認識の違い 関係
男は、がっかりしていた。
せっかくここまで来たのに。
と、肩を落とす。
それは、目的地であるお店がやっていなかったからだ。
今の時代には、ネットがある。
店が開店しているか確認してからこればよかったのだ。
たしかこの店はホームページを作っていたはず。
確認を怠ったのは自分だ。
自業自得だと思って、男は大人しくとぼとぼと家に帰っていく。
その背中を見ていたのは、偶然店の様子を見に来ていた店主だ。
男は店主知り合いだった。
互いに愚痴をいったり、お酒をのんだりする親しい間柄だ。
遠慮なく物を言い合える存在だと、店主は思っている。
客と店員というよそよそしい間からではなかった。
だから店主は、良かれと思って男に声をかけた。
「何か用があるなら、店をあけようか」
男は振り返ってにやりと笑った。
「そりゃよかった。でも目当てはお前さんだよ。日ごろからお客様である俺に生意気な口をきいてたから、むかっぱらがたってたんだ」
その手には凶器が握られていた。