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「俺はもう、やり残したことがないんだ。この次になにをすればいいのか、正直わからない。映画の完成は間近だ。この先なにをすればいいのか、まるでわからない。こんな気持ちになったのは初めてだ。自分でも信じられない。俺は今、全てに満足をしている」

 キースの表情が、神のように見て取れました。偶像なんかじゃない、本物の神です。全てを信じ、さらけ出したくなる。そんな気持ちにさせる表情でした。

 僕は反論をするつもりでいましたが、言葉が表に出ませんでした。

「これからまたツアーが始まる。今度は遠くに行く予定だ。お前ともまた、しばらく会えなくなるかもしれないな。そっちの仕事も忙しいんだろ?」

 顔を合わせて言葉を交わしたのは、この時が最後でした。今になって思えば、この時にはすでに、キースは死んでしまっていたのかもしれません。常になにかを求め、やりたいように生き続けてきた男でした。転がり続ける人生を全うしていた男にとって、最大の敵は、満足をすることだったのかもしれません。次へのやる気を失ったことは、転がることを止め、立ち止ってしまったのも同然です。つまりはそう考えた時点で、キースは死んでしまったということです。

 その数日後、キースは僕が手配した飛行機に乗り、異国の地に辿り着き、なんの意味もなく殺されてしまいました。ミックもチャーリーも、ロンも一緒でした。

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