アーリーン
「アーリーン? 世界のはざま? どういうこと? 何が起きてるの?」
突如響いてきた声の主の言葉に戸惑うあたしたち。
『ふむ、動揺しておるようじゃな。まあ無理もない、お前たちをここに呼んだのは私じゃ。お前たちは選ばれたのじゃ』
「選ばれた……いったい何に?」
ごくりとのどを鳴らす。
『うむ! それはじゃな、これからお前たちは異世界で新たな生活を送り、その世界で起きている異変を解決するというそれはそれは大切な仕事をするという役目を果たすためじゃ!』
「「はあ???」」
『喜ぶがいい! これは大変名誉なことなんじゃぞ? 普通の人生では決して味わえない生活が送れるんじゃ。 どうじゃ、うれしかろう?』
いきなり何を言っちゃってるわけ? このアーリーンは。
これから異世界で新たな生活を送る? その世界で起きている異変を解決する? なにそれ。
あまりのことに呆然としているとアーリーンは満足そうに言う。
『うむ、うれしさのあまり声が出ないといったようじゃな。そうと決まれば早速転移の準備に入ろうかの。それでは……』
「「ちょっと待ったぁ!!」」
金縛り状態だったあたしたちは声を合わせて待ったをかける。
『なんじゃ? 何か不都合なことでもあったかの?』
「あるに決まってるでしょ!? なんなのさいきなり!! 突然世界のはざまとやらに呼び出されて異世界で新たな生活を送れ!? 異変を解決しろ!? そんなこと言われてはいそうですかなんて誰が言うもんですか!!」
「そうだよそうだよ!! あたしたちにはあたしたちの生活ってのがあるの!! 勝手にいろいろと決めつけないで!!」
あたしもサキもありったけの声を出して抗議する。
こちとら別に来たくもないのにいきなり呼び出されてまだいろいろとついていけてないってのに何を勝手なことばっかり言ってんのよこいつは!!
『むむ? しかしお前たちも異世界という世界にあこがれておったではないか。これからその異世界に本当に行けるんじゃぞ? うれしくはないのかえ?』
「うれしいわけないでしょ!! 元の世界に返しなさいよ!! あたしたちには家族もいるし友達だっているの! それなのに誰も知り合いがいない世界に行けるわけないでしょ!!」
「そうだよ!! 異世界に行ってみたいねって確かに言ってたけどそれはただのあこがれであって本当に行きたいわけじゃないの!!」
二人してはあはあと息を乱しながら叫ぶ。
『なんと! 本当に異世界生活ができるのに嫌というのか? あちらの世界では魔法はもちろん幻獣や神獣といった元いた世界にはいない者たちがおるのじゃぞ? 会ってみたいとは思わんのか?』
「ほーう、じゃあモンスターや魔獣って輩は出てこないのね?」
『いや、そういった者たちもおるでの。元の世界のゲームの中のような世界になっておるからな。さまざまな種族が住んで居るとても賑やかな世界じゃぞ。ほれほれ行ってみたくなったじゃろうが』
こ、こいつは~!! 事の重大さってものがわかってないな!?
「じゃあそのモンスターや魔獣はあたしたちを襲ってこないって言うのね?」
『いや、それはあるまいて。人間に全く被害をもたらさない世界がどこにあるんじゃ。ゲームの中でも勇者を襲わない設定なぞなかろうが。何を訳の分からんことを言っておるんじゃ』
やっぱり何にも分かってないじゃないのよこいつは!!!
「誰がそんな危険きまわりない世界に行きたいもんですか!! 下手したらけがどころじゃないんでしょ!? 死んじゃったりもするんでしょ!?」
『むむ、そういわれるとそれは全くないとはいえんのお。運が悪ければまあ死んでしまうかもしれんな。なにあれじゃ。元の世界でも交通事故や通り魔に出くわす可能性だってあるんじゃ。それと同じだと思えば……』
「「思えるか!!」」
なんなんのこいつは!! こっちの事情とか丸無視じゃないのさ!! っていうか何にも考えてないんじゃないの!?
「ふざけるのもいい加減にしてよね!! 半分ぼけちゃってるんじゃないの!? 誰がそんな目に遭ってまで行きたいと思うもんか!!」
『誰がぼけとるか!! 私はまだピッチピチの乙女じゃぞ!!』
「はいいい!? 乙女だあ!? 喋り方がどこからどう聞いても老人じゃないの!」
『むむむ、そこまで言うなら特別に私の姿を見せてやってもよいぞ!! 出血大サービスじゃ!! 本来なら見せることのない私の姿をその目に焼き付けるがよいわ!!』
するととたんに『声』が聞こえなくなる。
しばらくの沈黙の後、目の前に突然人が現れたのだ。
前髪をセンター分けにしていて姫カットの髪を腰まで伸ばしている。髪の色も目の色もほんのり水色がかっていて肌は抜けるように白い。巫女さんが着るような和服を着た姿はそれはそれは神々しいばかりだ。
続きを書きました。
楽しんでもらえてらと思います。