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木漏れ日の唄  作者: みい
第1章 魔女編
7/13

〜君へと繋がる〜




「 どうだ?あの子の様子は」


「…今はぐっすり眠ってる、話を聞くのは落ち着いてからの方が良さそうだ」



あれからしばらくして、子供は倒れるかのようにまた眠ってしまった

赤く瞼を腫らした翠の宝石の様な目から溢れ出したのは、恐怖と拒絶を強く表した色だった

ポロポロと恐怖が頬を伝いこぼれ落ちて床に何度も何度も床に落ち、小さな身体は必死に「助けて」叫んでいた気がした




「 先生、あの子の治療費入院費はギルドの方に付けておいくれ」


「あいよ、あんたらも大変だね。不思議な魔物まで出てきて、それに灰色の粒。まだ外因がわかっていないんだろう?」


「まぁ…、魔物も消えちまったしな…」



はぁっと苦虫を噛んだような顔をするガフィーは深いため息を吐く



「何にせよ、無理するでないぞ

あんた達ギルドのおかげでこの街の生活物資も何とかなっておる。ここの街は今は老いぼれと子供しか残っていないからね…。若いもんみんな、外に働きに出てしまってな。…これからもよろしく頼むよ」



ーー傷の処置をしてくるよ、と院長は重い腰を上げ子供のいる部屋に入っていった



「 グレン、お前はあの子が目覚ますまでここに残って街の手伝いをするんだ。俺は明日もう一度あの亀裂を残りの帝国軍と調査してくる。この街も安全も守るのも俺たちの役目だ」



