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木漏れ日の唄  作者: みい
第1章 魔女編
8/13

〜溶けて消える〜





「大変、申し訳ございません!!」


「…いや、俺が悪いからあんたは何も悪くないよ

本当ごめん」


「ぁぁぁ、私はなんということをしてしまったのでしょう….」





大きな声がシンっーーと静かな教会に響き渡る

何度も頭を下げ謝るのはこの教会のシスター

ルーシーは落ち着きなく頭を下げては頭を抱えまた頭を下げる

くるくるくるくると落ちなく動き回る

グレンも申し訳ないと何度も何度も謝る




「お兄ちゃんのほっぺ真っ赤!!」


「ほっぺ痛そう…」


「私、おまじないして治してあげる!」




 ぺたぺたと薬草付のリペリア草を何枚も何枚もグレンの頬に貼り付けていく子供達

おれも

ツンっと薬独特の匂いが鼻につく

冷たいリペリア草がヒリヒリと少し腫れている頬がひんやりと気持ちいい

子供達ができたー!と満足げに俺の顔を見つめる

それにありがとうっと伝えると少し照れながらも勉強の支度を始める




 ぎしっと少し古びた扉を開けてもらい教会の中へ案内された。そこにいたのはずっと探していた妹

言葉より先に身体が動いた

聖堂の真ん中に立ち不思議そうな顔をしている彼女に駆け寄り



「ーーエミル…!」



抱きしめた

2年間ずっと探していた妹

やっぱり生きていた…



「エミル…、よかった、よかった…」


「〜!!」



彼女をぎゅーっと抱きしめた

すると彼女の口から音にならない声とと同時に右頬に強い衝撃を受け冒頭に至る



「……」



小さなため息が出る

行方不明になった日に、あいつに….何度も一緒に探すように頼んだ

だけど….、あいつは、エミルがこの世に存在していないかのように

俺の声を聞こうとしない

顔も合わそうともしなかった



ーーグレン様、ただいま大切な会議をしております

ーージーク様はお忙しいのですよ

ーーグレン様、今は体術、魔術のお勉強のお時間なのでは




 国のお偉いさんだか何だか知らないおっさん達

は冷たい目で俺を見る

大切な家族がいなくなったのに?

顔を上げる事すらしないあいつに

ただの薄っぺらい紙にびっしりと文字が書いてある紙を見ているあいつに、エミルより薄っぺらい紙の方が大切なのかよ…

それでも俺は叫んだ、今度はちゃんとあいつに届くように止められようが関係ない




「父さん!!!」



「     」






 何を言っているのかわからなかった

シンッと静かになった会議室

どくどくと体全体に駆け巡っている血液が、沸騰したかのように身体全身が熱く燃えているようだった



「グレン様、こちらへ」



と警備兵に腕を掴まれ扉の外に連れ出された

ふわふわとしていて、どこか宙を待っているかのような感覚だ、耳鳴りが酷く五月蝿い

じっと警備兵は俺を見ると深々とお辞儀をして職務につく

何事もなかったかのように、何も聞こえなかったかのように



あいつの言葉が頭の中にこびりついて離れない

頭を振って



何度も  何度も



嘘だ   嘘だ



嘘だ   嘘だ!!



そう、自分に何度も何度も言い聞かせる






ーーー 死んだよ





その言葉が頭から消えない

走る、走るどこに向かってるのかわからずにただひたすらに

毎日呼吸をしているのに、それがうまく出来ない

体が震えて、ろくに走ることもできない

それでもおぼつかない足で走る、ぁっと小さな音が出た瞬間にはもう、広い廊下に倒れていた

手足が擦りむけてじんじんと痛む、口から音になるはずの空気が掠れて綺麗な音が出ない





「….お兄ちゃん」



「エミル、もう目を開けていいよ」



こっそり城を抜け出して、隣町のハルルヘエミルを連れて行ったことがある

ハルルの街は灯りが綺麗な町で有名であった

エミルは『欠陥』と呼ばれる存在だった

『欠陥』はこの国では生まれてきてはいけない存在、厄災を招くと言われていた

父さんは秘密裏にエミルを地下深くに母さんと一緒に幽閉した





「ほら、綺麗だろ?ハルルの街は灯りが綺麗なところで有名なんだ!もっと奥にいってみよう。可愛い小物も沢山あるんだ!….大人になったら、一緒にあそこを出て旅をしていろんな国を見て回ろうよ、きっと楽しいと思うんだ」



