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 当日のライブは、予定より二時間も早く開場しました。七時の予定が、あまりにも会場の周りが混雑したための対処でした。数十万の観客が入る会場は、当時は一つしかありませんでした。世界最大のサッカー場です。四つの試合を同時に楽しめる作りになっていて、観客席だけでも二十万人の収容が可能です。ライブでは競技場内の一部も開放するので、五十万人は入ることが出来るはずです。チケットが何枚売り出されたのかは、途中から集計不可能になってしまいました。当初用意していたのは四十万枚でしたが、反響がよく、その後も追加販売が繰り返され、集計不能になってしまいました。六十万は入っていたと、僕の予想です。それは、今のこの国の人口の五分の一です。世界中から集まったとはいえ、信じられない光景でした。

 早くから会場の周りに集まった観客たちは、初めは大人しく礼儀を保っていました。騒がず暴れず、静かに時の流れを楽しんでいました。しかし開場時間が近づくにつれ、興奮が抑えられなくなってしまい、みんなでライク・ア・ローリングストーンの曲を聴きながらお酒を飲み、終いには大合唱を始めました。その様が、まさに世紀末だと、世界中で報道されました。

「凄いことになっているようだな。今日は最大の事件になるだろう」

 彼らはその日、リハーサルを行いませんでした。普段のライブでもよくリハーサルをせずに本番を迎えることがあります。自由にその場の気分で演奏をするのが、彼らのスタイルです。

「すぐに始めるのかい? 観客はもう、我慢の限界だろ?」

「それは無理だな。俺たちは十二時には必ずステージの上にいないとならない。予定とは違うが、前座を立てるつもりだ」

 本来の開場時間である七時には、前座のステージが始まりました。今の時代を象徴するかのような、若い世代のバンドです。ライク・ア・ローリングストーンの影響を公言していましたが、その音はまるで似ても似つかないものでした。

 しかし会場は、一気に盛り上がりを見せました。そして様々なバンドが立て続けに登場し、彼らの登場まで会場を温めてくれました。それは予想以上に盛り上がり、本来の予定よりも一時間遅く、ライク・ア・ローリングストーンはステージに飛び出しました。

「そろそろ行くとするか。この様子だと、世界は無事に新しい年を迎えそうだな」

 そのライブの素晴らしさは、永遠に語り継がれていくことでしょう。僕があえて説明する必要もないくらいの、素晴らしいライブでした。まさにお祭り騒ぎのフェスティバルでした。

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