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木漏れ日の唄  作者: みい
第1章 魔女編
6/13

〜傷〜





      紅く燃え盛る森、崩れ落ちる木々




        あつい、熱い…苦しい…

     逃げることができかった動物達の声

       初めてみる、大きな黒い生き物

   



ーーーやめてよ




     それは赤い光をまた森に投げる

     森は更に大きな紅へと変わっていく

    



  

ーーーもう、やめてよっ!!





        叫んでも叫んでも

     見たこともない知らない生き物に

        声は届かなかった



         ごめんなさい



        優しい声が聞こえた

      今にも泣きそうで苦しそうな声で

      ずっと誰かの声が聞こえていた




          ごめんなさい




     その声は、誰かにずっと謝っていた




   森が紅染まり木々が倒れその声は聴こえなくなった






    







ーーーーーーーーーー






「…..っ」




身体が痛い

全身が暑くて、悲鳴にならない声が喉から漏れた。

ーーチチチッと小鳥の声。 

耳に自然と入ってくる心地の良いその音を聞いて、ぁあ…夢でよかった。僕は嫌な夢を見ていたと、さっきまでの痛みは嘘の様に引いていくのを感じ目をゆっくり開ける

喉はカラカラなままだった。まるで久しぶりに喋ったかのように口の中は乾いていた

僕は瞬きを数回繰り返した。見たこともない変な所。

ーーここはどこだろう、なんだかふわふわしている。

起き上がろうと身体を捩る。しかしうまくいかなかった。ただ身体を起き上がらせるだけだというのに、嘘みたいに腕に力が入らない。起きる動作なんて毎日やっていることなのに…それが出来ない。



ーーー コトンっと音がする、びくっ!!と肩が揺れ恐る恐るその方をみる。驚いた顔をしているその人は、夢に出てきた生き物と同じで、ひゅっと枯れた音が喉から聞こえた。身体が冷えていく感覚、震えが止まらなくて怖くて怖くて



「 ぅ、ぁぁぁぁぁっ  」



全身痛いのにそんなことも忘れてあんなに体を起こすこともできなかったのにそれが嘘の様に立ち上がることができた



ーーーが



「おいっ、大丈夫か?」



その人は僕に手を伸ばす

赤い光を森に放った人達の手と重なって、後ろに逃げようにも立ち上がることはできたこの足は動かなくて,身体が思う様に動かなくてやっと一歩後ろに後退できたと思ったら,力が入らなくて倒れこむ、もうダメだと思った、でもその時優しい声がその人から聞こえた



「ごめんな」



びっくりさせたな、と先ほどの伸ばされた手は僕を捕まえず頬をかく



「俺はグレン、グレン•ロウリエ。お前、コスモ砂漠付近で倒れてたんだ。服もボロボロ、脚も重度の火傷をしていた。何があったんだ?魔物に襲われたのか?」


「….」



 その人は、安心させるかのように少し離れた場所で優しくゆっくり声をかける

引いていた足の痛みがじくじくと痛み出す感覚

脚を見ると白い何かが巻いていて赤い液体が染みていた。

 あれ….とふとあたりを見渡す。….コハク?リコリス??と周りを見るけど大切な友達はどこにも見当たらない。ポロポロためから泪が溢れ出す。それは留まることがなくどんどん,どんどん溢れ出す。もう、2人はいないのかもしれない…

この人から逃げて、きっと2人は捕まって…

悲しい,寂しい,苦しい

思うたびに溢れ出すぐちゃぐちゃになって、あの時、どうして長老は僕たち3人ならと託したんだろう、どうしてどうしてともういない長老に聞いてみるも返事は返ってくるはずもなく

僕の泣き声とおろおろするその人の戸惑いの声

そして,優しく囀る小鳥の声だけが聞こえていた。










ーーーーーーー






 3週間前 フィムの街中央区

繊維の街で知られているフィムの街に朝日が照らした頃

街で唯一ある小さな街医者は深いため息を吐く



「大丈夫なのか?」



「 治療は終わったよ、あとは安静にしていれば脚も治ってくるはずだ。 それに、ワシもみた事のない種だ。どこの国から来たかも分からん…。こんなひどい火傷を負ってるもんだから、逃げてきたのやもしれんしな…。お前さん達がきたアスールの図書館を調べるのはどうだい?」



