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国内での暴動は、次第にその意味をなくしていました。国民からしてみれば、元からなんの目的もなく、自分たちの身を守るためだけの戦いです。少しのきっかけで、簡単に鎮静しました。
きっかけを作ったのは、戦争に駆り出されていた若者たちでした。
国同士の戦争に、街の若者たちは強制的に駆り出され、殺し合いを余儀なくされていました。初めは慣れない殺し合いに戸惑っていたのですが、次第に感情を失い、心を失ってしまいました。
目の前の敵を、ただ殺しては前に進むだけの日々に、疑問を感じる暇はなかったようです。殺さなければ殺される。そんな理由も忘れ、ただ殺すのが仕事になっていました。敵を殺さなければ、上司に怒られます。
そんな上司の怒りに触れた若者の一人が、反動的にその上司を撃ち殺してしまいました。
殺されても、誰も文句は言いません。上司が嫌われ者だったからではなく、殺しが日常になっていたからです。殺しの相手が誰であれ、無感情なままです。感情が高まることは、ありませんでした。
しかし、全ての若者が無感情に殺しをしていたわけではありません。ほんの僅かではありますが、殺しの無意味さを感じながらも、否応なしに殺しを続けていた者がいました。
上司を失った集団は、どうやって前に進めばいいのか分からず、その場から動けなくなってしまいました。
殺しに疑問を感じていた若者は、みんなに問いかけました。
この国を、一つにしないか?
現実に、当時の国はまだ、まるでまとまりがなく、その国民でさえ、国があるという意識が少なく、ただ言われるままの世界の流れに身を任せているだけでした。
若者は仲間を増やし、軍を組織し、口ばかりの大人たちを殺し、真の国を築きました。
その動きは、あっという間に世界中に広がりました。それまでとは違う、本物の、まとまりのある国が各地に築かれました。それと同時に、無意味な戦争が、一時的に終結しました。
しかし、それで戦いが終わったわけではありません。むしろそこからが、始まりでした。
「不思議なことに、俺たちのライブがある日は、その街では人が死なないんだ。音楽には多くの力がある。俺たちは、転がり続けていかなければいけない。俺たちが止まれば、世界はきっと、間違った方向に進んでいく」
国同士の戦争は、単純な理由からです。領土の拡大と、奴隷の確保です。
「世界を周っていると、見えてくることもある。戦いの意味には納得がいかない。それでも人は、戦い続けるんだ。自分たちが望む、自由を求めるために」
その自由が、問題です。身勝手な自由は、世の中を狂気に変える。
「なにがよくてなにが悪いかなんて、誰が判断をすればいい? 人を殺しても、盗みを働いても、それが悪いとは言い切れない」
悪いことは、悪いのです。
「俺が言いたいのは、常識の話じゃない。理由があればなにをしてもいいとも言い切れないからな。昔の俺は、責任を取れるならなにをしてもいいと考えていた。それこそ人を殺しても、だ。けれど今言っているのは、そういう意味じゃない。所詮は全て、人間の世界での話なんだよ。ちっぽけな話だ。ちっぽけな常識に縛られちまっている。自然界を見てみろよ。殺し合いも奪い合いも、全てが悪いとは言い切れない」
突飛な話だと思いました。到底僕には、受け入れられない考えです。