笑ってくれると、喜んでくれると思った

だけど、エミルは








「お兄ちゃん?」






ーーはっと顔を上げる

心配そうな顔で見上げる子供達とルーシー




「ほっぺたまだ痛い?」


「すみません、私はまだ治癒術があまり使えなくて….」



「いや、ありがとう。もう大丈夫だ

元々俺がちゃんと確認しなかったんだし」


「…..あの、エミルさんという方は」


「ぁあ、妹なんだ。探してるけどなかなか見つからなくて」


「…そうだったんですね」


「だから、ギルドに入れば情報が少なからず入ってくるんじゃないかって思って。色々と散策してるんだけどまだまだ手がかりがなくてさ」



ギルドに所属して、訪れた所でエミルの情報がないか聞いて回った

でも、それらしい情報はなかなか手には入らない



「……あの、人探しなら、『魔女』に尋ねてみるのは如何でしょう」


「…『魔女』?」


「…はい、北のはずれにある『ミーミルの森』の洞窟付近にいるという噂が最近ありまして」


「ルーシー、おやめなさい。最近魔物も増えてきています。森に近づくのは危険です。

…それに、行方不明者も多く出ております

何があるかわからないのに危険な目に合わせるわけにはいけません」




ここ最近増えている行方不明者の捜索要請はギルドにも多数寄せられていた

ここだけじゃない、各地で行方不明者が出ているのは確かだ。魔物に襲われたのか、遺跡に行って帰ってこない者もいる





「その、『魔女』って本当にいるのか?

もう、100年前にはもう魔女狩りでいなくなったんじゃ….」


「商人さんが少し前に森に立ち入った時に

”彼女”を見かけたそうなんです…。魔物も率いていたとのことで、不気味で怖くて逃げたそうなんですが….」


「….」


「あ、あの….、変なことを言ってしまい申し訳ございません。その、少しでもグレンさんのお力になれたらと思って…。幼い頃に読んだ本に『魔女』は何でも知っていると書いて」



絵本なので、御伽噺ですけど…と

声が小さくなるルーシー

もし、その『魔女』の噂が本当なら、魔物も引き連れてるなら尚更その洞窟に行かないといけない

それに最近起きている魔物の異常発生とあのカミル大池付近の得体の知れない魔物のことだってそいつに会えば分かるかもしれない



「明日、その森に行ってみるよ。魔物を率いてるなら尚更。ここにも危険が及ぶかもしれない

それに、行方不明になってる人達も中にはいるかもしれないだろ?」


「しかし….」


ミリアは額にシワを寄せ、心配げに見つめる


「危険だからって、はいそうですかやめます。なんてそんなことできるわけないだろ。

それに、本当に『魔女』がいたなら会って直接話を聞いてみたいしな」

   

「…..」


「とりあえず、明日の早朝その森に行ってみるよ。装備も整えていかないとな…。ガーフィーさんにもこの事、伝えてと…」


「……『魔女』は国一つ滅ぼすほどの魔力を持つと言われております。どうか、危険だと判断した場合はお逃げください….。人鬼戦争に参加していた魔女なら尚更です」



「ぁあ、ありがとう、ミリアさん」



「いいえ…」


まだ不安げな顔のミリアに子供達が勉強がわからない!とそのままミリアを連れて行ってしまった

その後、教会の掃除、壊れていた場所の修繕作業を手伝い、飯をご馳走になりすっかり日も暮れ夜になっていた

ルーシーと子供達は教会の外まで送り出してくれた。にこにこしながら、またね!と手を振り教会の中へ戻っていく

夜はまだ肌寒く、吐く息がまだ白い

色々と今日聞いた『魔女』について考える



「グレンさん!」



あの…と小走りで駆け寄るルーシー


「今日は、本当にいろいろと申し訳ありませんでした…『魔女』の事も…でももし、本当に噂が本当なら『魔女』がいたらグレンさんの妹さんの居場所聞き出せるといいなとか…

これ、地図です…森へ行く道は入り組んでいて迷ってしまうといけないので…それと、お守りも子供達と一緒に作りました」



手に渡されたのは手作りの可愛らしいお守りと地図だった



「ありがとう、大切にするよ。明日また『魔女』について報告しにくるよ」


「はい!お気をつけて」


お互いに手を振り

朝来た道を、空を見上げながら歩いて行く

        『魔女』

もうこの世に存在していないとされる膨大な魔力を持つとされている者達

100年前、悪鬼、人間との戦争に加担しアスール国に力を貸したとされている

だが、その魔力は敵味方と関係なく一夜にして悪鬼の国が無くなり、そして見方をしたとされているアスールの兵士達のほとんどの命を落とした

国王、カルナ•アスールは彼女達を『裏切り者』として指名手配し世界各国から魔術師、兵士を集め魔女狩りが行われた




「『魔女』…」



その言葉は、冷たい空気に溶けて消えた

幼い頃、エミルと一緒に絵本を読んだ事がある

それは、恐ろしい”彼女達”の御話

静まり返っている夜道をゆっくりゆっくり歩き1番明るいミミリア星を見つめまた足を進める






「ーー昔々、7人の魔女がいました」





本棚から絵本を取り出し冒頭から読み進める

蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れる




本を捲る音と




「悪さをした『魔女達』は、駆け付けた王子様に倒されてしまいました

そして最後の生き残った1人は」



小さな声が



小さな灯りと共に暗がりに消えた




ひとりぼっちの魔女は



寂しくて  



寂しくて



苦しくて



そして




強く



強く



その寂しさを掻き消すように




沢山の人を喰らえば
























私も『人間』になれるかしら























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