「了解」



「それに、お前は以外に子供に好かれるからな、お前の方が適任だろう」


「?」



ガフィーは窓のほうをチラッとみると10歳ほどの子供達がこちらを物珍しそうに見つめているがガフィーが子供達にニッと笑いかけるとサッと隠れて逃げてしまった




「….」


「ガフィーさんはは顔が怖いからな」




ぼそっと言ったグレンにグレン!っと大きな声を出し睨むガフィーを逃げるように立ち上がり外に飛び出すグレン

実は怖い顔はガフィーのコンプレックスである



「じゃ!俺は手伝いしてくるよ!」



走ってその場を後にするグレンの後ろ姿を見てため息を吐く



「まったく…」


「はっはっは、若いもんは元気があっていいことだよ。」




終始話が聞こえていたのか、カラカラと笑いながら治療を終えた院長が出てくると、井戸から引きあげてきた水を小さな鍋に入れ火の魔術で火をつける




「あいつは元気がありすぎていつも手を焼いているよ」




親の顔のように優しい顔で資料などを手に持ち目を通す。

コポコポとお湯が沸く音がし院長はコフィン茶をコップふたつ淹れ、お湯を入れるとガフィーの前に出す




「すまないな、ありがとう」


「 なぁ、ガフィーさんよ

少しいいかい?あの子供のことなんだが….」


「?」











ーーーーーーーー









「わぁぁ!!!お兄ちゃんのお耳長いね!!」


「ねぇねぇ!お兄ちゃんのお腹割れてる!!かっこいい!!」


「お兄ちゃんはどこの街から来たの?」


「あの怖いお顔した人はだぁれ??」


「ねぇ!お兄ちゃんあの魔物を探しにきたの?!それとも教会の新しい先生?!」




その頃グレンは、逃げた子供達に囲まれていた

探していたら突然こちらに向かって走ってきて5人の子供に抱きつかれたのだ




「ちょ!?まてまて!いったん落ち着けって!」




きゃっきゃっとグレンに興味津々の子供達はキラキラした眼差しでグレンを見つめる

都市と離れているため出稼ぎが多いこのフィムの街は子供と年配方と小さな教会にいる修道女の2人のみ

親は子供と会うのは数カ月に2回ほど

その為、子供達は読み書きの勉強,食事の提供を全て教会で行っている



「俺は月影って言うギルドで働いてるグレンだ。あの魔物の調査と、あとはここの手伝いをしにきた、少しの間だけどよろしくな」



子供達みんなの頭をわしゃわしゃと撫でるとそれが嬉しいのかニコニコ人懐っこい笑みを浮かべ1人ずつ自己紹介を始める

 エルフの女の子は、ココナ歳は10歳

人族の男の子はカロン、ココナと同じ10歳

獣人族の男の子はココナと手を繋いでいて名前はクウ、歳は7歳

同じく獣人族の女の子アロア、歳は8歳

そして、俺と同じ種、竜族の男の子アル歳は8歳

みんな元気で笑顔が似合ういい子達だ

 でも、これは非常にまずいことが起きた、変な汗がダラダラと流れる

平静を装いながら彼が知らないことだと願いながら、アルの目線に合わせてしゃがむ



「なぁ、アルに聞きたい事があるんだ」



「なぁに?僕の知ってることならなんでも教えるよ!!」



「あのさ、…俺の顔見た事ある?」



頭の上にはてなマークがたくさん浮かぶアル

う〜んう〜んまじまじと俺の顔を見て首を傾げる


「ううん!初めて見たよ!どうして?」


子供達は首を傾げ不思議そうな顔で俺をみる

俺はホッとして胸を撫で下ろす


「いや、なんでもない。ごめんな、変なことを聞いて」


ううん!とニコニコしながら俺の手をとって遊ぼ遊ぼ!とはしゃぐ


「ぁー、俺実は子供の頃、遊びというのをしたことが無くてさ

今何が流行ってるのか教えてくれるか?」



えー!!そうなの!?と驚いた顔をする子供達はなにして遊ぼうかな!と輪になって話し始める

俺は、小さい頃から剣術体術作法やら何やらを叩き込まれた。遊びという文字は俺の中ではなく

それが嫌でこっそり抜け出して地下牢にいる母親と3つ下の幼い妹に会いに行っていた

それが俺の楽しみだった



「決めた!!」


「おお、何するんだ?」


「えっとね、かけっこ!あの教会まで競争だよ!お兄ちゃん!」



よーいドン!っとはしゃぎながら走っていく

おにいちゃん早くー!!と手を振りながら



「あ!いきなりはずるいぞ!」


「わー!!お兄ちゃんがきたー!逃げろー!」


「きゃー!!!」










ーーー





「僕一番!」


「私2番!」


「お兄ちゃん最後!えへへ〜!」



はしゃぐ子供たちの後についた俺は

目的地の教会に着いた

教会にしてはボロボロで教会と言えるような

建物ではけっしてなかった

フィムの街は砂漠に囲まれており、水はカミル大池か井戸の水が湧き出ればそれを使う

小さな小さな町、死んだ町と誰かが酒屋のおっさんたちがやっていたのをぼんやりと聞いたことがあった



「お兄ちゃん!ここが教会!俺達がご飯食べたり、勉強したりするところなんだよ!」


「でもね!教会には怖いミリアおばさんがいるの!」


「ちゃんと勉強しなさい!ご飯残さないで食べなさい!って怖い顔で」



ミリアというおばさんの怒った顔を楽しげに真似るココナとクウ

凄い似てる!くすくすと笑うアル達の目の前の扉が開く



「誰が怖いですって?」


「「「「「あっ」」」」」




ニコッと笑う40代半ばの女性

5人が見事に声を揃え顔が青くなると俺の後ろに隠れる




「あ!こら!」


「ミリアおばさんごめんなさい!!」


「…」




よほどこの人が怖いんだなと苦笑いするグレン

コホンっと咳払いをするとミリアはグレンを見て深くお辞儀をする



「お客様、子供達がご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません…。申し遅れました、私はこの教会の司祭をしております、ミリアと申します」


「あ、いや…俺が遊んで欲しいって頼んだんだ

迷惑とかかけてないよ

俺はグレン。グレン•ロウリエ。アスールで月影って言うギルドに所属してる。何か手伝える事はあるか?」


「ギルドの方だったんですね、遠くからわざわざありがとうございます。さ、まずは中にお入りになってください。お疲れでしょう」


ミリアが扉を開けた途端に、お姉ちゃんー!と隠れていた子供達は走って教会の中に入っていく



「さ、グレン様。小さい教会ですが…ゆっくりなさってください。ただいまお茶をお持ちいたします」




ミリアに案内され教会の中に入ると、初めてみるステンドグラスに目がいく

キラキラと太陽の光に照らされて眩しい




「あら、珍しいお客様ですね」




ーーーー にーさま



そこにいたのは



ーーー グレン、この子を頼みました





「ようこそいらっしゃいました」







2年間探していた妹だった












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