医者は椅子から腰を上げ、窓を開けるとふわりと優しい風が吹く。眠っている子供の柔らかいそうな緑色の髪はふわふわと揺れる。



「最近、見た事もない魔獣も増えてきてると話が出ている。あまり無理するんじゃないよ。しばらくは,この子はここで診るよ」




と医者は出て行く。

まだ目が覚めない子供を見つめる。

まだ肌は汗ばんでいて魘されている。この子は一体、魔物との関係はあるのか、灰の粒の正体はなんなのかとグルグルと頭をめぐる




「グレン,とりあえずこの子は目が覚ますまでは何も始まらない。俺たちは今やるべき事をやりにいくぞ。」


「ぁあ,わかってる」



呼吸もまだ少し荒い子供をじっと見つめる

頬はこけて青白い、頭に生えてる葉っぱ…なのか?それも少し萎れている。

近くにあったタオルを水に浸して固く絞ったそれを子供の額にのせる

ひんやりとして気持ちいいのか、子供の顔が少し苦しさから逃れたようにほぅっと息をする



「 もしかしたら、この子の仲間、家族もどこかにいるかもしれない。この子のように怪我をしている可能性もある。魔獣から逃げてきたかもしれんしな。そろそろ出発しないと間に合わんぞ」



再び荷物を背中に背負うガフィー。

グレンの背中をパシっと叩いて立ち上がり医者と話をしている。

呼吸が整ってきた子供を見て立ち上がる。

ーー家族も早めに探してやらないとまだ小さいのに。女の子1人で寂しいだろう

よしっ、と意気込んで外に出る。

先程よりも陽が昇り始め、フィルの街をキラキラと朝日が照らしていた












ーーーー







「 魔獣がいなくなった?」


「はい、我々が物資を取りに戻った際にはもう魔獣の姿見えず、見張りの者達が言うには朝日と共に消えたとの報告がありました。今はその調査中でして…」



カミル大池で待ち合わせていた帝国軍と合流したものの大群で襲ってきたと言われる今まで見たこともない魔獣達は朝日と共にその姿を消したらしい。

確かに、ここに来る際にいつもいるはずの魔物もその見たこともない魔獣も一匹も見かけなかった。静かで怖いほどに。



「 今まで襲ってきたゴブリンも見かけないとは。やはり、あの灰の粒との関係性を調べるほかありませんね。魔獣が出たのも昨日だ、粒が降り出した時刻と大体同じ….。」



帝国軍団長指揮官のクラウは地図を見つめ、はぁっと溜め息をつく

徹夜をして今まで襲ってきた魔獣が消えたとなるときがきじゃない



「少しの間休戦といったところか….」


「なぁ、クラウさんちょっといいか?

俺たち、怪我をして倒れてる子供を見つけたんだ。俺たちも見たこともない種族の子供で、家族、友達もどこかにいるかもしれない。緑の髪の頭には、葉っぱみたいなのが生えてるんだけど、それらしい人物見かけたりしなかったか?」


「….緑髪の子供、….悪いが見かけていないな

もしかして、その子が怪我をしてるんだったらその家族もまた怪我をしてるかもしれん。どこかの街医者に診てもらってる可能性もあるな。こっちでも調べてみよう。せっかくきてもらったのに,魔獣もいないんじゃ足を使わせたな….少しでも力になるよ」


「ありがとう,助かります」




気にするな少年と少し疲れた顔をしたクラウは

自分の部下に話をかけに行く



「もしかしたら、あの子供と魔獣の出現灰の粒に関係があるのかもしれないな。別の隊も緑髪のやつは見たことねぇって。どっかに避難してればいいけどな。それに1日今日はここで待機だ。魔獣が出てこないんじゃ話にならねぇーーー!?」




ガフィーはやれやれとグレンの元に来た瞬間

ドンッ!!!っと地面が割れたような、大きな何かが地面に落ちたような音が鳴り響き地面が裂ける。音が鳴った方向、カミル大池より少し離れた場所ををみると煙が黙々と立ち込めていた



「 な、なんだ、あれ….」


「…魔物か….?」



モクモクと煙が立ち込めているところをじっと見つめると裂けた地面から黒いドロドロとした物が這い上がってきている。それは形という形はなく液体とも言える。離れていてもそれから発せられている今まで嗅いだことのない悪臭がここまで流れてくる。


ーーーーーグォォォォォー…..


