第39話 初めましてからのアヤネ無双
「みんな同じくらいの背だし、リアルでも友達なの?」
アヤネの問いかけに杖を持った女の子が答える。
「いいえ。私たちはさっき会ったばかりですよ」
「え!?さっき会ったばっかりの人と2層に行こうってなってたの?」
それには大鎚を持った男の子が答える。
「そうだぜ。俺たち、ガキだからパーティーに入れてもらえなくてよ。同い年くらいの人ならパーティー組めるかもって思ったんだよ」
「そうだったんだ。あ、とりあえず名前教えてよ。私はアヤネね。よろしく」
「私はカナタです」
「俺はトールだ」
「私はモナ、です」
「私はレイナ」
「僕はシュウです」
「僕はウォルです」
それぞれの自己紹介が終わり、アヤネは確認がてら全員の名前を呟いていった。
「杖の女の子がカナタで、大鎚の男の子がトール、弓の女の子がモナで、剣の女の子がレイナ、槍の男の子がシュウ、だね?」
「「「「「はい」」」」」
5人は返事をするが、1人だけ黙ったままの少年がいた。
「僕だけ確認されなかった」
1人だけ確認されなかったことで少しショックを受けたウォルだ。
「いや、だっていらないでしょ。元から知ってるんだし」
アヤネがウォルにそう言うとウォルは「たしかに、そうだけど.....1人だけ確認されないのは寂しい」と言った。アヤネはその言葉をスルーしてみんなに呼び掛けた。
「よし、じゃあ作戦会議でもしながら歩こうか。とりあえず、カナタちゃんとモナちゃんは遠くから攻撃しといて。ウォルくんは途中からその2人を守ることになると思うけど、最初は前にいて。他の子たちは近寄ることになるけど、大丈夫?」
アヤネがざっくりとした配置や動きを説明する。それに反対する者もいなかったため、アヤネは「じゃ、そういうことで」と作戦会議を終わらせた。
ウォルは「あれ、会議ってなんだっけ?」と思ったが、スルーした。
「私は基本、遊撃しながらサポートするから。危ない人がいたら助けるよ」
全員の動きが確定したところでちょうど目的地に着いた。
「ここだよ」
「どうやって、入るんですか?」
モナがアヤネに聞く。それはそうだろう。階段もなければ、転移結晶もないし、扉もない。入り口が見当たらないのだから。アヤネも最初は驚いたものである。ユアがいなかったら入れていたかどうかすら怪しい。
「私に付いてきて」
アヤネはそう言って大きな木の周りを歩く。残りの6人はアヤネに付いていく。そして、1周したところでアヤネが止まる。
「ん?なんにも起きねーぞ?」
何も起こらなかったため、アヤネにトールがそう言った瞬間、7人の体が光に包まれた。
「うわっ!?」
「「「!!」」」
そして、2層に行くために倒さなければはらないモンスター。ゴリラの元へ転移した。
アヤネは転移した直後、影から【煙玉:麻痺】を取り出してゴリラに投げつけた。それが当たったゴリラの動きが止まった。
「はい、みんな、作戦通りに」
「おう」
トール、レイナ、シュウ、ウォルの4人がゴリラに向かっていく。
「じゃあ、2人はバンバン撃っちゃっていいからね」
「「はい」」
アヤネは遠距離攻撃組のモナとカナタにそう言い残してゴリラに向かっていった。【気配操作:1】にして。
「あれ?アヤネさんが消えた?目の前にいたのに」
「噂通りなのに目の前で見せられると信じられないね」
「そうだね」
噂通りの現象が起きてモナとカナタはとんでもないプレイヤーと関わりができたんだ、と再認識した。
◇◇◇
「【インパクト】!!」
麻痺中のゴリラの元に一番にたどり着いたトールがSTRが1.5倍になった状態で大鎚を振り下ろす。
さらに、レイナが追撃する。
「【ダイヤモンドスラッシュ】!」
この2人の攻撃だけでゴリラのHPの6分の1を削った。
レイナの攻撃が終わると同時に麻痺が解けたゴリラは衝撃波を付けて腕を横薙ぎに振るう。
衝撃波が当たるくらい近くにいたトールとレイナは衝撃波を受ける直前でモナとカナタがいる場所まで転移した。
「「うぇっ!?」」
「うっ、......あれ?」
「え.....なんで?」
その原因はもちろんアヤネだ。トールには【火遁】を、レイナには【水遁】を使って範囲外へ逃がしたのだ。さらに、ゴリラが衝撃波を使ったことでウォルとシュウも攻撃を受ける場所にいたためアヤネは【変わり身】でシュウの側に転移して土に潜った。
「【土潜り】!」
