とそこで現れたのがのぞのぞ。
「のぞのぞ君……わかった…」
また暫く離れた所では
「ナリ坊がなんでそこで責任持ってあげないのよ!」
「私じゃ駄目なんだって!」
ポーナリがこうやって揉めていた。
ーーーそして夜になり出した。
「さて謝りに行く前に腹ごしらえをしましょう、私が奢ります」
「え?でも私は今すぐにでも謝りたい!」
「シエリさん」
そこでのぞのぞは真の姉御肌の瞳をシエリに向けた。
「空腹は満たしておかないと頭は働かないしお腹が空いては戦も出来ません」
「はい…」
そしてのぞのぞとシエリは食事を摂る。
シエリはこのレストランがあるアニメの広告とコラボしているのを見た。
「プリティーアが好きなんだ?」
「あ、すみません!」
一線をじーっと見ていたシエリにのぞのぞが聞く。
「良いのよ、私も好きなの、チイチイママみたいで」
「私もです、フットも大好きで私もそれが好きになって、あっ!フットは私のお兄ちゃんです!」
シエリは慌てて紡いだ。
「良いのよ慌てなくて、それにしてもお兄さんの事も名前で呼んでるんだ?」
「お、おかしいです…よね?」
「うぅん、寧ろ羨ましい…私もお姉ちゃんがいるけど喧嘩ばかりで…」
のぞのぞは姉の春美について語り出した。
「くしゅん!まったアイツ私の噂しだしてるわね!後輩の面倒見るから帰れない?いつからそんな身分になったのよ!」
春美は激おこぷんぷん丸で家計を計算していた。
「はぁ赤字……のぞのぞどんだけ厄病神に取り憑かれてるのよ……自覚しなさいよねアンタの面倒見れるのは私だけって事に!」
そして視点はまたシエリへと。
シエリはのぞのぞと話してシエリ的に近いものを感じたのだろう。
のぞのぞとは色々と話せるように思えた。
「ありがとうございます、のぞのぞ先輩もどこかとろいところがあって、それかもしれません、話やすかったです!」
「そう、良かったね…(え…トロいのぞかのぞのぞは…)」
のぞのぞは少しぴくんとしたが笑って誤魔化した。
そしてそして場所はカマンのアパートへと。
しかしどうした事だろう?シエリは途中で止まってしまう。
「どうしたのシエリさん?」
「わ…私やっぱり怖い…行けない…」
シエリはその場でしゃがみ項垂れる。
「立ちなさい、このままで良いと言うの?」
「いけないとはわかっています…でも私、カマン先輩のアパートの目前に来たら急に怖くなって……」
そうシエリは臆病風に吹かれてしまったのだ。
「大丈夫ですよ立って!」
のぞのぞはシエリの手を力強く握る。
「私がついていますから、こうしてる時に夜になってしまいます、そうしたら謝りにいけなくなりますよ!ほら立って!」
「はい…」
そしてのぞのぞとシエリはエレベーターに乗る。
その途中でまたシエリは臆病風に吹かれる。
「駄目…!やっぱり怖い!」
「シエリさんっ!」
今度はのぞのぞはシエリを抱きしめる。
するとシエリはおとなしくなる。
トクントクンという生命を感じる音がシエリをおとなしくさせた。
「大丈夫です、貴女は自分が思っているような弱い子じゃない」
「のぞのぞ先輩…」
シエリはうるうるした瞳でのぞのぞを見ていた。
そしてカマンの部屋の前にやって来たシエリ達。
「さあ、シエリさん…」
「は…はいのぞのぞ先輩…」
シエリはおそるおそるインターホンに指を近づける。
ピンポーン♪ついにインターホンが鳴らされた。
「あわわっ!どうしようどうしよう!」
「大丈夫です後は謝るだけです!!」
そしてドアが開かれる。
「あ、あああの……ごごごめんな「会いたかったゆおおぉお姉ちゃああああん!!」
カマンが現れたかと思うとカマンは突如シエリに抱きつきモフモフしだした。
「お姉ちゃんってカマン先輩は20歳では…私はまだ17…」
「はぁすみません酔ってるとは計算外でしたカマンさんは懐き上戸で相手が歳下にも関わらず「お兄ちゃんお姉ちゃん」と言って甘えてくるんです…」
そしてシエリはカマンに引きずられていく。
「いやあああぁのぞのぞ先輩助けてえぇ!!」
「駄目ですシエリさんしっかりとカマンさんと向き合い仲良くするのです!」
とのぞのぞは叱咤した。
しかしカマンの部屋に来てシエリは目を輝かせた。
「アニメビデオがいっぱい……カマン先輩もアニメ観るんですか!?」
「そうだよぉお姉ちゃん特にプリティーアが大好き!」
「凄い!私も好きなんです!」
趣味が共通しシエカマは弾みだした。
(なんだ…人と仲直りするって難しい事じゃなかったんだ!)