すると突然、上から重力を押し付けられたような思い咆哮が轟いた。

みしみしと固く頑丈に作られた包囲網が音を立てる



ーーーーーグォォォォォ….



形も成さないそれは、徐々に蒸発していき出てきたであろう裂けた地面へとゆっくり戻っていく

それはどこか悲しい、苦しそうな声だった




「一体なんだったんだ…..??」


「各隊!直ちにあの場所の調査を開始する!あの得体の知れないものが這い上がってくる場合もある慎重に調査しろ!。ガフィー、グレンお前達も頼む。一番隊について行ってくれ」


そう命じると、クラウは各隊員にいそいそと指示を出す。


「行くぞ、グレン!」


「ぁあ!」


「ガフィーさん、グレンさんこちらです!」



帝国軍一番隊隊長のコフィーに連れられ駆け足でその場所へと向かう。悪臭は近づくに連れ強烈になり獣人族の隊員達は鼻を押さえていてもヨロヨロしていて今にも倒れそうなくらい。ガフィー、グレンもまた苦い顔をしながら近づくと、そこは世界が割れたような亀裂が走っており落ちたらもう2度と戻ってこれないほどの深さだった。辺りは焦げたような跡も残っている




「何もないな….それに、どこか焦げた匂いも混じっている…..あの変な魔獣はこの中なのか…ぅぅっ…酷い匂いだ…..」


「 ガフィーさん、これ…」


「….っ、なんだ…?これは、いき、てるのか…?」



それはドロドロとした魔獣の物なのか,ドロっとした塊が落ちていた。それは脈打つようにドクドクと動いている。

すぐに、隊長達を呼びこの事をマテリーア国に報告された。生きている塊はミミールの森の奥深くにある研究所に運ばれた。







ーーーーーー




「はぁぁ〜、やっと終わった….」


あれから3週間、カミル大池付近に現れたドロドロの魔獣は現れなかった。他の見たこともない魔獣も姿を見せることはなく、亀裂に結界を張る作業を手伝いをし終えた所だった。

あの、生きているであろう物体の調査はまだ続いている。



「グレン、そろそろ引き上げよう。あの子の様子も見に行かないとな。しかし、3週間探してもあの子の家族は見つからない。万が一のとこを考えて、ギルドに置くことも考えている」


「ギルドに?」


「そう、ギルドにいたら家族の手がかりが見つかるかも知れないだろう?まぁ、あの子次第だがな。でも、俺は大歓迎だ。俺たちのギルドは人数が少ない。でも、人1人増えたら助かるってもんだよ」


ニカッと笑ながらに作りの準備をしているガフィーは重たい荷物を背中に背負うと団長に話をしに行く。

ーーでもそれは,ギルドに入る入らない以前にあの子供の心の傷が大きい事にまだ、俺達は知らなかった











ーーーーーー






フィムの街に到着しあの子供がいる病院へ向かう

院長は渋い顔をしながら、まだ目が覚めていないと。悪い夢を見ているのか、うなされていると。

その子供が眠っている病室を覗こうとした時

トタンッと音がした。何かが倒れたような音。

病室を覗くと、その子供が大きな目を見開いて俺と目が合う



「お、おい…大丈夫か?」



声をかけるとカタカタ震えだす、思わず手を伸ばす



「 ぅ、ぁぁぁぁっ 」



強い拒絶と恐怖が混じった叫び声、大きなな翡翠色の目からポロポロと泪が溢れ出す

怯えた体で、後ろに後退するも火傷を負っていた脚は簡単に崩れ倒れ込む

その子供は、また更に泣き叫び。音になっていないその声は病院内に鳴り響いた。




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