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 ジャジョーカはキャリア三十年を超えるベテランで、ライク・ア・ローリングストーンとの交流が古くからあるバンドです。キースは影響を受けていることを何度も口にしていました。

「キースの頼みとあったら断る理由がない。それにしてもキースは面白いことを考えるね」

 ジャジョーカはライク・ア・ローリングストーンとはまるで違う音楽性を持っています。どちらかというと、ブライアンが求めていた音楽に近いのかもしれません。世界各国の楽器を使用し、失われた歴史以前の古い音楽を再現しているかのようです。民族音楽という言葉を、本人たちは使用しています。

「ライク・ア・ローリングストーンを嫌いな人間なんていないでしょ? バンドマンなら得にそうだ。悔しいけれど、ライク・ア・ローリングストーンがいなければ、今の私たちはいないんだ。目指す音楽は違うかもしれないけど、尊敬もしているし、影響も受けている。同じステージに立てるのは、楽しみだね。今までにも何度か同じフェスティバルに呼ばれたことはあるのよ。けれど一緒に歌うのは、初めてだね。どんなことになるのか、今から楽しみにしているわ」

 ジャジョーカは七人のメンバー全てが曲作りに関わり、曲によってボーカルも演奏する楽器も変化をします。リーダーのユッスン・ンデゲオチェロは紅一点の女性で、アフリカ大陸の生まれで、今でも現役の人気バンドです。

「新しい作品には驚いたね。キースは一つの新しい音楽を作り上げてしまった。それは私たちが目指していたもので、本来は先に作り上げたかったんだよ。けれどまだ、私たちだって諦めたわけじゃないわよ。もともとキースたちとは違う方向性を目指している。私たちも、違う形の新しい音楽を作り上げるつもりでいるのよ」

 僕はこのジャジョーカが大好きです。ライブにもよく顔を出し、僕から熱望をしてインタビューをお願いし、記事を書いています。嬉しいことに友達付き合いもさせてもらっています。キースにジャジョーカを初めて紹介したのも僕で、ユッスンとはよく、三人で食事をしたりしていました。

「ジャジョーカが出てくれるのか? それは大満足だな。けれど大丈夫なのか? あいつらのいる国は今、大変だろ? 国外に出るのも難しいそうじゃないか」

 その国では激しい戦争が続いています。内戦が止まる気配もありません。しかもイギリスとは敵対している二つの宗教を信仰しています。

「俺が政府に話をつけてやるか」

 キースの言葉は絶大で、その国の政府はすぐ、ジャジョーカを送り出すことを許可しました。

 結果としてジャジョーカは、その時以来、国に戻っていません。内戦はさらに激しさを増し、政府が転落をしてしまったのです。それまでとは違う宗教が国を支配することになり、ジャジョーカは生まれ育ったその土地に戻ることが許されなくなってしまいました。ジャジョーカのメンバーの一人に、以前の政府の親戚がいます。たったそれだけの理由で、国に戻れなくなっているのです。

 しかし僕としては、少し嬉しいのが事実です。ジャジョーカがイギリスに亡命したからです。頻繁にライブもしていて、僕は好きな時にその音楽を生で楽しむことが出来ます。以前の世界では当たり前のことでしたが、今ではそれが、最高の幸せなのです。

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