アヤネは間一髪でシュウを攻撃から守った。
「危なかったね」
「え?アヤネさん?何が起こって、」
「私のスキルでちょちょい、と」
説明になっていないが、シュウは混乱状態で「そうなんですか」としか言えなかった。
【土潜り】の効果時間が終わり、地上に戻ってくると、ウォル以外はちゃんとノーダメージで立っていた。ウォルは衝撃波に押されて尻もちをついてはいるが、HPの5分の1を削られているだけで大丈夫のようだった`。
「アヤネさ~ん、ヒドイじゃないですか!僕だけ助けないとかいじめですか?」
倒れていたウォルが起き上がりながらアヤネに怒る。
「だって、ウォルくんは死なないだろうし、良いかなって」
「良いわけないでしょ!!」
「あ、攻撃くるよ」
「え?うわっ、!」
ウォルはアヤネが見上げているため、自分の上を見上げるとゴリラの足がすぐそこまで迫っていた。ウォルは咄嗟に盾を地面と平行にして上に掲げた。その瞬間にゴリラの足が盾を踏みつける。
ウォルが「もう.....無理」と呟いたとき爆発音がして盾にかかっていた重みが消えた。
「.....え?」
後ろに振り向くとバランスを崩しているゴリラがいた。
「ウォルくん!早く逃げて!!」
ウォルはその声の持ち主がこの状況を引き起こしたのだろう、と推測し、アヤネの元へ走り出した。カメのような遅さだが。
ウォルの推測通り、アヤネが【焙烙火矢】をゴリラに投げてウォルを救出した。
「戦闘中にポカンとしない」
「アヤネさんにも原因があると思うんですけど」
「はい、トールもレイナも戻ってきたから攻撃しておいで」
アヤネはそう言ってシュウとウォルを送り出した。そして、自分は【隠密】を使って気配を薄めながらゴリラに近付いていった。
◇◇◇
「アヤネさんってぶっちゃけたら化け物だよな?」
「ぶっちゃけすぎてるけど、そうね。化け物ね」
「アヤネさんのおかげで戦えてるようなもんだからな」
「忍者一派って呼ばれるプレイヤー達も化け物らしいよ」
アヤネに助けてもらったばかりの4人の会話とは思えないが、事実を確認し合っているようだ。
ゴリラが4人がいる方へ走ってくる。シュウもゴリラに走っていく。ゴリラが振り下ろしてくる拳を躱しながら近付いていき、足を斬りつける。
「【地垂斬り】」
地面に垂直に槍を半身の状態で振り上げる。スキルを使い終えると、さらに攻撃を仕掛ける。
「【パワースラスト】」
もう一度足を攻撃して、一旦離脱する。
シュウが【地垂斬り】をした頃にゴリラの拳に乗り、肩の辺りまで登ってきていたレイナがシュウの離脱と同時に背骨の辺りを斬りながら落ちる。ウォルがどうにか頑張ってレイナの落下地点に移動して盾でレイナを受け止めた。レイナはウォルの盾を踏み台にゴリラの背中に跳び乗る。
「【スラッシュストリーム】」
レイナがまたもや落ちながら8連撃を背中に加える。そして、ウォルが受け止めて地面に降ろす。レイナが足を軽く斬りつけてトールがいる場所に向かう。ウォルもゴリラの足に近付いてダメージを与えていく。
「【シールドインパクト】!!」
盾をゴリラの足に叩きつけてゴリラから離れる。
トールはレイナが8連撃を加えていたとき、ゴリラが振り下ろしてくる拳を躱しては殴るを繰り返していた。
「【インパクト】、【インパクト】」
その時、ゴリラが全方位に衝撃波を飛ばした。
「!!」
そして、トールの前に土の壁が現れた。それに驚いているとレイナとシュウがトールの近くに現れた。
「まただな」
「そうね。あれは躱せないもの。それを分かってるからこそのこの処置でしょ」
「今度もウォルくんが見捨てられると」
「それは違うかな。【影潜り】」
トール、レイナ、シュウ、アヤネ、ウォルがアヤネの影の中に沈んだ。
「「「!!!」」」
「今度はちゃんと全員助けたよ」
「こんなこともできるんですか?」
「スキルだけは強力だからね」
「でも、どうやってウォルくんも助けたんですか?かなり離れてたはずですけど」
「言ったでしょ?スキルだけは強力だって」
アヤネは最初、トールの近くにいたため、トールを守るように【土壁】を立て、【神速】でレイナとシュウの近くに行き、【火遁】と【水遁】を使ってトールの隣に転移させ、その後、ウォルを捕まえてトールの後ろに戻ってきた。そして、【影潜り】で【土壁】が突破された時の保険として潜ったのだ。
5人が影から出てくるとゴリラのHPゲージが黄色になっていた。