とシエリは思った。
しかし……。
のぞのぞは暫くシエリとカマンの様子を見ていたが。
(どうやら上手くいってるようね?後はしっかりやるのよ?)
と思って立ち上がった。
しかしその後……。
「うわあああぁん!!!」
とシエリがのぞのぞに泣きついてきた。
「どうしたのどうしたの?」
のぞのぞが宥める。
「ごめーんついシエリが可愛くってぇ♪」
とへべれけなカマンが呂律も回って無い口調のふらふら。
「酔いを覚ましなさい!ウォール!」
「冷たっ!はっ私なんでびしょ濡れなの!!」
のぞのぞは酔い覚ましにカマンに魔法の滝を落としシエリの手を引いて逃げていった。
「ぐすん…ぐすん…」
「よしよしもう泣き止んで…」
のぞのぞはシエリの背中を摩ってあげる。
「のぞのぞ先輩…シエリは結局誰とも仲良くなれないんでしょうか…?」
「そんな事ないわよ、人に慣れていけば…」
「でも、そうすると結局喧嘩になっちゃうんです…やっぱりシエリは他の子と違うんだ…」
シエリはグズっていた。
のぞのぞは言った。「私もね…」と。
顔をスカートに埋めたままだったシエリは顔をあげる。
「シエリちゃんとおんなじだった、中学校の頃いじめられて…今もあんまり変わってないんだけど、仲の良い子あんまりいないし…」
あくまで静かに、かつしっかり伝えるのぞのぞ。
「のぞのぞ先輩…」
「だからシエリちゃんの気持ちはよくわかる、誰とも仲良くなれなくても良い、仕事さえ出来ていれば…そう思って頑張ってきたんだよ私も」
のぞのぞはこう言うとシエリはまた顔を曇らせた。
「でもカマン先輩には仕事が遅いって言われた…」
こうボソッと言って。
「確かにマイペースなところはあると思う…」
とのぞのぞは言う。口調は優しいが、まさか否定して慰めるだろうと思っていたシエリの予想を裏切っていた。
「そう…ですよね…」
シエリはただ静かにこう言う。
他の人からすれば落ち込んでいるように見え、オロオロするだろう。
ただのぞのぞは違っていて、淡々とこう述べた。
「マイペースで良いじゃない、完璧な人なんていないし、カマンさんやまりりんさんのようにセカセカしている人もいれば、ナリ坊さんや明日香さんみたいなトラブルメーカーもいて…」
「それにねそれにね……」
のぞのぞは続ける。
「みんな考え方がバラバラでまとまりの無いメイド隊だけど、それがここの良いところだと思ってるんだ!」
のぞのぞは夜空を見上げる。
シエリもまた夜空を見る。
徳島の夜空は輝いていて素敵なイルミネーションを飾っている。
シエリはのぞのぞや夜空のイルミネーションに慰められた気がした。
続くーーー